北朝鮮の暗号放送と思われる放送が短波帯で聞くことができます。
ある筋によると韓国から発放されているとも言われています。
このインターネットの時代に短波放送を使った暗号など効果があるのだろうかという疑問もわきますが、短波ラジオさえあれば工作員に伝達できるのでローテクのローコストが好まれるのでしょう。

問題の暗号は乱数表を用いたそれこそ古典的なものと推察されます。
なにしろモールスで数字の列を送ってくるだけですから。
これも運用の仕方で、なかなか解読困難な暗号となるのです。
乱数表の入手が第三者に不可能なものなら、まったく読めません。
だいたいはリークされた情報から解読されるのです。
たいていは、二重、三重に乱数表をかましてあって、やっと、ある北朝鮮の人間ならだれでも持っている本にたどりつければ、その中の文言を組み合わせたハングル文章に復号されます。
実は復号のしかたに何種類かのパタンがあって、放送の冒頭のアナウンスの仕方でどの方法にするのかが工作員に読めるようになっています。
ちょうど野球のサインみたいなジェスチャにあたる「言い回し」です。
あたしが工作員と接触した三十年ほど前にはそうでした。
今はどうか知りません。

そうね、第二次世界大戦の「ノルマンディー上陸作戦」において、ロンドンBBCの放送が暗号(というより合図)に使われたものに似ているかもね。
それがヴェルレーヌの「秋の詩(うた)」が朗読され、それが決行の合図になっていました。
上田敏の訳でいいますと、
「秋の日の ヴィオロンの ためいきの」と、それに続く第二連「身にしみて ひたぶるに うら悲し」を合図に使ったのです。
「秋の日の~」の部分は1944年6月1日から数回放送されました。
この意味は、「近くD-Day(ノルマンディー上陸作戦)が行われるからレジスタンスの諸君は準備するように」という喚起です。
そして5日、「身にしみて~」が朗読されます。
この意味は「今より48時間以内に作戦決行」です。つまりD-Dayは6日だと言うのでした。
かくして6日未明に連合軍の上陸用舟艇はノルマンディーの海岸に押し寄せたのです。

ナチス・ドイツもこの暗号の意味をある程度知っていました。
しかし、連絡漏れだったのか、肝心かなめのノルマンディー守備隊には知らされなかった。
ロンメル将軍は上陸されるなら、ノルマンディーが危ないと事前に視察もし、地雷の増量などを指示していたのにもかかわらずです。
蓋を開けると、ナチはポーランド人やトルクメン、アゼルバイジャン人の傭兵を中心にノルマンディーの守備につけており、ドイツのために身を挺して戦う気もなく、さっさと連合軍に投降したといいます。

まあ、それは裏話ですがね。

というわけで、短波放送が暗号放送に利用された歴史は古く、結果的にナチを敗北に追いやった作戦の一端を担ったのです。

5115、5175、6215kHz で、十年ほど前には朝鮮語のアナウンスの後、毎正時と毎半時に21:00JST~A2A(CW)と音声(A3A)の二通りで放送されます。
これが「北」の放送なのか、「南」からのものなのかは不明です。