梅雨(つゆ)もそろそろ明けるかなというこの頃です。
いつまでも暑いでんな。
今日は、おなじみの「道具屋」でご機嫌をうかがいます。
ちょこっと、アレンジして短くしてますので、あしからず。


ぶらぶら仕事もせんと、ある男が、懇意にしているご隠居のところに仕事を紹介してもらおうと訪れました。
ご隠居は、片手間に古道具を縁日で売る「道具屋」を営んでました。
「これやってみるか」
と男にすすめます。

ご隠居の商売道具を見せてもらって、やる気になっている男です。

古びた掛け軸をひろげて、男が「う~ん、これは、これは」と手をあごにあてて、関心顔で見入ってます。

「おまはん、絵ぇがわかるとみえるな」と道具屋のご隠居。

「まぁ、少しは、わたいもね。しかし、ボラが尾ぉで立って、そうめんを食うてる絵柄とはめずらしなぁ」

「は?何を言うてんね。それは「鯉の滝登り」の絵ぇや」

「あ、そうですか、どうりで・・・ねぇ、そうめんがどぉーっと、大きな口ん中へ流れこんで、いっぱいまわりにこぼれて、もったいないなぁと思うてましてん」

「あほちゃうか、だいじょうぶかいな」

「これは、なんですね」
「それは電気スタンドや。それはな、自分で立たへんね」
「スタンドやのに、立ちまへんか」英語がわかるとみえて、男が言います。

「足がな、三本あったんやけど、一本とれたんや。そやから立たん」
「どないしまんね。こんなん売れまんの?」
「枯れ木も山の賑わいっちゅうやろ。工夫して立たし」
「そんなもんですかいな」
「なんでも足が三本ないと立たんもんや。三輪車は立つけど、自転車は、ぼてーっと倒れるやろ。人間もほんまは倒れるんや。けど、息してるから倒れへんね」
「ほう」
「立ってるとな、だんだん後ろに倒れる、すると人間は息を吐く、そしたら前に戻ってきて、前に倒れようとする、そしたらまた息を吸うて後ろに倒れようとする、この繰り返しで人間は立ってんね。それが証拠に、息を二、三分止めてごらん、ばたーんと倒れるわい」
「なるほど、なるほど。この刀は?」
「それはタケミツや。木刀や」
「ほんまモンみたいですね」
「そやろ。でも抜けん」
「へぇ、抜けそうですけどね」
「一体になったあるから、ぜったい抜けん」
「ははは、そら抜けんわな」
「なんぞ、抜けるもんはありますか?」
「そこの立派なべべ着た、お雛さんがあるやろ」
「うわ、これは高そうや」
「その首やったら抜ける」
「げ」

ご隠居の言いつけで、試しに縁日に店をだしてみた男です。

「道具屋さん、大きな声では言えんけど、この掛け軸は偽物(ぎぶつ)でっしゃろ」と客
「・・・・ギ、ギブツ?なんのこっちゃろ?」
偽物の言葉を知らない男は、後ろを向いて、どう対応しようかと思案顔。
まぁ、ギブツというて気に入ってる客みたいなんで、ギブツとしとこか・・・
「へぇ、お客さん、それはギブツでおます。正真正銘のギブツで」
「おっかしな店やな、正真正銘の偽物や言うて売る道具屋があるかいな。いらんわ。ほんまに」
そう言って客が呆れて向こうへいってしまいした。
「あんた、あほやな。しょんべんされてもたがな」
と、となりの店の兄さん。
「おしっこされてまいました?どこに?」
と男
「なんも知らんやっちゃな。ひやかして、なんも買いよらん客をしょんべんする客やと言うの」

「道具屋さん、そのパッチ、見せてんか」
「これですか?これはションベンできませんよ」
「しょんべんでけへんの?穴、あいたあるみたいやけど」
「しょんべんはあきまへんね。しょんべんだけは」
「しょんべんのでけんパッチはあかんなぁ。いらんわ」
また、客に逃げられました。
隣のお兄さんは、大笑いです。

「おい、道具屋」
「へい」
「この鋸(のこ)を見せてくれ」
「どうぞ」
「ははぁ、これは、甘いな、ヤキが。これでは切れへんな」
「なんです?」
「焼(ヤキ)が甘いなて言うてんね。わしは大工やから、こういうのはようわかんね」
「ヤキは、甘ないですよ。特に焼(やき)は。なんせ、ご隠居が火事場から拾うてきたもんでっさかいに、十分に焼けてますから」
「なんやて、そんなもん売ってんのかいな」
「いやいや、売りもんやないんです。こんなもんでも置いといたら、買うアホが一人くらいはおるやろと、ご隠居が道楽で置いてまんね」馬鹿正直にご隠居の言うてたことをそのまま言う男。
「あほくさ。なんちゅう道具屋や。二度と来るか、ぼけ!」
「怒って行ってまいよった。なんでやろ」

「あんた、だいぶあほやな」と呆れる隣の店の兄さんでした。