だんなが通っている施設で生活科学を専攻したというスタッフ女の子と知り合った。
すると、こんな話になった。

「重曹ってあるでしょ?あの洗浄効果っていうか、実際のところどうなんでしょ」
とお茶しながら聞かれましたよ。
※重曹とは重炭酸ナトリウム(炭酸水素ナトリウム)のこと。加熱すると炭酸ガスを発生するんで「膨らし粉」として料理にも使う。

あたしも、重曹洗浄のことは、実験器具を洗うときに学生のころ教えてもらった。
油脂系の研究室だったんで、しつこい油汚れのガラス器具ばっかりだったかんね。

「まあ、弱いアルカリ性のために油脂汚れの洗浄には一定の効果はあるね。つまり乳化作用やね。それと、重曹ってのは水に溶けにくいんや。だから結晶がざらざら残るねん。あれがいい」
「あの溶け残りを溶かして使わなあかんのでしょ?」
「ううん。がんばっても溶けるかいな。溶解度が水100グラムに対して10グラムも溶けへん。あのざらざらでこすり取るんや。つまり研磨剤やんか」
「溶けへんのがいいわけですかぁ。なるほどぉ」

「重曹はアルカリ性て言うてるけど、フェノールフタレインで色がつかへん程度のアルカリ性やで。そんでも油脂を鹸化(けんか)して乳化する力はあるねんね」
※鹸化とは油脂の成分の脂肪酸をナトリウム塩(石鹸)にして水に溶けやすくし、残りの油脂を乳化させて浮き上がらせることができる。アルミを黒変させるのでアルミ鍋には使わないこと。

「なんや難しいねんねぇ、お母さんが洗濯に重曹を入れはってん、どう思う?」
「あかんで、洗濯機が詰まってしまうがな。さっき言うたように、水に溶けにくいんやから、カスが排水管に詰まって、えらいことになるよ」
「うあ、大変や」
「そやから重曹の水溶液を作るときに溶け残ってもええねん。上澄みをつかったらええねんよ。これとクエン酸水溶液を同時に使ったら炭酸ガスを発生して泡立つから洗浄効果もようなるはずや」

「やってみるわ。除菌もできるしね」
「確かクエン酸には除菌効果があったな。重曹だけやったら除菌できひんから、アルコールかなんか併用しな除菌にならんよ」
「わかった」

あとで知ったけど、過炭酸ナトリウム(セスキ炭酸ナトリウム)という重曹と炭酸ナトリウムの複塩のほうがアルカリ性が強く、重曹より水に溶けやすいし、洗浄効果も期待できるそうです。これなら洗濯機に用いてもよろしいようで・・・
「アルカリウォッシュ」で検索してみてくださいな。

ほんでから・・・
「あんなぁ、ついでに、パスタとか茹でるときにお湯に塩を溶かすやろ?あれはどんな意味があるんかなぁ」
ときた。
「そうやなぁ、おマジナイやろ。では答えにならんか。たぶん・・・たぶんやで、塩析効果を期待してんのとちゃうかな」
「エンセキ?」
※塩析は高分子重合の実験で、乳化状態の高分子を固体で取り出したいときにやります。エマルジョンに塩をぶちこんで、乳化状態を壊して沈殿させます。そしたらモッツアレラチーズみたいになってとりだせるの。これを水で洗って、塩分をとって、ちぎって乾燥機に入れて粉末にするとできあがり。そういえばモッツアレラチーズも塩析で作るんやったね。

「水への溶解度の問題やねんけど、単なる水と塩を溶かした水ではほかのものを溶かす能力が変わってくるんや。水はものを溶かす能力があるけど、限られてんねん。つまり、椅子の数が水のものを溶かす能力としよか」
「うん」
「水は五十の空の椅子をあらかじめ持ってるとしよ。そこに塩を座らせて、半分の二十五の席を埋める」
「はあ」
「これを沸かして、パスタを入れる、パスタのデンプンは水に溶けようとするけど、塩が座席の半分を埋めてるんで、あとの半分だけ溶けることができる。もし、塩が入ってなかったら、もっとパスタのデンプンは溶け出して、ぶよぶよになるやろ」
「ああ、そうか、茹でてる間にパスタが伸びんように塩を溶かしておくんや」
「そうやな、たぶん。これが塩析の意味や。あらかじめお湯の溶解度を落して、こしを出すんやろ。この麺の引き締め効果には浸透圧も関係するかもしれんね」
「うあ~むずかしいねんな。とりあえず、マジナイやないというこっちゃね」
「そうあってほしいな。家政学ってそんなん研究するんか?」
「まあ、管理栄養士とか調理師の免許を取りたいなと思ってんねん」
「ほうか。そらがんばってや」

生活科学というのは昔、家政学と言うたそうで、なかなか奥の深い学問やなあと思いました。