あたしは、夜中に目が覚めた。
ここは、あたしが閉じ込められているお兄さんの家だった。
手に違和感があった。
何かを握っている。
いや、握らされているんだった。
暖かい、指のような棒のようなものを。
たぶん、お兄さんの体の一部であることは間違いなかった。
そしてあたしのその左手をお兄さんの手がつかんで動かしているようだった。
あたしは確かめたくて、少し力を入れて握ってみた。
「くああっ」
お兄さんの、くぐもった声がしてそのモノがびくびくと手の中で震えた。
暖かい液体が手の甲を伝うのがわかった。

お兄さんの手が、あたしの手から離れる。
あたしは寝たふりを決めた。

ティッシュペーパーを取る音が聞こえ、その紙であたしの手がふかれている。
はぁはぁと荒い息が聞こえる。
漂白剤のような変な匂いがただよってきた。
あたしは手についた液体で手がかぶれるような錯覚を覚えた。
早く手を洗いたかった。
あたしは、
「ううん」
と目が覚めたように装って声を上げた。
と、お兄さんがあわてて、ジャージのズボンをたくし上げる。
暗がりにお兄さんのお尻がちらりと見えたのだった。
「お、起きたのかい」
「何してんの?」
「なんでもない」
「あたし、おしっこ」
「あ、ああ、行ってこいよ」
あたしは、おしっこもさることながら、手を洗いたかったのだ。
便器に座って、手のひらを見た。
指の股にネバネバしたものがのこっている。
手の甲はなんか、かぴかぴして突っ張っている感じもした。
鼻に持って行って、臭いを嗅いだら、あの青臭いような漂白剤のような匂いがした。
「なぁに?これ」
薬品というよりは、自然のもののような気がした。
だったら、お兄さんが出したものだろう。
あたしにはそれ以上の知識はなかった。
体から出るものなんて、唾や汗、膿(うみ)くらいしか思い浮かばない。
とにかく洗うことにした。
用を足して、手洗いの流水でよく洗った。

もどると、お兄さんは布団をかぶって寝てしまっているようだった。
あたしもそっと、お布団に忍び込んだ。

それから、あたしは夜に何度も同じ目にあうようになった。
あたしの握っていたものは、お兄さんの大きくなったおちんちんだったこともわかった。
そしてあの液はお兄さんのおちんちんから飛び出したものだということも。
薄目を開けて、その一部始終を見届けたから間違いなかった。
弟の直人の豆みたいなおちんちんしか知らないあたしは、大人のものは何倍も大きいものだと知ることになった。

これまであたしはお兄さんからエッチなことをされたことがなかったから、安心していたのに…
あたしが寝ているのをいいことに、黙ってこんなことをしていたなんて。
急にあたしは汚されたような気がした。

腹が立って、ぎゅっと、おちんちんを握りつぶすようにして力を込めた。
「いたたたっ」
「何してんのよ!」あたしは、睨みつけた。
「起きてたのか…」
とかなんとか口の中でぶつぶついいながら、あわてて、ズボンを上げるお兄さん。
いたずらを咎められた少年のようにかしこまってしまった。
あたしは、なんだか可哀想になってきた。
あたしに怒られている弟、直人のことが思い出されておかしかった。
「あたしが寝ている間に、そういうことしてたんだ…」
あたしは低い声で、詰め寄った。
「ごめん」
「これって気持ちいいの?」
「あ、ああ」
「あの、ぬるぬるしたおしっこは何?」
「おしっこじゃないよ。精液だよ」

あたしは、学校で習ったことがあった。
女の体に精液が入って、卵子と出会うと赤ちゃんができるのだった。
「セイエキ?あれが?」
「そうだよ。智里は見たことがないんだろ」
当たり前だった。

「怒っているのかい?」
「ううん。けど、悔しい気がする」
「くやしい?」
「お兄ちゃんに裏切られた」
「ごめんよ。智里が好きなんだよ」
そう言って、お兄さんがあたしを抱きすくめた。
男の人の匂いに包まれた。
すっごく安心感があった。
あんなに嫌っていたのに。
「すきだ…好きなんだ」
ひとりごとのように繰り返すお兄さん。
そしてキスされた。
あたしは拒まなかった。
甘いキスに酔った。
初めての他人の味。
「この人は誘拐犯で、ヘンタイ男なんだよ…」ともう一人のあたしが叫ぶ。
そうじゃない。
そうじゃないんだ。
お兄さんは、さみしい人なんだ。

お兄さんの手があたしの胸を触ってきた。
もう嫌な気はしなかった。
いつかこうなる運命のようなものを感じていたのだから。
男と女が好きになれば、抱き合って、キスして、セックスするくらい、あたしだって知っている。
あたしのことを、お兄さんは好きだから、さらってくれたのだと思うと、なんだかお伽話のお姫様になったように考えても不思議じゃない。
ゲームや漫画ではよくある設定じゃないの。
お兄さんは「王子様」とか「戦士」みたいな人なのかもしれない。
一緒に、得体のしれない怪物と戦うの。
「あん…」
あたしの恥ずかしい処…パンツの中にお兄さんの指が触れる。
自分でも触らない場所に、他人(ひと)の手が触る。
なにか、じわりと体の奥から湧いてくるような感じがした。
机の角にあの部分を当てて押していると感じる、あの感覚…
お兄さんの指に向かってあたしはあそこを押し付けていた。
ぬるぬると、その部分が湿ってきて、指の動きがなめらかになって、とても気持ちが良くなってきたの。
はぁ、はぁ…
お互いの息が荒くなって、お兄さんのおちんちんが硬く、硬くなってあたしのジャージ越しにお腹をつつく。
「裸になろうか」
あたしは返事をためらった。
こんなことをして、もう昔のあたしには戻れないような気持ちがしたのよ。
お兄さんは、どんどん着ているものを脱いでいき、パンツもおろしてしまった。
常夜灯の薄暗い中、びんびんと弾むようなおちんちんが上を向いている。
大人の、毛の生えたそういうものを見るのはもちろん初めてだった。
お父さんのものだって記憶に無い。

これが、あたしの中に入るのだろうか?
かつてスライドで見せられた断面図のような性器を思い浮かべて、あたしは不安になったわ。
生理は毎月、ちゃんと来る大人の体になっているのは確かだったけれど、それとセックスが可能なこととはあたしの頭のなかではつながっていなかったの。
あたしも、ジャージを脱いだ。
ブラはつけていないので、おっぱいがそのまま飛び出した。
幼児体型なので恥ずかしかった。
「お兄ちゃん。セックスするの?」
「ああ、もう、がまんできない」
「そうなの…でも、あたし、こわい」
「だ、だいじょうぶだよ。おれが、ちゃんとしてやるから」
すがるしかなかった。
裸の二人が、布団の上で見つめ合っている。
「またを開きなよ」
お兄さんは、顔を近づけて、その部分を念入りに観察している。
指が入れられる感じがした。
「いっ…」
「痛いか?」
「ううん」
指はずぶずぶと入っていき、中がぐりぐりとかき回される。
「や、やめて、それ」
「だめか?やっぱり」
「変になっちゃう」
「なればいいじゃないか」
あたしの体はどうかしてしまったようで、もう未知の領域だった。
「すっごい濡れてるぜ」
「そう?」
「ほら」
指がしっとりと濡れて、光っている。
「入れていいかな」
「こわいな」
「だいじょうぶだって。痛けりゃ止めてやるから」
そういうと、またをさらに開かされ、お兄さんが割り込んでくる。
あたしは上を向いて、力を抜いた。
ぐり…
硬いものが押し付けられ、押し拡げられる。
「入ってくぜ」
「ううう…」
「すっげ、きつい」
「痛い」
「痛いか」
「痛いよ」
「もうずっぽり入ったよ」
あたしは、首を曲げてその部分を見た。
密着していて、お兄さんの硬いものが見えなくなっている。
なにかハマっている感じはあった。
ゆっくりお兄さんが動き出す。
「あはあ」
「たまんねぇな。かわいいよ智里」
「お兄ちゃん…」
内臓が引き出されるような感覚と、反対に突かれて胃まで貫かれるような錯覚。
クチ、クチ、クチ…
いやらしい音が聞こえる。

「あ、だめだ、おれ」
そういって、ぎゅっと抱きすくめられた。
どくどくとあたしの中が震え、お兄さんがけいれんしている。
あたしはなんだかわからずに、お兄さんにしがみついていた。
「出ちゃったぁ」
そう聞こえた。
精液があたしの中に放たれたということらしい。
それって…赤ちゃんができちゃうってこと?
「やばいよ。お兄ちゃん」
あたしは、泣きそうな顔で言った。
「だな…」
「離れてよ」
「わかった」
あたしから抜ける感覚があり、お兄さんが離れてくれた。
「うわ、すげっ、いっぱい出て来たぞ」
「いやぁん」
あたしは、立ち上がって風呂場に逃げ込んだ。
シャワーで思いっきり洗う。
お兄さんが後から入ってきて、
「飛べ」
と言った。
あたしは、立ってトントンと飛んだ。
どろりと精液のかたまりが股から垂れ落ちた。
これでいいのだろうか?
あたしは、大人になったのだろうか?
取り返しの付かないことをしてしまったのではないだろうか?

朝までまんじりともしないで布団の中にいた。
お兄さんが、
「おれさ、初めてだったんだよ」
と、告白した。
「あたしも」
「この歳で女を抱いたのが初めてなんて、シャレにならないだろ?」
「わかんない」
正直、お兄さんの初めての女があたしだったとしても、それにどんな意味があるのかわかりはしなかった。
「もっと上手にしてやれたのにな」
そういって詫びるのだ。
「ううん、あたしは、お兄さんにしてもらって良かったと思ってる」
「ほんと?」
「ほんとだよ」
お兄さんは、ぎゅっとハグしてくれ、またキスを浴びせてきた。
あたしたちは、また交わったの。