江尻家の庭は広い。
もっとも、黒須村の普通の農家の庭でさえ、都心のそれとは比較にならないが。
戦災にもみまわれず、疎開地として当時は軍の偉い方も利用されたと聞く。

庭は当主の八三郎氏好みの野趣(やしゅ)に富んだ仕立てで、前栽(せんざい)もどこか里山を思わせる。
安達太良山を借景とした雄大さがご自慢である。

母屋と八重子様の離れ、そして土蔵が廊下で連結され、いずれの建物にも雨に濡れずに行くことができる。
心字池(上から見ると草書体の「心」に見える)にはゆったりと鯉が泳ぎ、水面に四季の移ろいを映す。

あたしは、よく前栽の手入れをおおせつかって、花がら摘みや落ち葉を掃除したりする。
枝払いのような大きな仕事は「庭匠(にわしょう)」さんがやってくれる。

そうやって、あたしが花の終わった皐(さつき)などを始末している姿を日出男さんが土蔵の窓から見止め、カンバスに写し取ったのだった。
あたしは、まったく気づいていなかった。
そのときは、土蔵に人が住んでいるなんて、これっぽっちも思っていなかったから。

でも、今は違う。
わざと、日出男さんに見えるように庭に出る。
加代子さんに見つからないように、小声で挨拶をしたりする。
日出男さんも、わかっていらして、あたしの草履の音を聞きつけると、窓から覗かれるのだ。

「尚子さん」
あたしは、ポンプで井戸から水をバケツに汲んでいたところを加代子さんに呼び止められた。
「はい。若奥様」
腰を伸ばして振り返った。
「あの、あなた、土蔵の中のことだけど・・・」
推し量るように加代子さんがあたしの目を見る。
あたしは、とっさにこれまでの事が露見したんだと悟った。
「知ってます。日出男さんがいらっしゃるのでしょう」
「やっぱり、知ってたのね。そして、あの子に会ってるんでしょ」
いくぶん、きつい表情で加代子さんが詰問した。
「あ、はい」
あたしは、うつむいてうなずいた。
バケツの水が一杯になって、あたしの顔を映していた。
「いいわ。許してあげる」
「え?」
意外な答えが返ってきたので面食らった。
「あの子のことよろしくね。これからもお世話をしてあげてほしいの」
「いいんですか?若奥様」
「もう、隠れる必要もないようだし。あの子の体のこともわかったでしょう?お世話が必要なのよ」
「お察しします」
「じゃあ、さっそくだけど、あの子の体を拭いてやりたいの。お手伝いしてくださらない?」
「はい」
あたしは、うれしかった。
大好きな日出男さんのお世話を、どうどうとできることが。

「あの子ね、お風呂に入ってないのよ。体が不自由なこともあるけど、表に出たがらないから」
「はあ」
「だから、いつもお湯で拭いてあげてたの。でも今日はあなたと二人だから、母屋のお風呂場に連れていって洗ってあげたいから、お風呂のお湯を沸かしてほしいのよ」
「はい。準備ができたらお呼びしますね」
「そうしてくれると助かるわ」

風呂の掃除が終わったところだったので、すぐに水を張って沸かせる状態だった。
檜(ひのき)の湯船で、浴室はとても広々としている。
天井も高いから、冬は寒いのが難点だけど。
井戸水を汲んで、浴槽に入れる。
だいたい、十往復はする。
風呂場の真裏が井戸端なので近いのだけれど、あたしには大変だった。
焚口に火をいこして、待った。

夏なので、小一時間もあれば適温の風呂ができあがる。
「若奥様ぁ、お風呂ができましたぁ」
廊下を走って台所の加代子さんに知らせた。
「ありがとう。じゃ、日出男を呼びに行きましょう」
二人で、土蔵に向かった。
こんな日が来るとは思ってもみなかった。
今日は、こそこそ鍵を開けるのではなかった。
ぎぃ・・・
重い戸が引かれ、中の網格子の戸も開けられた。
「おやおや・・・」
目を丸くしたのは日出男さんのほうだった。
「お風呂、入りましょ。あたしらがお手伝いしますから」
あたしが、誘った。
「ヒデちゃん、何年ぶりだろうかね。お風呂に入るの」
姉の加代子さんが優しく声をかける。
「そうさな、もう六年は母屋に行ってないからな」
日出男さんは車椅子を回しながら、こちらに向き直った。
カンバスには仕上がり直前のあたしが微笑んでいる。
「さあ、いきましょう」
「もう行くのかい?」
「そうよ。尚子さんがお風呂を沸かしてくれたのよ」

土蔵を出るときが少し難儀だったが、あとはすいすいと車椅子を走らせることができた。
お風呂場も脱衣場を片付けて、空けてしまうと洗い場まで直行できる。
少しは日出男さんも歩けるので、そんなには苦にならない。
二人がかりで日出男さんを裸にし、風呂の木の椅子に移ってもらって、掛け湯をしてあげた。
「おっ。熱い」
「熱かったですか?」
「体が冷えているからだろう。大丈夫だ」
加代子さんが、
「あたしたちも脱ぎましょう」
あたしは、耳を疑った。
「え?」
日出男さんも絶句している。
「濡れるでしょう?お互い、裸になって、あたしたちも洗っちゃいましょ」
ぜんぜん真顔で加代子さんが言うのだ。
たぶん、みんな、加代子さんはご存知なのだ。
「いいわ」
あたしは、なんだか、淫靡な気持ちになった。
女二人が脱衣場でエプロンをとり、ブラウスを脱いで、下着を足から抜いた。
四十近い熟女と、三十半ばの女が、青年の前で一糸まとわず肢体をさらけ出した。
「おお・・・」
日出男さんは湯気の中で、言葉もない。
あたしたちは、掛け湯を交互にし、そしてシャボンを手ぬぐいにつけて、日出男さんを上から下から洗ってあげた。
そのときの日出男さんの顔ったら・・・
薄い胸板、白い肌、ひ弱な感じだったが、あそこは違った。
二人の女に体を撫でられ、へそに付きそうなぐらい勃起していた。
「すぼけ」と思っていた一物も、今は完全に皮を後退させて、先端を顕わにさせている。
「あら、あら」
加代子さんがおもしろそうに硬くなった陰茎をしごく。
「あはっ。姉さん」
「尚子さんにもしてもらったんでしょ?」
そう言いながら、加代子さんはあたしを見ている。
あたしは、赤くなって下を向いた。
「そうだよ。尚子さんも上手なんだ」
言うに事欠いて、日出男さんはそんなことを姉に向かって言うのだ。
「見かけによらないわよねぇ。おとなしそうな顔をして・・・」
明らかに加代子さんはあたしをなじっている。
あたしは、負けじと、日出男さんの唇を奪った。
はむ・・・
「うおい、お・・い」
べちょっと、重い音をたてながら、あたしは青年の薄い唇にかぶりついた。
「やるわね」
加代子さんも、口を開けて石鹸だらけの陰茎を咥えた。
ぶじゅっ、ぶじゅっ・・・

上から下から攻められる日出男さんは、うれしそうに笑みを浮かべていた。

足の不自由な日出男さんを、加代子さんと二人で檜のすのこの上に仰向けに寝かせた。
泡姫二人が重なって、男をなぶろうというのだ。
石鹸ですべりをよくして、全身を使ってご奉仕する。
そのうちに、女同士もこすりあう。
あたしは初めて、同性と口づけを経験した。
火のように熱い年上の女の口中。
姉が先に弟にまたがってつながった。
もう、隠すこともないのだった。
「ううん、いい。ヒデちゃんいい」
腰を器用に、くねらせながら、長い弟の性器を体内で感じ取っているのだろう。
旦那さんとは、ご無沙汰だとか、よそに女を作っているのだとか、あえぎながら話してくれた。
「あふう、ヒデちゃ・・ん」
べったりとお乳を日出男さんに押し付けて口を吸う姉、加代子。
あたしは、見ているほかなかった。
「尚子さん、こっちに来なさいよ」
あたしは、加代子さんの横に立った。
そして、舐めてもらった。
加代子さんは、あたしのお実(さね)を舌先でつつきながら、膣のほうに指を這わせ、湿り気を広げるように動く。
女の体を知り尽くした動きだった。
あたしは立っていられなくなった。
「あ、ああん」
声も思わずもれてしまう。
「可愛い声を出すのね。尚子さんは」
こうやって、三人はつながったまま、至福のときを過ごしたのだった。

「姉さん、おれもう」
「逝くの?ヒデちゃん。あたしの中で逝きなさい。いいのよ。逝って」
妊娠は大丈夫なんだろうか?
あたしも、日出男さんには何度か中に出されているが、今のところ妊娠の兆候はなかった。
激しく、不自由な足にもかかわらず、腰を浮かせて姉を突き上げる。
「いやぁん、ヒデちゃ、ヒデちゃ・・・ん」
赤い顔の加代子さんが汗みずくであごにしずくを垂らしながらのけぞる。
お腹の肉がふるえ、絶頂が間近なことを知らせた。
加代子さんの尻肉をつかむ日出男さんの手に力が入り、奥深くで射精しようと腰を固定したのだった。
「うぐぅ」
喉から押し殺すような音を立てて、日出男さんがきばった。
「ぎゃぁ・・・」
赤子の泣く声にも似た、加代子さんの断末魔の声。
姉は弟の上に崩れ落ちた。
こんなに至近で、他人の交接を目の当たりにするのは初めてだったし、あたしも見ながら絶頂に近い感覚を味わうことができた。
でも、物足りない・・・
あたしも肉棒でえぐられたい。
胎内に射精してほしい。

「ヒデちゃん。回復したら、今度は尚子さんをちゃんと逝かせてあげなさい」
「うん」
そういって、二人は体を離した。
加代子さんのあそこからは、泡立つ白濁液が糸を引いて垂下していた。
なんとも妖艶な姿だろうか。
これが、男に気をもらった女だと言わんばかりの余裕の表情。
子種を植えつけられて勝ち誇った女の顔だった。

風呂場の隅で、いとおしそうに女陰に湯をかけて洗う加代子さんがうらやましかった。
白い塊がすのこの上を転がりながら流れていく・・・

「なおこ・・・」
呼び捨てにされて、あたしは手を引かれた。
「日出男さん・・」
「さあ、舐めて大きくしてくれよ」
命令口調だった。
あたしは、従った。
目の前に、いくぶん、ぐったりとした男根がぬめぬめと光を帯びている。
陰毛が少ない分、長く見えた。
あたしは、亀頭を口に含んだ。
さっきまで姉とはいえ女の中であばれていた物を口に含む屈辱感。
あたしだって・・・
加代子さんが湯船に浸かって、あたしたちの行為を鑑賞している。
ことさら音を立てて、いやらしく口淫をしてあげた。
頭を振り、唇をめくって・・・
じゅぼ、じゅぼ、じゅぼ
だんだん芯のある硬さを取り戻してくる日出男さん。
「あふ、いいねぇ。尚子は上手だ」
あたしは、内心、ほくそ笑んでいた。
「もうそろそろいいんじゃないか?」
日出男さんとは限られた体位しか取れない。
騎乗位はその数少ないもののひとつだった。
あたしは、蹲踞(そんきょ)の体勢で日出男さんの勃起の上に膣口を持ってきた。
触れる・・・
すこしじらすように、腰を浮かせる。
このまま腰を落とせば、すっぽりと収めることができるはずだ。
でも、しない。
「やれよ。なおこ」
「じゃ」
ゆっくり確実に腰を下げる。
ぐぼっと、先端があたしを割り、押し広げて進入してきた。
「あくっ」
喉から声が漏れる。
ずっぽりと全長があたしの中にある。
お尻と日出男さんの腿が密着したのだ。
硬い物があたしを突き上げているのがわかる。

「いいわね、この眺め」
湯船で加代子さんが賞賛してくれた。
「あなた、未亡人なのに、体がうずくでしょう」
「え、ええ」
「だから、あたしに隠れて逢引してたんでしょう」
「そんな・・・」
「いいのよ、隠さなくって。カタワ者の慰めも必要でしょうから」
ひどい言い方だった。
でも、どうでもよかった。
日出男さんが喜んでくれたらそれでいい。
あたしは、自分から腰を動かし、回した。
日出男さんがお乳を下から持ち上げるように揉む。
乳首が立ってしまう。
「かわいいお尻ね。そこに、ヒデちゃんの太いのが出たり入ったり・・・まぁやらしい」
加代子さんがことさら、いじめるように言う。
「ヒデちゃん。いいでしょう?尚子さんのおまんこ」
女性なら絶対口にしない言葉がすっと出てくる加代子さん。
普段の様子からは考えられないことだった。
一度出した日出男さんは長持ちした。
もう、あたしは何度か登りつめていた。
「あはん、ああ、いい」
湯船から上がってきた加代子さんがあたしたちにちょっかいを出し始める。
「いいんでしょ。尚子さん。ヒデちゃんのチンポ」
うん、うんと首をふるしかなかった。
あたしのお実を加代子さんがそばでいじってくる。
「あひぃ。だめ、そこっ」
「いいのね。ここ、いいのね」
飛び上がるような快感が走った。
もう、だめ。
「尚子、いくぞ」
そういいながら、日出男さんが腰を入れ、突くように激しく動かれる。
ずんずんという、胃の腑が破られるような感覚だった。
体全体に衝撃が走る。
あたしの膣が勝手に収縮をし始める。
「おおう、いぐ、いぐぅ」
真っ赤な鬼のような表情で日出男さんが力を振り絞ってあたしの腰をつかんで打ち付ける。
そして、放った。
あたしにもたくさん、放ってくださった。
「ああ、ああああ・・・」
「逝ったの?逝ったのね」
遠くで加代子さんが尋ねていたが、もうどうでもよかった。

こうやって、あたしたちは、一人の男めぐって快楽の秘密を共有したの。
日出男さんは表に出るようになり、画家として歩み始めた。
そして、あたしは、江尻家の跡取をこの身に宿した。

おしまい