あたしは、家の前の農機具を収めてある小屋の屋根を見ていた。
ハトが二羽、つがいなのだろう、いちゃいちゃしだした。
ハトというものは、求愛のしぐさがヒトに似ていて、まずキスから始まる。
互いにくちばしを絡め合って、首を伸ばしてキスをする。
そうして、おもむろにオスがたかぶってきて、メスもマウンティングの姿勢に移った。

オスは素早くメスに乗っかり羽ばたきながら、交尾を済ませる。
一瞬の出来事だった。
面白いのは、終わった後のオスがヒトの男性のように、恥ずかしそうに見えるところだ。
どこかよそよそしく、「どっかいっちゃおうかなぁ」みたいな。


口を開けてあたしは一部始終を見ていたのだろう。
道行く人が、変な顔であたしを見た。


もう、二羽はどこかへ去ってしまったようだ。


恋の季節とは、恥ずかしい季節なのだなと思った。


番(つが)う鳩の 恥じ入る顔に 夏至近し     尚子