どこまで話したっけ?
あたしの妄想。

夕日は完全に没した。

「お兄さんたち、大阪の人?」
「そや」
あたしは、めがねのお兄さんと並んで歩いていた。
「なおちゃんは、どっから来たん」
この人は、妙ににあたしに馴れ馴れしかった。
「あたしらは、京都」
「京都かぁ。京都の市内?」
「ううん。宇治市」
「お茶の町やな。ええとこやん」と後ろから「えっちゃん」と呼ばれている女子大生が言う。
えっちゃんは、めっちゃ絵がうまい。
少女マンガの「お目目キラキラ」なんか、さらさらっと書きはる。
さっき、スケッチブックを見せてもろてん。
「漫研」(漫画研究会の人たちはそういう)の人は、たいがい絵がうまいんや。
当たり前やけど。

海岸で花火をしようと、大学生たちにあたしたちも誘われた。
お姉さんたちもいるんで、夕食後、安心して出かけたのだ。

防波堤沿いを、十人ほどの集団で歩いていく。
昼間泳いでいた浜とは反対方向の小さな岬を目指していた。

「この辺でやろか」
リーダー格の「さっかん」と呼ばれているお兄さんが言う。
もう、街灯も途切れた、暗い浜辺だった。
岩もごつごつあるみたい。
弟の崇(たかし)が、おっとっとと足を滑らせかけている。
「気ぃつけや」
と、あたし。
さっかんが、ローソクに火をつけた。
最初は、おとなしい、滝みたいなきれいな火がでる花火をもろて、やった。
明るなって、みんなの顔が、ぱっと現れる。
独特の火薬のにおいと、白い煙がもうもうと立った。
そのうち、ロケット花火を飛ばす人も出てきた。
ヒューっ。しゅぼっ。
最後の「パン」というのがないやつやった。
どんだけ持ってきたんって言うほど、花火を持ってきてはった。
ねずみ花火や、せんこ花火もあった。
「あれ?えっちゃんは?」
あたしは、さっきまでそばにいたえっちゃんの姿がないのに気づいた。
周りにもいない。
「崇、えっちゃん知らん?」
「え?あの、絵の上手な人やんな。めがねの兄さんとどっかいったで」
ねずみ花火に火をつけようとしている崇が早口で言った。
「ふぅん」
あの二人、泳いでいるときも仲良かったもんな。
お兄さんに、サンオイルを塗ってあげてたもんな。
あたしは、昼間のことを思い出していた。
でも、こんな狭いとこで、どこへ行くゆうねん?

ふと、二十メートルほど離れたところに漁業用の小船が二艘、砂浜に引っ張り上げられているのが見えた。
「崇、ちょっと」
「なんやな。ねえちゃん」
あたしは、崇の手を取って小船のほうに歩いていった。
船外機を取り付けるようになっている小船である。
もうずいぶん使っていない様子で、砂に船底がめり込んでいた。
「ああん」
あたしは、悩ましい女の声を聞きとめて、ぎくっとした。
「ねえちゃん、なんか聞こえるで」
えっちゃんの声に違いなかった。
男の声もする。
あのめがねの兄さんの声やった。
「ええか?えつこ」
「いい、そこ、いい」
まっくらだけど、目が慣れて、男女が重なり合っているのがわかる。
「うわ、やっとぉる」
「しっ」
あたしは、崇をたしなめた。
気づかれると、もっとやばい。
船尾のほうに回って、船の中を覗くと、その狭い船にえっちゃんが仰向けになって、その上にめがねさんが乗っている。
わたしたちは、お尻のほうから覗いている形になって、結合部が丸見えなのだ。
ときおり、打ち上げ花火の明かりがそこを映し出す。

あたしはセックスがこのように行われるものだとは、恥ずかしながら知らなかった。
でも、これが性交とか、セックスというものであることは一瞬で悟った。
崇も息を殺して、一部始終を目に焼き付けているようだった。
「あん、あん」
赤ちゃんが泣くような、声を、えっちゃんが上げている。
Tシャツが捲くれて、白いおっぱいが見えている。
その乳首を、めがねさんがべろべろと舐め、唇で挟んでひっぱる。
その度にえっちゃんがのけぞった。
「おれ、起ってきたわ」と、崇。
何を言ってるんだか、わからなかった。
なんか、もぞもぞ隣でしている。
「なにしてんの?」
「なにって、姉ちゃんはどうもないんか?おれ、ちんぽ起ってきた」
そういうことか・・・
あたしだって、なんだかじゅわっと「女の子」の部分が湿り気を帯びてきたような感じがする。
それより喉がからからだった。
お兄さんの腰がものすごい勢いで上下しだした。
はぁ、はぁと二人の息が運動しているみたいに激しくなっている。
「な、中にええか?」と、めがねさんが訊いた。
「いやや、あかん」と、えっちゃん。
「ほなら、外に出すで。うあああっ」
太い、おちんぽが、えっちゃんから引き抜かれ、そのままお兄さんはえっちゃんのおなかの上に白い液体を飛ばした。
「うわ、出しはった」と、崇。
「あれ、何?」と、あたし。
「なんや、姉ちゃん、しらんのか?精液やんけ。おれも出るで」と、崇が言う。
知識としては知っていても、実物は知らなかった。
男の子は自分のことなので、よく知っているんだろう。
中に出すと、「妊娠」するんだった。
それで、えっちゃんは「あかん」て言うたんや。
怒涛の情報量で、あたしは頭がパンクしそうだった。
あたしも、あんなことができる体なんや。
崇も・・・
「いこ。姉ちゃん。みつかったらやばい」
「え、うん」
あたしたちはそっと、重なっている二人を尻目に遠ざかり、みんなのいるところに戻った。