華山と少華山が一緒なのかどうかあたしはしらないけれど、華陰県にあることは水滸伝を読めばわかる。

少華山には山賊がいて、神機軍師朱武(じんきぐんししゅぶ)、白花蛇楊春(はっかだようしゅん)、跳澗虎陳達(ちょうかんこちんたつ)の三頭領が仕切っていたの。

神機軍師とか白花蛇、跳澗虎なんてのはアダ名なんだけど、その人となりを賞賛してつける美名ね。

陳達は、ちょっとオツムが軽く、短気な男で、少華山の備蓄が心細くなってきたから略奪に行こうと朱武や楊春に相談をもちかけるのね。
みんなその気持は同じなんだけど、途中、史家村を通らねばいけない。
史家村には九紋龍史進という、めっぽう棒術の強い若者がいる。
背中一面に九頭の龍の刺青が見事に彫られ、「九紋龍」とあだ名されていたの。
史進は、少華山の山賊を普段からよく思っていない。
いつか成敗してくれると意気込んでいるくらいだったからね。

史進ももとは、そんなに強い青年ではなかった。
ただ、我流で棒を振り回していたところ、王進という壮年の男が老母とともに、史家村にやってきたことがあった。
王進はもと禁軍棒術師範で、そこそこの地位にあった武官だったが、その上司に成り上がりの遊び人高俅(こうきゅう)が配属される。
もとはといえば、高俅が蹴鞠上手というだけで徽宗皇帝に取り入ったのが水滸伝のお話のはじまりなのよ。

高俅は実直な王進が気に入らず、ことあるごとにいじめるの。
高俅と王進の仲は険悪になり、命を狙われるはめに。
たまらなくなった王進は年老いた母を連れて、逃亡するのね。
そしてたどりついたのが、史家村だったの。
そこで逗留をゆるされ、史進の棒術を見て、「スジはいいがスキだらけ」と、けなすの。
史進は頭に血が上り、「よし、決闘だ」と意気込み、普段から息子の棒術狂いに不満があった史進の父は「息子の鼻っ柱をへし折ってやってください」と王進にお願いするわけ。
相手は、八十万禁軍師範の王進ですよ。
田舎の若造の棒術が太刀打ちできるはずもなく、一発で史進は負けてしまいます。
一転して史進は王進に弟子入りさせてくれと懇願します。
王進は宿賃の代わりに史進を指導するんだ。

もともと素質のあった史進ですから、すぐに師範の棒術の勘所を掴み、上達めまぐるしく、ついに王進も「もはや教えることはみな教え申した」と免許皆伝とします。
そうして王進親子はどこへとも旅立って行きました。

そんな史進に少華山の山賊が勝てるわけもない。
朱武と楊春は陳達を止めます。
「やめとけ。殺されるぞ」
バカな陳達は「やってみなけりゃ、わかるめぇ。相手は一人だ」
と、無謀にも史家村に雪崩れ込むのでした。

案の定、陳達は史進に捉えられ、首をはねられる寸前です。
朱武と楊春は山を降り、史進に詫びを入れ、陳達の釈放を願い出ます。
もしそれが叶わないなら、義兄弟の自分たちも同じ運命にしてくださいと仁義を見せます。
史進とて、義理人情に厚い好漢です。
彼らを許し、義兄弟の契を交わし、仲直りの大宴会を催すのでした。

お話はもっと続きますがこのへんで。

どうです?
中国の宋代のお話ですが、今の中国とはまったく別の世界があったんですね。
血沸き肉踊る漢(おとこ)の世界がこれでもかと展開させられ、女のあたしでも惚れますわ。

毛沢東以後の中国は、共産主義という魔術にかぶれ、おかしな軍事大国を創りだしてしまいました。
もっとも過去の帝国もどろどろとした、殺戮の歴史でした。

あたしは「仁義」の世界に身を置いて、まさにこれが美しい日本に必要なのではないかと思ったんです。
ヤクザも変わり果てました。
みんな金(かね)の亡者だ。
蒲生でさえ、そうだ。
柏木は、まだチンピラだから、わかっていないのだろうけど、雪洞組(ぼんぼりぐみ)の心意気はどこへいったのだろう?

蒲生の机に、岩波の「水滸伝」を置いてきてやった。
「読め」ってね。