言語学の「発音」で「リエゾン」という言葉を習うと思います。
昨今では「リエゾンオフィス」なんて言葉が、産業界で聞かれます。

もともとフランス語であり、フランス語には「リエゾン」が頻繁に見られるからそういう言葉ができたんでしょう。
どんな言語でも、単語のつながりで文章になるわけですけれど、前の単語の語尾の母音と次語が母音で始まる語であるとき、その連続を嫌がる言語文化があるわけです。
フランスでは、ことさらそれを嫌がるのと、「黙字」と言って発音しないのに表記する文字がある。
リエゾンが生じるとき、黙字が発音されるようになって、一音節を成すんです。
似たものに「アンシェヌマン」というものもあり、ごっちゃになるんですが、とにかくリエゾンやアンシェヌマンを多用すると優雅に、流れるような発音になって格調高く聞こえるんだって。
日本語なら音便みたいなものかしら?
専門家に言わせたら「違うわい」と言われるかもしれませんけど。

あたしは大学の第二外国語がドイツ語だったので、リエゾンのことはほとんど知らなかった。
でもフランス語を取っている友人もいて、彼らはリエゾンにとても興味を持っていたみたい。
「リエゾン」はそういう語と語の「つながり」を処理する発音の仕方(調音)であり、一種の「訛り」です。
だから「リエゾンオフィス」とは異種の産学連携を表す言葉になったのでしょう。

リエゾンは滑らかで、発音しやすい、馴れた、流暢(りゅうちょう)な感じを与えます。
それがリエゾンであったり、アンシェヌマンであったりするんです。

フランス語のことは、あたしが知らないので言えないけれど、英語なら「There are~」という中学校でも習う発音が「リエゾン」ですわ。
「ゼア ア~」じゃなくって「ゼアラ」って習ったでしょう?
このように「ア・ア」と母音が続くと発音がぎこちなくなるんですよ。
だから一音にくっつけて発音すると慣れた感じで耳に心地よく聞こえます。
「リンキングR」とかね、英語の歌詞によくでてくるわね。
日本語にもあるよね。
母音の連続を断つために挿入される子音がそうです。
「春雨(はるさめ)」は「はるあめ」じゃなく「る」と「あ」の間に「s」が入ります。
「小田原(おだわら)」は「おだはら」じゃなく「だ」と「は」の間に「w」が入ります。
「反応(はんのう)」は「はんおう」じゃなくて、語尾の「han」と「nou」と「nn」と連続する「n」が嫌がられたものです。

「夏来にけらし」が「夏来にける・らし」だったのを、リエゾンさせて「けらし」と言いやすくしたのだと習ったような気がします。

春すぎて 夏来にけらし 白妙(しろたへ)の 衣(ころも)干すてふ 天の香久山(かぐやま)  伝 持統天皇御歌

「干すてふ」が「干すちょう」と発音することは周知ですが、元は「干したり」であり、ウ音便となったものです。

関西ではウ音便は今もよく使われます。
「早く」→「はよう」
「言って」→「いうて」

「終わってしまった」→「終わってしもた」→「終わってもた」これはどういう調音現象でしょう?
「なにぬかしてけつかるねん」→「なんかってけっかんねん」
大阪弁おそるべし…