あたしは「合コン」というものを経験したことがない。
大学は、工学部だったので男子中心の社会だったのね。
クラブ活動をやっていれば、そりゃあ「合コン」の機会はあった。
けれども、男の子が主催するんで、あたしたちは、寄せてもらえないような雰囲気だった。
あたしら「身内」だからね、ハメ外せないじゃない(ホントのところは知らないけど)。

仕方がないから、今で言う「女子会」みたいに、女だけで飲みに行ったりした。
※うちの応用化学科は酒豪が多かった。あたしも鍛えられたわ。

男子に誘われなかったわけでもない。
よく誘われたほうだ。
ただ「合コン」じゃなくって、彼らにすれば「自家調達」みたいなもんでしたね。
お手軽な「女子」だったのよ、あたしたち、リケジョは。

今も、少ないとはいえ、あたしたちの頃ほど、理系に女子が希少じゃないでしょうから、そんな悩み(?)はないんでしょ。

いわゆる「オタク」の原型みたいなのが、ぼつぼつ生まれつつあったの。
彼らのと飲むと、まるで子供なのよ。
体は大人なんだけどね。
カラオケなんかアニソンメドレーで、うるさいのなんのって。
飲まずにやる豪傑もいたわ。
夏はキャラクターTシャツのクビの伸びたのと、ダシガラみたいなジーンズで体臭のきつい、汗だくの小太りってのが相場ね。
寒くなると、チェックのワークシャツってのかしらね、ユニフォームのように、男子はみんなそんな姿なのよ。
あたしらも、おしゃれには気を使わなくなるでしょう。
「見られている」っていう感覚が麻痺してくるのよ。
化学だから白衣きてりゃ、様になって、どこでもその姿で出没するからね。
下に何着てようがおかまいなしよ。
かろうじて、通学生だったから、電車に乗るんで、あんまりみすぼらしい格好はできなかったけどね。
近所の手前もあるしさ。
「横山さんのお嬢さん、どこに行ってはんの?学生さん?お勤めじゃないようね」
なんて、噂になるじゃない。

化粧は、就職活動までしたことなかった。
ナチュラルよ。すっぴんって言うのかな。
口紅は脂っぽいし、やだった。
メイクはまったく、どうすりゃいいのか・・・
素肌に自信あったし、小学生みたいな顔だったから良かったのよ。
そのころね、男の子から「原田知世」に似てるって言われたの。
あたし、彼女のこと、これっぽっちも知らなくて、映画「天国にいちばん近い島」だったかしら、男の子に誘われて観に行ったわ。
「似てるかぁ?」
あたしはそうおもったよ。
でもドラム缶のお風呂で知世ちゃんが泣くシーンがあったのね、「あ、似てるかも」って思った。
それから、彼女のことを好きになったな。
CDもいくつか持ってるよ。
今の彼女のほうが、だんぜんいいと思うよ。
もう、あたしのほうが老けちゃって、まったく似ても似つかないおばはんになっちゃったけどね。

さあ、お昼をしなくちゃね。
家事と介護の毎日で、今日が何曜日なのかもわかんなくなった。
あぶないな。
認知症になるんとちゃうやろか。