あたしはね、ウレタンとかイソシアネートの研究をしていたことがあったのよ。

イソシアネートを合成するにはクルチウス(Curtius)転移反応を使います。
酸アジド(R・CO・N=N=N)を加熱したら、窒素ガスを発生してR-N=C=O(イソシアネート)ができるのね。
※酸クロライドとアジ化ナトリウムから酸アジドは作られるよ。

そんで、R-N=C=Oにターシャリーブタノールを与えると、すぐにN-アルキル-N-ターシャリーブトキシカルボニルアミンができるよ。

ターシャリーっていうのは、メチル基が三つ炭素原子についた形をいうの。
スズメの足みたいな。
だから、ブチル基が基本形になりますわ。
最低でも四つの炭素原子がいるからね。
紙に書いてみたらわかるよ。たぶん。

フリース(Fries)転移ってのもあるよ。
酸触媒が必要な転移反応だよ。
たとえばね、フェニルエステル(カルボン酸とフェノールのエステル)に塩化アルミニウム(酸触媒:ルイス酸として)を加えるとカルボニル基の酸素原子にマイナスに帯電したアルミニウム原子がプラスに帯電した酸素原子とくっつく(配位する)のよ。
100℃以上の加熱なら、フェノールのオルト位にケトン基が、室温ぐらいの反応ならフェノールのパラ位にケトン基が置換したものができるよ。
つまり、アシル基由来のケトンがエステルの芳香核(ベンゼン環)のオルト位やパラ位に転移(rearrangement)というわけ。

クライゼン転移ってのは変わってるよ。
シグマトロピックに転移するの。
わけわかんない人は飛ばしてくださって結構です。

ヘビの頭と尻尾が入れ替わるような反応とでも言いましょうか。
あたしはやったことがないんだけど、有機合成とか薬学の修士課程に進んだ人なら知ってると思う。
大学院の入試に出るよね?
どんな反応かは知ってて当たり前で、その反応過程を有機電子論的に論じなければならないのよ。

それじゃね、芳香核とか不飽和結合に直接エーテル結合しているようなもので、エーテルの片方の末端がまたビニル基のような化合物を想像してね。
Φ-O-C-C=Cと略式で書くとこうなるわ。
Φはフェニル(芳香核つまりベンゼン環)基です。

エーテル酸素原子の方を「ヘビの頭」、末端ビニル基を「ヘビの尻尾」としますね。
こいつを加熱すると、酸素原子をフェニル基に残して切れて同時に芳香核のオルト位に尻尾のビニル基が付加するの。
その結果、酸素原子と結合していた末端は電子過剰でビニル基になるのよ。

オルト位に付加したアルケニル基は、頭と尻尾が入れ替わったみたいに「見かけの上」では見える。
でも末端炭素原子を同位体でマーキングしてやると、入れ替わったのではなく、尻尾が芳香核に接続し、頭は電子が余って新たにビニル基となっていただけ。

そのほかにも、いろんな転移反応があるけど、今日はここまで。

好きなんだけど、こういうことばっか書いてると、人が来なくなっちゃうから。