ドイツの拳銃で、ワルサーP38やルガーP08に次いで有名な拳銃がモーゼルC96だろう。
C96
(写真は『第二次世界大戦ブックス 拳銃・小銃・機関銃』(サンケイ出版)より拝借)

ハードボイルド小説でもよく出てくる。
『深夜プラス1』や『エニグマ奇襲指令』でレジスタンスが腰に帯びているのがこれだったりする。
なんでこんなにドイツ以外でよく使われているのか?
実は、C96は軍用拳銃ではなく、1896年に量産開始されたものである(C96の数字は西暦の下二桁)。
もちろんモーゼル社は軍に採用されることを望んでいたが、それよりもドイツ国外で人気の銃になった。
モーゼル兄弟は最初から大型の拳銃は好まず、こういったものを社員に設計させないようにしていたのにもかかわらず、モーゼル社の試射社員のフェーデルレ兄弟が極秘に設計開発したという経緯がある。

C96は第二次世界大戦前にすでに市場に出回っており、イギリスのチャーチルが将校時代にC96を手に入れているし、日本や中華民国にも入って来ていた。
とはいえ、とても高価な代物だったので、個人で持つのは難しかったようだ。

自動拳銃の技術自体、ピストル業界では垂涎の新技術であり、モーゼル社がいち早く米国特許も得ている。
ドイツは自動拳銃の先進国でもあった。
先ほどの、ワルサーやルガーはいずれも自動拳銃である。

結局、第二次世界大戦がはじまると、この不格好な大型拳銃は制式ではないにせよ軍の採用となる(M1916型、上の写真)。
当時、ほかに良い拳銃がなかったという背に腹は代えられないという事情もあったのだろう。
量産に適さない難しい製造方法でも千丁は超えるほど製造された。
しかし性能は抜群だったのである。
だからこそ、今もなお人気の拳銃なのだった。


C96はその特異的な外観から「ブルームハンドル(箒の柄)」と呼ばれていたらしいことが『深夜プラス1』でも語られる。
この「握り」は手の小さい民族の射手でも扱えるようにとの配慮だと言い、日本でも、警察官の夫人がC96で射撃訓練を受けている写真が残っている(モ式大型拳銃と呼んでいた)。

『深夜プラス1』でも触れているが、C96は木製ストックを取り付けて、肩当てにし、カービン銃のように射撃の精度を上げることができる(200m先の的を射抜くことができたモーゼルミリタリー9㎜型)。
また、カントン(ケイン)がC96をマシンガンのように使うシーンもあった(ライエンフォイヤー(連射)やシュネルフォイヤー(速射)と呼ばれた改良型だろうか)。
つまりトリガーを引いたまま連発が可能なのだ。
シュマイザー短機関銃が品薄になったナチスではモーゼルの速射型などが兵士に配給されることもあったらしい。

装弾数はダブルカラムで20発、シングルで10発であり、マガジンへの装弾はモーゼルのボルトアクションライフルと同じで、クリップ(10弾セット)を排莢口から押し込んで入れる。
弾丸はマウザー(7.63×25㎜)が標準だが、9㎜弾を使えるシリーズもあった。
※マウザーとはモーゼルの英語読み。

モーゼルC96はとにかく、映画やアニメ、小説などによく出てくる。
モデルガンの中でも超人気の拳銃だと言っていい。