『エロ事師たち』の中で、スブやんが仲間を有馬温泉に招待する場面がある。

スブやんの父親は仕立て屋で、戦争が始まると洋服生地が統制になって、ヤミを働くことになる。
しかし、戦況が悪くなってそれどころではなくなり衣料切符になって、父は応召し戦死したそうだ。

そんなことを思い出しながら、悪友のゴキが「くらべっこしよか」と持ち掛ける。
温泉地での遊びに飽きてしまった男たちの考えることは結局、こういうことなのか。

「どないすんねん」
「どないもこないもあれへん、立ててやな、大きさ太さ色形(いろかたち)をくらべあうねん」
「わい等の商売は、男のものについても知っとかなあかん。他の男の立っとるとこなんか、みるチャンス殆どあれへんやろ、カキヤかて本で男を書く時どないする、『青筋立てた』とか『根細先太反りをうった』とか、そんな表現は古くさいで。お互いにみくらべて調べたらええ参考になるで」と、まず女中に物差しを借りた。

中三のあたしは、どうやら「おちんちん」を比べるらしい描写だということがわかった。
「立ててやな」とあるから、あの、つまり、「おっきく」して比べるのね。
すでに従弟の浩二と関係をもっていたあたしは、その辺の知識はあった。

「さすがに立てる手続きはぐあいがわるいから二間つづきの隅っこへ、五人散らばって…」
という下りは笑える。
たぶん、おちんちんを立てるにはひっぱったり、こすったりするんでしょう?
そこはお互い見られたくないのよね。
気が散ると、かえって立たなくなるらしいね。

「麻雀点数表」に彼らの寸法を書き入れていくらしい。
「そないに腹にさし(定規)の先を押し付けたら、どうしても長うなりますわ、もっとふわっとやらな」だそうです。
定規は腹に押し付けて計測してはいけないのね。

「十五糎(センチ)二粍(ミリ)」「最大周囲十一糎八粍」などと書き入れていきます。

あたしね、中三のころにこれを読んだわけだから、自分の定規で見てみましたよ。
十五センチって、ずいぶん長いよね。
浩二のはせいぜい十センチくらいじゃなかったかな。
「最大周囲」っていうのは巻き尺かなんかでないと定規じゃ無理ね。
それとも糸か紙を、おちんちんに巻き付けてそれを解いて定規に当てたのかな?

野坂昭如さんのこのあたりの描写が微に入り細を穿っているので、とても印象に残っているのです。
ここは「読書感想文」には、さすがに書けなかったな。

この後、彼らは勃起させたまま有馬温泉の混浴浴場に入場したのです!

男性用自慰具の話も後に続きまして、もうこれでもかと抱腹絶倒の展開が待ってます。