部屋を片付けておかないとな…
従妹の早苗(さなえ)が大阪の大学に受かったとかで滋賀県のド田舎から、うちに下宿するってんで出てくるのだった。
ここは旧家だから広いのだけれど、二階の部屋の日当たりのいい部屋をおれが占領していたので、オカンが「早苗ちゃんに明け渡せ」っていうもんだから、しかたがない「無血開城」と降参した。

早苗とは三つ違いで、昔は「兄ちゃん、兄ちゃん」ってかわいかったもんだ。
それが、どうだ、もう大学生で、大阪大学の理学部に入ったと言うじゃないか。
おれなんか、名前を言うのも恥ずかしい私立大学の経済学部の三回を、単位足らずで留年しかけているというのに。
「おまえとは出来が違うんやから、間違いを起こすんやないで」と、オトンまでおれにくぎを刺す。
しょんべん臭い早苗にそんな気など起こるもんか。

あらかたおれのガラクタを北側の暗い部屋に押し込んで、掃除機をかけ、ほぼ空にした。春の日差しが窓の形に畳を輝かせている。

万年床を敷いていたので、こんなにいい日が差してきていることに気づかなかった。
汚いカーテンを久しぶりに開けたからだ。

おれは暖かくなるとあそこがかゆくなるのだ。男は誰だってそうだろう?
いろいろ薬を試したが効果があるのやらないのやら、そこで先輩の大谷さんに恥を忍んで尋ねたら「天日干し」がいちばんなのだそうだ。
「屋根の上に上がれたら、上がってな、パンツを下ろしておてんとさんに曝(さら)すんや」
そう、教えてくれた。
うちは屋根に上がる方法がないので、この窓枠の形の日光でやってみよう…どうせ早苗が来るのは夕方だろうから。

おれは、がらんとした部屋で、下半身をむき出しにして、日光に当てた。
じんわりと暖かい。意外と気持ちのいいもんだ。
「おいなりさん」を引っ張って、内ももからはがし、その患部をよく日光に当たるようにする。
「インキンはカビやから、おひぃさんに当てるとしなびて枯れるんや」とか、大谷さんが言っていた。
大股開きにならざるをえず、「大の字」になった。だれ憚ることもないのだ。
「ひばりが鳴いとる…ええ天気やなぁ。ねむとうなってきた。あぁあ」
大きなあくびをすると、おれはそのまま、まどろんだ。

「きゃあぁあああ!」
どれくらい寝ただろう?突如、絹を裂くような女の叫びで、おれは目覚めた。
ゆめうつつで、もう陰って寒くなった部屋で股を開いていたおれは、何が起こったか悟った。
「うわ、うわわわっ」
若い女が、おれの部屋に立っている。顔を背けて…
おれは、あわててパンツをつかんで股にはさむと、それが早苗だということにやっと気づいた。
「な、なんや、おまえ。もっと遅うに来るんと違ったんけ?」
おれは彼女に背を向けて、パンツをはこうとしたら、足元危うくこけてしまい、再び、粗末なものを開陳してしまった。
「もう、お兄ちゃん」「すまん、あっち行っててんか」「知らん」
そういって、階下に降りて行った。

「なんや、どうしたんや。さなえちゃん」と、おかんの声が下から聞こえた。
「お兄ちゃんが…」
「聡(さとし)がどうした?」
「どないも、こないも」

ああ、もう終わりや。

(つづく)