あたしのヒーローものと言えば、ハーロックとか次元大介とかコブラとアニメから来たものばかりと思うでしょ。
高校生のころは、そうじゃなかったのよ。
あのころは、「水滸伝」だった。
好漢(こうかん:義理人情に厚いイイ男)が108人(晁蓋を入れたら109人)も出てくるの。
※痴漢にも「漢」がつくけど、この字には「おとこ」という意味があるらしい。だから痴漢は男なんだぁ・・・

「今なら九紋龍史進(くもんりゅうししん)がもらえる!!」とかゲームであれば、あたし、もらっちゃうよ。

中華思想に染まった中国人は好きになれないけれど、毛沢東以前の古い中国人は「大人(たいじん)」といって、なかなか「出来た」人が多かった。
「義理」や「人情」は中国で尊ばれた「徳」だったようです。
儒学思想でしょうか。

だから「水滸伝」には、そういったいい話がゴマンとでてくる。
漢(おとこ)が漢に惚れる、そして義兄弟の杯(さかずき)を交わすなんて(ヤクザじゃないけど)、いいじゃないですか。

ボーイズ・ラブとかホモとかじゃないですよ。あったかもしんないけど。

好漢に混じって女の「美丈夫」も出てきます。
「今なら一丈青扈三娘(いちじょうせいこさんじょう)がもらえる!!」
ほしいーっ。

この娘さん、めっちゃ、かわいくて強い、女武人です。
最期は矢に貫かれて死んじゃうんですけどね。

「金瓶梅(きんぺいばい)」という水滸伝から派生した物語があります。
あたしも学生時代に夢中になって読みました。
そして、オナニーにふけりました・・・
そう、エロ小説なんです。

水滸伝に「武松(ぶしょう)」というトラを素手で打ち殺したという無頼漢が出てきます。
彼は、体格がすばらしく、顔もいい。
そして、その腕を買われて憲兵隊長みたいな職についていた公務員でした。
彼には、「武大(ぶだい)」というお兄さんがいました。

弟とは正反対の、貧弱な体のブ男でした。でもって、お人好しで騙されてばかり。
潘金蓮(はんきんれん)という絶世の美女が武大の妻だったんです。
金蓮は物欲が強く、浮気性で嫌な女なんです。
不貞かなんかの罰で無理やりブ男の武大に嫁がされていたんだったと思います。
弟の武松も同居してて、美男の武松に金蓮は色目を使います。
武松は、しかし、その手には乗りません。
兄の嫁に手を出すなどというののは、恥ずべき行為だからです(かっこええ)。
それより、金蓮のその性根の腐った心が鼻についていました。
武松は美人というだけでは騙されない男なのよ。

自分になびかない男などいなかった金蓮にとって屈辱でした。
それで、武松のことも夫の武大のことも憎らしく思うようになるのね。
勝手な女です。

そんなとき、薬種問屋の大旦那、西門慶(さいもんけい)という、大金持ちのエロ男と金蓮が出会い、お互いに一目惚れするんです。
そうなると邪魔なのは武兄弟ですわ。

武松が上の命令で、東京(とうけい)に赴任することになって、武大が一人になりました。
相変わらず、金蓮と西門慶は逢瀬を交わしていましたが、いくらのんきな武大でも気づきますよね。
武大が現場を押さえようと、逢引の場所に乗り込みましたけれど、非力な武大は体格のいい、武術もたしなむ西門慶にあえなく殴り倒されます。
大怪我で家に担ぎ込まれますが、重症で苦しむ始末。
金蓮は、この時とばかりに西門慶から持たされた毒薬を夫、武大に飲ませてしまいます。
かわいそうな武大は殺されてしまいました。

もう、邪魔をする人間がいなくなった金蓮と西門慶は堂々と、逢引しておまんこ三昧。
西門慶の性技たるや、性豪といってもいいくらい。
さすがの金蓮も、逝かせまくられて、彼にぞっこんです。とあたしの妄想。
(ここんとこは「金瓶梅」の描写をお借りしました。「水滸伝」ではそういうことは伏せられてるんで)

さて、武松が兄夫婦の家に帰ってくると、兄が死んだと言うではないですか。
「なぜ、知らせてくれなかったのだ?」
今までの経緯から、兄の死を不審に思う武松です。
兄の検死をした者のタレコミから、武松は兄が毒殺されたことを確信します。
金蓮と西門慶のことも世間では公認の仲。
「あいつらの仕業に違いねぇ」
そしてその陰に隣の遣り手婆が手引しているとの事実も知ることとなります。
怒り狂った武松は金蓮、西門慶、隣の婆さんをまとめて殺してしまいます。

そしてお尋ね者ととなった武松は逃走の末、梁山泊に入山するのでした。

と、ここまでが水滸伝の描かれ方です。

金瓶梅では、ずいぶん違うんです。

毒婦、潘金蓮はもっといやらしく描かれています。
武大殺害後、武松に追及されるんですが言い逃れてしまいます。
そして西門慶の第五夫人として嫁ぐという形になって話が進みます。
で、何人かの夫人と争いを重ね、陥れ、西門慶と性愛を尽くします。
確か、武松が西門慶を殺すのではなくて、別の人を殺してお尋ね者になるんだったと思う。

なんと、西門慶は金蓮に毒殺されるのよ。
ほんで、この女は次々と他の男と不倫し、以後セックスまみれの生活が描写されますのです。
ハイティーンのあたしにとって、いいオカズでしたぁ。