部活動をしている子は夏休みの間も学校に来るけれど、部活をしていないあたしも、つい足が学校に向かう。

家にいても、つまんないし、友達は少ないし。

あたしは、クラスでは目立たない存在だった。
いつも部屋の端の列で、おとなしく授業を聞いているというのがあたしのスタイル。

学校には大きなクスノキが校門のところにあって、屋根のように枝を茂らせていた。
そしてその幹にはセミがいっぱいたかって、騒音をまき散らしていた。
あたしは、汗をふきふき、自転車を押しながら、その大木の陰を通って自転車置き場に向かった。
お昼が始まったころで、ブラスバンドの学生たちもエントランス付近でお弁当をひろげている。
あたしの学校は野球も強くて、甲子園に向かってがんばっていたけれど、今年も地区準優勝で夏が終わった。

自転車を停めて、下足ロッカーで上履きに履き替え、あたしはその足で科学部の部室がある理科室に向かった。
あたしは、ひょんなことから部員でもないのにそこに出入りしていたのだ。

三階の西のどんつきが理科室で、手前に準備室がある。
ペタペタとあたしのスリッパの音がやけに響く廊下だった。
戸は閉まっていた。
だれもいないのだろうか?

取っ手に手を掛けると軽く開いた。
「失礼しますぅ」
中には、駒井亮君が一人で無線機のセッティングをしていた。
そう、科学部にはアマチュア無線班があって、彼が班長なのだ。
そして、あたしは科学部員ではないけれど、アマチュア無線の免許を持っていたので仲間に入れてもらっていたわけだ。
「よう。なおぼん」
「駒井君だけ?」
「うん。ほら、部員はフィールドサーベイに参加してるから」
※フィールドサーベイとは自由参加で、地理、地学、歴史などをその土地に訪ねながら学習する泊まりがけ合宿で、科学部が主催していました。

「駒井君は行かへんかったん?」
「留守番よ。留守番」
「そんなんあるわけ?」あたしは、窓際の無線機の棚のほうに近づいた。
「おれ、去年参加したから遠慮してん」
八重洲無線のFT-401Sというシルバーの美しい短波のトランシーバーがメインの無線機で、JH3Y**が学校のクラブコールサインだった。

「なおぼんは、どうしたん?」
「なんとなく」
あたしは、アンニュイな表情をしていたのかもしれない。
駒井君が眩しそうにあたしを見て手を止めた。

「おまえは、進路決めた?」
「理系にしよっかなとは思ってるけど、学校までは・・・」
「そうかぁ。三年のクラス分けは理系クラスはひとつらしいで」
「知ってる。桐山先生に聞いた」
※桐山先生はクラス担任です。
「駒井君も理系志望でしょ?」
「そうや。東京電機大学を考えてんねん」
「え?東京理科大じゃなくって?」
「両方受けるけど、第一志望は電機大や」
「ふうん。東京に行くんやね」
あたしは窓から六甲山の方を眺めて言った。
「なおぼんやったら薬科大とか狙ったら?」
「あかんて、お金かかるから」
駒井君は、無線機のシャーシをかぶせて、ドライバーでネジを締めている。

「なおぼん・・・おまえ、好きなやつっているんか?」
「え?」
あたしも、駒井君に同じことを聞きたかったので、少なからずびっくりした。
「駒井君は?」
「おれは、おまえや」真剣な顔で言う。
「うそ・・・」
あたしは、恥ずかしさのあまり下を向いてしまった。

「なあ、付き合ってくれへんか?」
両肩に彼の手が置かれて、くるりと正面を向かされる。
ポニーテールの先がきれいに弧を描いた。
「そんな・・急に・・・」
あたしは、それでも嫌な気はしなかった。
駒井君のことを、ほのかに憧れていたから。
「ほかに付き合っている男がいるんやったら、あきらめる」
なんて、弱気なことを言う。

「あきらめるの?」
あたしは、ちょっと意地悪を言ってしまった。

「だって・・・」バツの悪そうな駒井君。
「あたしのこと好きなんやろ?ほんなら、あきらめんといて」
あたしは、彼にしがみついた。
彼もひしっと抱いてくれた。
汗で制服のブラウスが貼り付く。
彼の男の匂いがあたしをくらくらさせる。
しばらくそうしていたら、駒井君はおずおずと唇を重ねてきた。

む・・
少しあたしより背の高い彼が、上から押さえ込むようにかぶさってきた。
あたしは、姿勢が不安定になって、倒れそうになる。
そのまま床に崩れていくほかなかった。

冷たい木の床が心地よく、あたしはしばらく仰向けになっていた。
そこは二人だけを隠す、絶好の空間となった。
でも、駒井君はどうしていいのか困惑しているらしい。
「いいか?」
「うん」
あたしは、処女ではなかった。
中学時代に、すでに経験済みだったから。
でも、そんなことは口が裂けても言えない。
大好きな駒井君に恥をかかせてはいけなかった。
だから、なにも言わずに彼にゆだねた。

ブラウスのボタンが外され、ブラが露わになる。
彼の手が震えている。
あたしも喉が、からからだった。

駒井君があたしの手を取って、触ってくれとばかりに股間に引っ張る。
あたしは、されるがままに彼の学生ズボンの前たてに手のひらを置いた。
ドキンドキンと脈動する生き物がその布地の下に息づいていた。
「硬い・・・」
「触って」
「こう?」
やわやわとペニスの輪郭を確かめるように握るようにした。
「ああ、気持ちいい」
うっとりとした表情を浮かべている駒井君。
ズボンを突き破りそうにそれは立ち上がっていた。
もうこれ以上刺激を与えていると爆発してしまいそうだった。
「ね、駒井君も触ってよ」
あたしは、少し大胆になってねだった。
「そ、そうだね。じゃ・・・」
あたしはショーツの上から触られると汚れてしまうのが嫌だったので、スカートをからげて、下着を下ろしてしまった。
呆れたように見ている駒井君。
「すごいね。丸見えだ」
「そんなにじっと見ないでよ。恥ずかしいから」
蒸れているので、恥ずかしい匂いが立ち昇る。
「洗ってないから、汚いよ。いい?」
「洗おうか?水道あるし」
さすが、科学部の部員だけあって、機転が利く。
「じゃ、このハンカチを濡らしてくれるかな」
「うん」
あたしのピンクのハンカチを持って、駒井君が科学水栓(三つの蛇口が十字に備わっているもの)の一番高い場所の水栓を開いて勢い良く水を出し、濡らしてくれた。
「かして」
あたしは絞ったハンカチを受け取ると、彼の目の前で、陰部を拭った。
「見ないでよ、もう」
「いまさら・・・」
「だよね。これくらいでいいかぁ。どう?匂う?」
駒井君が顔をあそこに近づけてクンクンする。
「ううん。きれいだよ」
「お上手・・駒井君のも拭こうか?」
「わかった」
駒井君は、ベルトのバックルを外して、ズボンを下ろし、前が異様に膨らんだブリーフの腰ゴムに手をかけた。
そして一気に下げた。
「わお」
バーンという感じで、バネのように大きくなったペニスが飛び出した。
濃い毛がその根本を飾っている。
毛は腿にまで生えていた。
「貸して。拭いてあげる」
素直に駒井君は濡れたハンカチをあたしに渡した。
熱を持ったその器官は、はちきれそうに膨らんでいた。
こんな目の前で、男の子を見るのは従弟のもの以来だった。
従弟のそれとは一回りくらい大きく感じた。
亀頭というのかしら、その部分が完全に露出して、つややかに光をたたえている。
アンモニアみたいな匂いが少し感じられた。
白い垢のようなものがくびれた部分に溜まっていたのでハンカチできれいにぬぐった。
「すごいね。こんなの初めて」
あたしは、嘘をついたけど、この場合そう言うしかなかった。

「どうする?」あたしは駒井君に尋ねた。
「してもいい?」
そう言うと思った。
「あたし、その、初めてだから」
処女のふりをするほかない。
「おれだって」
「まかせる・・・でも、妊娠させないで。お願い」
「わかってるよ。外に出すから」
そういう知識はあるらしいので、安心した。
下半身だけを裸にした若い二人が学校の理科室で睦み合ったのだった。
あたしは十分、濡れていたとはいえ、限りなく処女に近く、彼のものを半分呑み込むのがやっとだった。
「痛いのか?」
「少し・・・」
「やめようか」
「もうちょっとしたらゆるくなるんじゃないかな」
「濡れてくるってこと?」
「そう。だからキスして」
「わかった」
あむ・・・
あたしは、キスで自分の体が潤うのを知っていた。
おぼつかない高校生男子のキスは、それでもあたしを夢中にさせた。
「あん、駒井くん・・・」
「よこやま」
「なおこでいい・・」
「なおこ、好き」
「あたしも」
あたしは、だんだん膣がゆるんできていた。
駒井君もそれを感じたのか、深く突いてくる。
従弟より上手な腰使いだと思った。
「駒井君、ほんとはしたことあるんじゃないの?」
少し余裕がでてきたあたしは、上に乗っている彼に訊いてみた。
「ないよ。なおこが初めてだよ」
「ほんとぉ?あ、いい。すごい」
あたしも腰を浮かせて、彼の突きに合わせる。
「なおこも感じてくれてるんだ」
「いいよぅ。あん、ああん」
あたしは声が高くなっていた。
駒井君がブラを上にずらして、乳首を吸ってくるからたまらない。
「うひゃっ。だめぇ」
べちょ、べちょっ・・・
「なおこ、なおこぉ」
壊れたテープレコーダーのようにあたしの名前を繰り返す。
腰の動きが早くなって、射精が近いのかもしれなかった。
「だめよ、外よ。外に出してよ」
「わかってる。わかってるって」
真っ赤な顔に玉の汗を浮かべた駒井君が必死で腰を振っている。
「うああああっ。出るっ」
ずぼっという感じで胎内からペニスが抜かれ、あたしのスカートの内側といい、ヘソといい、内腿といい熱い液体をぶちまけた。
その量といったら、従弟のものと比べ物にならないぐらいで、後始末に困った。
オトナになると、精液の量は半端ないものになるのだと知った。
「あ~あ」
「ごめんな、こんなに汚してしまったわ」
「ティッシュある?」
「あ、待って、カバンから出すよ」
小さくなったおちんちんをぶらぶらさせながら、立ち上がる駒井君。
あたしは、思わず吹き出した。
「おかしい?」駒井くんが怪訝そうな顔で訊く。

「だって、あんなにおっきく立派だったのに」
「あ、これ?出すと小さくなるんだよ」
照れたように、パンツで隠す駒井君。
やっぱり、好きだな。彼。
あたしも形ばかりの始末をして、身支度を整えた。

「ありがと、駒井君」
あたしは精一杯、感謝のキスをして理科室を後にした。
そしてすぐに女子トイレに入り、スカートに「しるし」が残っていないか点検した。

駒井君は東京電機大学に進学し、あたしは在阪の大学に入り、お互い没交渉となったけれどいい思い出だったわ。

彼ね、お父さんの駒井電子という会社を継いで、今は社長さんですわ。

今、会ったら、どうだろね?
くわばら、くわばら・・・