ラジコンのスケール機(実機の模型)の飛行会が淀川河川敷でよく行われるんで、だんなが健常な頃は、情報を聞きつけては足を運ぶようにしてた。

先週、「紅の豚」が放映されたんで、思い出しちゃった。
ジーナもフィオもかっこいいなぁ。
シュナイダーカップ(航空レース)の優勝機「カーチス」。

オリンピックの東京招致も成功し、ちまたはお祭り騒ぎだけど、モータースポーツやエアスポーツ、パワーボートレースなんかも競技に入れたら見るほうも楽しいのに。

じゃあ、こんな妄想はどうかな?

20XX年どっかのオリンピック
あたしは、レシプロ機部門単葉単発機のパイロンレースの日本代表パイロットでした。(いきなりかよ?)

パイロンレースとは、飛行機で二本の柱(パイロン)の間を周回してその速さを競うレースです。
そうね、競艇の飛行機版です。

予選を順調に勝ち進んだあたし。
愛機はNAKAJIMA 「HYATE Mark Ⅴ」あの名機四式戦闘機「疾風」を改良して富士重工のNEW HOMARE(誉)-1010直噴空冷ターボエンジン(公称離昇2,200HP)を搭載しているの。
星型十八気筒はそのままで、ハイオク(オクタン価100)仕様です。

濃紺のメタリックに白縁の日の丸が尾部と翼に鮮やかに染め抜かれてる。
ラダー(方向舵)とエルロンを黄色に塗っている。
もちろん重い武装はナシ(オリンピックだもん当たり前)

チーム日本はほかに、MITSUBISHIが「SUPER ZERO REPPU」でも出場する。
あの幻の名機「烈風」が今「SUPER ZERO」としてよみがえったのだ。
カウリングはガンメタリックで機体はジュラルミンの生地そのままでキラキラの烈風は快晴の下では眩しいくらいだ。

アメリカの「MUSTANG P-51GOLD STAR」ドイツ「EURO Wolf(フォッケウルフの改良型)」イギリス「SpitFire Mk XVI」、ロシア「ヤコブレフYak-9Пётр(ピョートル)」などがライバルだ。

パイロンレースは二機一組で争うのが国際レースでの決まり。
パイロン間の通過タイムを競います。

コースにあたしの「疾風」が準備されてます。
すぐ横には、対戦相手のロシア機「ヤコブレフ・ピョートル」。見た感じはスマートで速そう・・・
あたしはジャパンブルーの飛行服に身を包んでコックピットに収まり、風防を閉めて合図を待ちます。
左のタワーに四灯の信号機があって、赤が搭乗準備、次の黄色でエンジン始動、白で「On your mark」青「Get set go」フライングは全灯点滅になり、失格です。

パイロンレースに入る前に、二機はともにパイロン間を一回だけテスト周回します。

そして、第一パイロンに突入して(電子測定)第二パイロンを回って、再び第一パイロンに戻って来ます。
二周目は二つのパイロン間を八の字に回って戻ってくるんです。
この二周分のタイムを競うのね。

ランプが黄色になった。
あたしは、セルを回してエンジンを始動したよ。
可変ピッチ四翅プロペラがゆっくりと回り出します。
だんだんスロットルを開いていくの。緊張するなぁ。

「HOMARE」は澄んだ音を奏で始める。いつ聞いてもいい音だよ。

「ヤコブレフ」もエンジンがかかったみたい。
三点支持のまま信号を待つの。
ゴーグル越しに観客席、はためく五輪旗が見えたわ。
あたしは、予選のときより落ち着いていた。
この日のためにいっぱい練習してきたんだもの。
スタッフのみんなもがんばってきたもの。
胸の日の丸に右手を置いた。

信号が白に変わった。
あたしは、スロットルをさらに開いて、ラインまで進む。
ちょっと手前にしておかないとフライングを取られるからね。
そのため、スタートラインの内側を二メートルぐらいの幅で赤く塗りつぶしてあるのよ。

青になった!
スロットルを離陸モードまで開く。
かん高く「HOMARE(誉)」が叫ぶ。機体は前に引っ張られ、景色が送られる。
たくさんの日の丸が振られているのが見えた。

もうヤコブレフのことはわからない。
お尻が上がって、三点支持から二点になり、前の視界が開けた。
フルスロットルでテイクオフした。
脚が自動で仕舞われたことをランプが示してくれる。
「異常なし!」

観客席前の第一パイロンをやり過ごし、直線で高度を上げていく。
上昇限度に余裕がある「疾風」はすんなりと巡航に入った。しかし、ヤコブレフが横にすぐついている。
パイロンの間は約25kmあってGPSでこの間を監視しているの。

何度かこのコースを練習飛行で試しているものの、荒野なので、適当なランドマークがない。
「疾風」にもGPSは搭載されているので、それで知るほか無い。
無線で地上チームから連絡が随時入っていた。
「なおぼん、ロシア機が七時の方向にぴったりついてるぞ」
「ラジャ(了解)。ミラーに映ってます。高度1020フィート(約300メートル)、速度520kmで周回に入ります。オーバ(どうぞ)」

「こちら第二パイロン」
第二パイロンに待機しているチームメイトから入電した。
「感度良好です。オーバ」
「なおぼん機、機影確認しました。舵そのまま来て下さい。オーバ」
「こちらからも視認しました」
第二パイロンが十二時(正面)に見える。
ヤコブレフが上に回ってきた。頭を押さえようとしている。
まだトライアルに入っていないのに、そんな挑発にのっていられない。

この疾風(はやて)はエンジンの馬力の割には、昇降舵を軽くしてもらっている。
実機は重かったそうだ。
それは旋回性能を犠牲にして機体を軽量化するためだったとか。
翼面荷重を減らして翼面積も狭くしてもらって、あたし用に昇降舵を軽くしたの。
高速では適度に重くなるので、急降下で機首が持ち上がるということもない。
曲技をやる機体ではないので、その点は割り引いてよいのかもね。

さあ第二パイロンに進入だ。
スローインファーストアウトは航空機でも自動車でも同じだ。
先に、ヤコブレフが降下体勢で加速をつけてカーブしてきた。
あたしも、やや遅れをとったが、追従する形でペダルを踏んでパイロンを回る。
パイロンのタワーに左の翼の影が映るくらい接近している。
スロットルを開いて落とした速度を回復させる。同時に操縦棹を引いて下げ気味の機首を上げる。
セスナなどの民間機のように、自動車のハンドルみたいな操縦棹じゃないのよ。
スポーツフライトには操縦棹(スティック)とペダルが一番取り回しやすいの。

ヤコブレフが二時方向の上に止まって見え、逆光であたしの顔が陰になった。
速度がつりあっているのだ。

こうしてテストの周回を終え、トライアルに入る。

仕掛けるのはあたしだ。
世界中から「アグレッシブ・ナオ」と呼ばれているのだ。

ヤコブレフは第一パイロンで横に滑った。あたしは内側のラインを取る。いわゆる「差し」です。
あわてたヤコブレフがまくってくるわ。

直線では疾風の方が速い。どんどん引き離す。
高度1500フィート(約460メートル)を維持して、フルスロでヤク(ヤコブレフ)を引き離すよ。
中間点を時速600kmで通過した。軽い軽い・・・

第二パイロンをアウトインでしとめる。ヤクはやっぱり横滑り気味でカーブしてくる。

疾風は空中にレールが敷かれているかのようにきっちりラインを取ってくれる。
疾風が飛行機雲を引いたぁ。ポルコ、見てる?
あたしの腕より、疾風がすぐれているのだ。

すぐに直線立て直しで速度580kmをマーク。
ヤクはミラーでは豆粒みたいに後方を飛んでいた。
5分もしないうちに観客席が満席の第一パイロンに戻ってきたよ。
大きな日の丸が広げられている。

このまま八の字トライアルに入り、ヤクを半周遅れにして、あたしのゴールしてタイムは9分15秒23でした。
アメリカチームのムスタングがトップで9分01秒12、三菱チームの烈風が堂々の二位で9分05秒03、三位はドイツのユーロウルフ(フォッケウルフ改)が9分09秒04、そして四位があたし。

ムスタングから降りたのはプラチナブロンドの長髪をを飛行服からなびかせているアメリア・イアハートだった。
ロシアのヤコブレフ・ピョートルに搭乗していたのはリディア・リトヴァク選手。小柄ながら彼女もロシアのエースだ。
「うわ、女性ばっかり。まるでクイーンズカップやね」

あ~すっきりした。