中国制作のテレビドラマ『水滸伝』で賂(まいない)とか「袖の下」あるいは「心づけ」なんてものがよく出てきます。
まず臣下の者が重臣に贈る「貢物」が、義賊たちのターゲットになる。
ところが、好漢たちも官吏に「袖の下」をどうどうと渡している。
高俅(こうきゅう)殿帥府(でんすいふ)大尉のドラ息子高衙内(こう・がない)が八十万禁軍(きんぐん)師範の豹子頭林冲(ひょうしとうりんちゅう)の妻に横恋慕し、強引なセクハラ事件を起こしました。
※「豹子頭」とは「豹(ひょう)のように額が狭い」ということらしく、つまり林冲は「猫の額」だということね。

高大尉は林冲の上司です。
その上司の息子が自分の妻に手を出したわけね。
父親は息子をかばい、林冲は高俅にはめられるの。
殿帥府の帯刀を許されない場所に「林冲の所持する名刀とやらを見せてほしい」と誘い込まれ、林冲は名刀を持参してその場所に入ると、高俅の手下に囲まれ、帯刀を理由に逮捕される。
汚いねぇ。
それで、滄州に流される。
自分がいつ刑期を終えて帰れるかわからない今、妻を自由にさせてやる配慮で離縁し、彼は二人の端公(たんこう)、つまり護送役人とともに滄州に旅立ちます。
この二人の端公は林冲の知己、陸権が「袖の下」で買収されていました。
陸権も上司、高俅怖さに、衙内の手下から脅されていたのです。
陸権は護送中に林冲を殺してくれと端公たちに依頼するのでした。
花和尚魯智深の助けもあって、林冲は殺されずに済み、無事滄州に着きますが、そこの獄卒に賂がないと厳しい折檻に見舞われます。
魯智深はそのために銀子を十両ほど林冲に与えていました。
それでも足りないから、滄州の名士、小旋風柴進(さいしん)に賂のための銀子を無心します。
林冲をして「地獄の沙汰も金次第」と言わしめるシーンが印象に残ります。

このように、だれもかれもが「賄賂」をし、求める風土が中世中国にはあって、それはなにも中国だけではなく、ヨーロッパでも日本でもありました。
また賂(まいない)の歴史は貨幣経済以前からあったと考えられます。

そんなことよりも現代中国でこの『水滸伝』がもてはやされ、義理人情に薄くなった昨今、もう一度「強きをくじき、弱きを助ける」精神に共感する中国人が、賄賂の効用も吸収するわけです。
それほど『水滸伝』では賄賂を肯定的に描いています。
自分の目的が信義に発する場合は、賄賂で切り抜けることも許されるということらしい。

実際の中共の政府の役人は、あからさまに賄賂を要求するそうです。
また、反対勢力にそれを逆手に取られて失脚することもあります。
まさに『水滸伝』の世界が現代中国に健在なんですよ。