夜中にふと目が覚めた。
隣に寝てたお姉ちゃんがいない。
あた しは寝ぼけた目で部屋を見回した。
常夜灯にぼんやり浮かんだ姉の姿を見つけた。
姉は、ふすまの隙間から兄の部屋を覗いているようだった。

「お姉ちゃん、なに見てるの?」
「しっ」怖い顔で姉は口に指を立ててあたしを戒めた。
どうも、兄の部屋で何かがあるようだった。
兄は受験生でいつも遅くまでお勉強をしていた。
だから、ふすまの隙間を通して、兄の部屋からはあかあかと光が 漏れていた。
あたしは、姉が覗いているものを見たくって、そばに寄り、頭を割り込ませた。
「ちょ、ちょっと、だめだってば、みっちゃん」
姉はあわてて、あたしを隙間から遠ざけようとする。
「なによ」
こそこそ声で、二人は争った。
「声を出さないで。静かに」
「わかったから、見せて」
あたしは許しを得て覗くことができた。

兄は、勉強机に座って、手でなにやらゆさぶっている。
机の上には女の人の裸の写真の本が立っていた。
兄はそれを見ながら忙しく右手を動かしているのだ。
「何してんの?兄さん」
「みっちゃんにはまだ早い。知らなくっていいの」
中学生の姉は偉そうにそんなことを言い、あたしを引っ張った。
「ううん、まだ見るの」あたしはまた頭をふすまに近づけた。
「あ、おちんこをいじってる・・・おっきい」パンとあたしは姉に頭をはたかれた。
「いったあい」
「こっちにきなさい!」

「うあっ」と大きな兄のうめきともつかないダミ声が聞こえた。
白いものがびゃーっとおちんこから 飛び出て写真の女の人の胸あたりに当って垂れた。
「な、何?あれ」とあたし。
「うわ~、出したよ。兄貴・・・」
兄はというと、ティッシュを乱暴に何枚も引っ張り出して、おちんこをぬぐって、写真の女の人も拭いていた。
そして、大きなティッシュのボールが出来て、ゴミ缶に重い音を響かせた。
「ほら、こっちに来て」
姉にパジャマの袖を引っ張られてあたしは布団に引きずり込まれた。
「お姉ちゃん、兄さんは何してたん?」
お布団をかぶってあたしは問うた。
「そんなの言えないよ」
「兄さん、エッチな本を見てたね」
「アレをするときは男はみなエロ本を見るの」
「アレって何?」
「あれはアレ」
あたしは訳が分からなかった。
どうやら、姉も兄も知っていてあたしだけが知らないことみたいだった。

生理もまだ来ないあたしには何がなんだかわからないのも当然だった。
ただ、姉からは、
「このことは、兄貴にも、お父さんにもお母さんにもないしょだからね」
と念を押された。
あたしは、なんだかとんでもない兄の秘密を知ってしまったようで、怖くなった。

しばらくして、あたしは眠気が襲ってきて、寝てしまった。
でも眠りは浅かった。
姉は、寝られないらしく、何ども寝返りを打っていたようだった。
「はあ」
姉のため息が聞こえた。
そうして、お布団の中でもぞもぞと動いている。
「お姉ちゃん、寝られへんの」
「え?ううん」
答えてから、ごそごそと起き出して、
「ちょっと、おしっこ」
とか言って出ていってしまった。
兄の部屋はもう真っ暗になっていた。

兄は、あれから大阪の大学に受かって、そのまま下宿するとかで家を出た。
姉はというと、今は吹奏楽の部活でほとんど家にいないし、帰ってきたらきたで、バタンキューと寝てしまう。

あたしも思春期という甘酸っぱい時を迎え、兄や姉のしていたことがおぼろげながらわかるようになった。
かくいう、あたしも勉強に疲れたときにはしてしまう。
つくづく兄妹だなと思う。

友達のなおぼんは
「健康な証拠よ。みんなしてるよ」
と、あっけらかんと言ってくれた。
なおぼんは、あたしにいろんな一人エッチのしかたを教えてくれた親友なんだよ。