商標(ブランドネーム、トレードマーク)で、消費者にとって「どっちが本物?」と判断に苦しむものがよくあります。
京都の帆布製バッグメーカーの「一澤帆布」がそうです。
元、一澤帆布工業株式会社という会社があり、先代一澤信夫社長が亡くなり、社長を継いだ三男信三郎とほかの相続人より遺言書の真偽(二通あった)で裁判沙汰になり、三男が敗訴、当時すでに亡くなっていた長男の遺族から三男は解雇されてしまいます。
三男信三郎は、職人たちを引き連れて新しい会社「一澤信三郎帆布」を設立するのです。
この間、工房を一澤帆布工業のものを使っていたので、信三郎たちは強制執行で追い出されたりするのです。
裁判に負けた信三郎らは、地元や顧客の応援で再び、帆布製品を世に出すことができました。
その後、長男側の会社も新たに職人を入れて、帆布製品を製造販売して、二つの「一澤帆布」がこの世に存在することになります。
信三郎の妻が、これを不満に、再度、長男側の遺言書の無効確認を求める裁判が起こされ、今度は長男側敗訴とまったく矛盾した結論がでました。
一事不再理のすき間を突く、巧妙な訴訟提起だったのです。
つまり一事不再理の原理は裁判当事者にのみ及ぶのであり、敗訴当事者の妻からの訴求はその埒外であることから、このような同じ案件での訴訟が可能となり、結果、矛盾した判決が出てしまいました。
「信三郎帆布」として、先代の品質を受け継いだものが今も手に入ります。

よく間違うマーク(商標)に三菱のマークがあります。
「ゼロ戦」を作った三菱重工などの三菱グループに三菱鉛筆が入っているのか?
三菱鉛筆株式会社は財閥の三菱とはまったく無関係の会社なのです。
三菱鉛筆のマーク「スリーダイヤ」は財閥の三菱が使うよりも十年も早く、商標登録されていました。
最近では三菱鉛筆は「uni」の商標を使うようになってきていますね。

飴の「黄金糖」と「純露」の形は同じですよね。
これも紛らわしい。
黄金糖製菓と味覚糖とまったく別の会社がつくっているんですよ。
ただ両社は争っていません。
これは飴を製造する工程で型を使うのですが、両社が共通の金型屋を使っていたため、同じ形になってしまったというのが理由だそうです。
飴の形状がバケツのようにテーパになっていますね。
これを「抜き勾配」といい、型離れしやすいデザインなんですね。

刃物のヘンケルには二つのマークがある…
「ツヴァイリング・ヘンケルス」はゾーリンゲンの刃物屋さんで、双子のマークです。
もうひとつ、一人のマークがあります。
こちらは「ヘンケルス」というブランドです。
どちらもJ.A.ヘンケルスという創業者のブランドです。
「ツヴァイリング」は高級品、「ヘンケルス」は汎用品ですって。
なお化学会社のヘンケルとは関係がありません。

京都の和菓子に「京観世」と「雲龍」というよく似たものがあります。
どっちも村雨(むらさめ)に餡を巻いたような、そこそこ値の張るお菓子で、「お持たせ」にしますね。
「雲龍」のほうが俵屋吉富という屋号の和菓子屋のものです。
「京観世」は鶴屋吉信という屋号のお菓子です。
食べ比べると両者は、まったく食感が異なりますので、厳密には同じものではない。
和菓子は、よく似たものがあって、どっちが先駆か、後発かという議論は無味乾燥です。
羊羹だって、「駿河屋」や「とらや」など、一見同じものをたくさんの老舗が作っています。
もっとも各お店は、独自の、それこそ一子相伝、門外不出の製法を持っているのでしょう。
「京観世」や「雲龍」もそれぞれに由来があるようですが、もしかしたらどちらかが「真似」したのかもしれない。
ただ、食感や風合いが全く異なるので、外観は真似ても、中身まで真似られず、独自に発達していったのでしょう。
まったく謎です。
ある職人がどちらかの店で修行していて、何らかの理由で出てから作ったとも考えられませんかね。

鶴屋吉信には、鶴屋八幡という似た名前の和菓子屋がありますが、鶴屋八幡の方が古いらしい。
鶴屋八幡はさらに老舗の虎屋伊織という和菓子屋から派生したらしい。
虎屋伊織は今もありますが、羊羹の「とらや」と「笹屋伊織」とは無関係らしい…
駿河屋ももとは鶴屋と言ったらしい…(京都伏見の菓子司なのに「駿河」とはこれいかに?)
もう京都の和菓子屋はわけがわかりません。

これらのように、似ているが違うものを調べてみました。
また、なんかあったら、アップします。