京極家には、当主の欣太郎、つまり瀧子の父親と、その妻の志乃、瀧子と五つ違いの双子の妹、雛子と桃子が家族として住んでおり、住み込みの使用人として炊事係の成田はる、庭師の矢野甚兵衛そして車夫の後藤辰吉の三人がいる。

千坪近い敷地に洋館建ての住まいと、鍵型に曲がった日本家屋がつながった折衷建築と、離に隠居部屋、使用人の屋敷、納屋、厩、土蔵などが散在して、その間を鬱蒼とした林が埋めている。

この林はそのまま武蔵野の野山につらなり、境界はあいまいだった。
先代は裏の野原や里山で洋風の狐狩りなどを楽しんだという。

屋敷に塀というものは玄関付近にしかなく、あとは生け垣のような、そうでないような灌木で仕切られていて、近所の子供らが勝手に出入りして、虫取りなどをしていた。
また、それを咎める大人もいなかった。

辰吉は、車夫の仕事のないときは、甚兵衛に従って庭の灌木の枝払いやら、下草刈りなどを手伝った。
ときには、バラに殺虫剤を撒布するやっかいな仕事も引き受けさせられた。
この薬は毒性が強いらしく、辰吉は皮膚がかぶれるので閉口していた。

主人の趣味で洋館に隣接するバラ園が京極家の自慢だった。
甚兵衛は英国人のウィリアム某とかいう商人に教えを乞うて、バラの栽培法を習得したのだった。
苗木もその商人から譲り受け、立派に育て上げ、毎年絢爛豪華な大輪のバラをたくさん咲かせることに成功したのである。

敷地の巽(たつみ=南東)の方向は少し谷になっていて、小川が流れている。
土地の者は傍示川(ほうじがわ)と呼んでいた。
ここにはめったに人が来ず、欣太郎が川魚釣りに毛鉤(けばり)を試すくらいであった。
そこに打ち捨てられたような小さな納屋があった。
しかし、ある者たちにとって、格好の逢引場所となっていた。

「あん、ひなちゃん、そこ、いいわ」
「ももちゃん、ももちゃん。かわいいよ」
小鳥がさえずるような声が、納屋から聞こえる。
同じ声のトーンでハーモニーを奏でている。
まことに、耳に心地よい、愛のささやきだった。
「いやん、ああ、気持ちいい」
「もう、ももちゃん、じゅくじゅくよ。あけびみたいに甘いわ」
「ひなちゃんこそ、絹のように糸を曳いて・・・」

納屋の中は木箱を並べて、ゲットや古いカーテンでベッドが作られ、蒲団や枕まで持ち込まれ、六畳程度の一間(ひとま)がきれいにしつらえられていた。
双子の姉妹はここで、お互いの体を褒め合い、舐め合って、快感を分かつようになっていたのだった。
水仙のことをナルキッソスと言うが、これには自己愛の意味があるという。
双子というものは、お互いに自分を映し、自己愛の昇華として同性愛に発展しやすい。
彼女らは桃の節句の月に生まれ、雛子、桃子と名付けられた。
また、その季節が西洋では水仙の盛りでもあるのは単なる偶然ではあるまい。

しかしながら、双子の妹たちが、かような遊戯にふけるようになったのは辰吉の影響である。
車夫の壮年男は、おのが性欲のはけぐちを京極家の娘たちに向けていた。
嫁も取らず、四十近くになっても独り者で通しているのは、彼女たちとの交歓あればこそ。
当主も、奥様も娘たちが彼の餌食になっているなんて小指の先ほども疑っていなかった。
それほど、辰吉という男は狡猾で用心深かったのである。

「お嬢ちゃん方、自分たちだけでおいたはいけませんぜ」
庭師の手伝いも終わって、傍示川の小屋に訪れた辰吉が、双子の睦み合いを盗み見て、とうとう我慢がならなくなったのか、彼女らの前に進み出た。
「あら、たつきち、覗いていたの?」そう言ったのは姉の雛子だった。
それには答えず、
「おしおきとして、あっしのをしゃぶってやってくだせぇ」
「いいわよ。お出しなさいな」
そう言ったのは、妹の桃子だった。

辰吉は、着物を脱ぎ、股引(ももひき)を下ろすのももどかしく、ふんどし姿になると、にわか仕立ての「寝台」に大きな体を横たえた。
その縁に双子の姉妹が沿うという形だった。
先に手を伸ばしたのは桃子である。
薄汚れたふんどしは桃子のたおやかな手で取り去られ、濃い陰毛に縁取られた半立ちの陰茎を二人の前に曝(さら)した。
「まぁ、元気だこと」桃子が言う。
そして、細い手指を肉棒にまとわりつかせて、しごく。
姉の雛子は辰吉の顔にまたがり、自分の秘処を男に舐めさせるという大胆な行為に出た。
それもこれも、みんな辰吉が彼女たちに仕込んだことなのだけれど。
ぺちゃ、ぺちゃ・・・
辰吉の長い舌が雛子の実(さね)をつつき、幼い膣に挿入させる。
「あはあ・・」
かすかな、吐息を漏らす雛子。
桃子はといえば、完全に勃起した辰吉を頬張っている。
いささか、彼女の口には大きすぎる一物だった。
あむ・・
「ああ、気持ちいいです。桃子嬢ちゃん」
その言葉に気を良くしたのか、桃子はかなり無理をして喉奥まで棒を飲み込んだ。
手品師が剣(つるぎ)を飲むように・・・

えほっ、げほっ・・・
涙目で桃子がむせる。
「お嬢ちゃん、無理しちゃいけません。おいらのはでかいですから」
そう、にやにやしながら、辰吉が言う。
「もっと、舐めて」雛子が、中断した辰吉を咎める。
「へい」
舌の面積をいっぱいに使って、谷間を舐め尽くすように大きく辰吉は動かす。
「うあっ。いい。いいわぁ」
雛子の腰が自然にせり出し、辰吉の顔におしつけられ、彼の鼻梁に実を当てる。
桃子は唾をたっぷり亀頭に垂らして、手でしごくことに専念した様子だった。
「雛ちゃん、いいなぁ。あたしもしてほしいなぁ」
「あとでしてもらいな」と雛子はそっけない。
辰吉の顔はびたびたに濡れて、陽の光を反射している。
「あたし、たっつぁんの、入れる」我慢の限界だった桃子が巨根にまたがった。
「桃子嬢ちゃん・・・」
辰吉は、しかし止めなかった。
めりめりと、毛もまばらな幼い割れ目が、悲痛にも押し広げられ、大きく張った雁首が呑み込まれた。
そして、幼い姉妹が向い合って男にまたがっているという奇怪な景色を呈していた。
辰吉を半分収めたところで、桃子の胎内はいっぱいになり、中腰で止まらざるを得なかった。
しかたなく、桃子はその不安定な状態で、腰を上下させ快感を得ようと苦心している。
たまらないのは辰吉である。
窮屈な場所に一物がねじこまれ、強烈な締め付けを亀頭全体に感じ、射精してしまいそうだった。
もう月のものも訪れている年齢の姉妹である。
油断すれば孕ませてしまい、ここにいられなくなるのは必定だった。
「桃子さん、のいてくだせぇ。あっしはもう」
「いやよ。いやっ」
「だめだぁ、出ちまう」
びゅるるる・・・
「あああ・・・」
夥しい子種が桃子の胎内にぶちまけられた瞬間だった。
桃子は後ろ手をついてのけぞり、白目を剥いて口から泡を吹いている。
その結合部から、あふれでる精液・・・
「桃子っ」雛子が立ち上がり、桃子のところに走りより、ゆさぶる。
「ううう」
じゅぼっ
桃子から蛇のように長い辰吉のモノが抜かれ、どろどろと血混じりの粘く白い液体が流れ出た。
どこか切れているらしい。
しかし、すぐに桃子は気を取り戻し、恥ずかしげに頬を染めている。
「お嬢さん、えらいことをしてしまった」
「中に出したの?」
「ああ、桃子さんがのいてくれねぇから・・・」
「赤ちゃんできちゃう?」
「わかんねぇけど、できるかもしれね」
「雛ちゃんどうしよう」
「だいじょうぶよ」
「そうだ、立って、とんとんと飛んで、種を出して、川で洗いやしょう」
三人は、熱心に稚拙な「避妊法」を行った。
ここ数日の雨で傍示川の水は増えて、白く泡立っていたが、足は立つくらいだった。
そして、言われたとおり、冷たい川に尻をつけて、桃子は陰部を洗う。

それから不安な毎日を過ごしたけれど、すぐに桃子に出血が訪れ、辰吉も雛子も胸をなでおろしたのだった。