朝から、セミがうるさい。
去年よりも多いような気がする。
セミには当たり年があるそうだ。
どうやら、クマゼミの当たり年らしい。

「納品書はないけど領収書ならあるわ」
「それ、帳簿にはりつけとけ」

あたしには、最近、事務の雑用が多くなった。
部品購入の帳面記入はものすごくめんどくさい。
ボルト、ナットなどの決まった購入品はまだいい。
アスクルなんかで、妙なものを買われると、その確認が大変なのだ。
「ウェス(ボロ)って誰が買うたんよ。五キロも」
「あ、中村やろ。工場のんが切れたから、わしがあいつに買うとけって頼んだ」と浅井さん。
モノタローの納品書が今月分のが足らん。
イプロスのもないーっ。
これはミスミや。
暑いーっ。
冷房入れてんのかいな。
屋根が焼けてんねんな。
サーボモーターとか高価な部品は、領収書も五万円以上で収入印紙が貼ってあるかどうかが重要やねん。
本体価格が五万円未満やったら非課税やもんな。
今年の四月一日からこの非課税枠が拡大されたんや。

領収書という書面は受領書(その写しとしての納品書)の下位概念と考えていい。
受領書は「受け取りました」と判を突いて売主に返送するので、その写しとして納品書を買主の手元に置く。
つまり、これらは売買契約による売主と買主の双務契約の履行を証明する書面にほかならないからね。
受領書(納品書)は売買の目的物を買主が受け取ったという証明、領収書はその売買代金が売主に支払われたという証明です。
双務契約とは売主と買主のように当事者双方に履行すべき債務がある契約言います。
物を渡して、その代金を支払うという対抗する債務です。
贈与のように与えるほうが一方的に債務を負うようなものは片務契約です。
受け取るほうに義務はないのですから。

コンビニのように対面売買のような双務契約なら、物品と支払いはレシート(清算書)一通の同時履行で済みます。
売買契約は同時履行が成立要件ですから。
同時履行が一方の怠慢で行われないときは、売買契約の解除を、もう一方から申し立てていいのです。
それによる損害賠償請求も可能でです。
※民法533条「同時履行の抗弁権」参照

しかし、そのような売買契約だけでは世の中が回りません。
会社と会社の売買契約は銀行を介した信用取引で行われ、時間的に同時履行ではないですね。
個人のカード決済もそうでしょう?
宅配の代引きはどうですか?
仲介の運送会社が代行して支払いに関与するので、売主と買主は同時履行ではないですね。
入金確認後の品物発送という手続きが主のオークションも信用取引の一態様です。
(海外との取引はだいたいそうですね)
送り状(インボイス)は貨物書面であり、国内ではそんなに重要な書面ではないですが、海外取引では船積み書面として必須です。
税関での申告に要する検量や内容証明、保険、引渡し条件が明示されているからです。
食品取引では産地証明ともなります。


限りなく同時履行に近い取引にするために受領書が意味を持ちます。
権利が転々移転するような、今日の複雑な売買契約は、その都度同時履行を証明しつつ、時間差を埋めていくのです。
売主と運送会社、またはカード会社、銀行、そして買主と運送会社、カード会社、銀行と、間にたくさんの仲介が入ります。
大きな取引なら商社が何社も入ってきます。
それぞれ、同時履行をしながら物品(の所有権)を移動させ、代金を売主に到達させます。
その証明が「受領書」なんですよ。

昔の人が考えた長距離間の売買は為替(かわし、かわせ)取引です。
つまり「信用取引」です。
日本の場合、幕府がその信用を与えたのでしょうか。
それぞれの藩が与えたのかもしれません。
通貨発行は藩単位で行われていた時代もあったのでね。
藩札という、有価証券もあったらしいです。
詳しくは、あたしも知らないです。

で、経理上、領収書が見当たらないときに、受領書(納品書)で代用できるのか?
形式によります。
金額の入った受領書(納品書)ならOKですが、物品の名称個数および日付しか入っていない受領書(納品書)はダメです。
銀行入金でしか証明できないのなら、それは通帳を税務署員に見せることになります。
後で、当事者間で領収書等を申し合わせて作るのは、「申告漏れ」の疑義をかけられますよ。
だって、同時履行の偽装にすぎないんですから。
受領書と領収書(入金確認できる通帳でもよい)が対になって、同時履行が証明されないと税務署は首を縦に振らないのです。

では、職務に戻ります。
ごきげんよう、さようなら。