映画『カサブランカ』を観ました。
もう何度目ですかね。
最初は高校の英語の時間だったと思います。
戦後まもなく作られた映画で、とても有名な作品です。

ハンフリー・ボガート扮するリチャード(愛称リック)とイングリッド・バーグマン扮するイルザ。
イングリッド・バーグマンの可愛らしいけれど凛とした美しさに殿方は見惚れたことでしょう。

この映画はロマンスものではありますが、第二次世界大戦でフランスが陥った二重政権状態という複雑な事情を色濃く描いています。
枢軸国(ドイツとイタリアおよび日本)と米英連合国の戦いのはざまでフランスはナチスに占領され、ナチの傀儡政権がフィリップ・ペタンによって温泉の街ヴィシーに置かれます。
ミネラルウォーター「ヴィシー水」で有名な街でもあります。
※映画の最後にルノー署長がヴィシー水の瓶を屑カゴにたたき捨てるシーンが暗示的です。

一方で、フランス国内は反ナチのレジスタンス活動が暗躍し、ナチを翻弄します。
ヴィシー政権は、ナチに追随するために自国のレジスタンスを取り締まり、フランス人を収容所に送るのです。

映画の舞台「カサブランカ」は北アフリカのモロッコという仏領国の首府でした。
ナチから逃れ、自由の国アメリカに亡命するフランス人が後を絶たないのですが、その道のりは険しい。
いたるところにヴィシーの出先機関があり、このカサブランカも例外ではないのね。
そしてナチのゲシュタポが監視の目を光らせている。
亡命希望のフランス人は、リスボン(ポルトガル)に行けばアメリカ行きの飛行機や船に乗ることができる。
しかしイベリア半島沿いにリスボンに向かうにはナチの息のかかったスペイン・フランコ政権の土地を通らねばならない。
そうなると、地中海を横断し対岸のモロッコからリスボンに空路で行くのが遠回りでも安全だ。
そういうわけでモロッコのカサブランカには亡命希望者であふれていた。
アメリカ渡航に必要な査証を不法に、大金をはたいて手に入れるお金持ちたちが機会をうかがっているんです。
そんな中、二名のドイツの軍属が列車の中で何者かに襲われ、無記名の査証が奪われた。

カサブランカには空港を管理する司令官としてナチスのシュトラッサー少佐が派遣されており、その下にヴィシー政権の警察署長ルノーが街の治安を維持していた。
闇の旅券ブローカーのウーガーテが、ドイツ人から奪った査証を、リック(ハンフリー・ボガート)が経営する酒場「アメリカン」に持ち込み預ける。
この査証を巡って、ナチや警察の手入れ、リックがかつてパリで分かれた恋人、イルザとその夫ラズロが絡む物語なんです。

イルザは数年前、リックとパリで恋に落ちます。
ただ、イルザにはリックに言えない秘密があった。
だから、パリでリックを置き去りに不本意な別れをした。
そのイルザがカサブランカのリックの店に、ラズロという地下組織活動家とともに現れる。
ラズロとイルザもアメリカ亡命を希望していたからだ。

シュトラッサー少佐(空軍司令官)も、ルノー警察署長もラズロをマークしている。
またリックがラズロらを亡命手引きするのではないかと勘ぐっている。
リックとルノー署長は仕事柄、持ちつ持たれつの関係であり、友人でもある。
そしてカサブランカのフランス人は心の底ではナチスを良く思っていない。
リックの店でフランス人客らが「ラ・マルセイエーズ」の合唱の応酬でナチのシュトラッサー司令官たちを追い払うシーンも痛快でしたね。
ルノーだってナチに面従腹背であり、自身の立場があるからリックを取り締まるふりをするのね。

リックは何も言わずに自分の前から消えた、いわば裏切りの女イルザにわだかまりをもっていた。
イルザに事情があることも承知していたが、それがなんであったのかはわからない。
おそらくラズロに関することなのだろうが…

ラズロこそは世界の平和を心底、欲し、地下活動に参加する首魁の一人だった。
だからここで捕まって死ぬことはできない。
なんとかしてアメリカに亡命し、しのぎたい。
リックもそのことは痛いほどわかっているのだ。
ブローカーで活動家だったウーガーテは査証をリックに預けたまま、敢え無くナチに捕縛され、自死したという。
リックはラズロにこの査証を渡したく思っていた。
がしかし、イルザのこともしこりとして残っていた。
ラズロとイルザの関係は?

ナチと警察に追い詰められたラズロたちは、なんとか査証を手に入れて、カサブランカの空港からリスボンに旅立ちたい。
イルザは夜に人目を忍んで、リックの店に忍び込む。
単身、リックの部屋に潜んでいたイルザはリックと目合わせる。
そしてラズロにリックの持つ査証を譲ってほしいと懇願するのだ。
リックは、イルザにパリでの待ちぼうけの件を問いただした。
イルザは、実はあの時すでにラズロの妻だったと告白した。
ただ、当時ラズロは地下活動で捕まって生死不明だった。
そのままだったらリックについていっただろうが、リックと旅立ちの約束をした後にラズロが生きていることがわかり、リックとの約束を破棄してしまったのだと。
リックは「そんなことだろうと思っていた」と冷たく言い放つ。
イルザは、リックに短銃を突き付けてでも「ラズロに査証を」と迫る。
もとより撃てないことはリックも承知だった。
それほどまでに夫を愛しているのだ。
なのに、イルザはラズロについていかず、リックとともにカサブランカに残るとまで言うのだ。
リックはイルザにキスし「君の瞳に乾杯」とつぶやく。

あたしにはわからないが、リックもラズロも愛しているイルザの気持ちはわからないでもない。
この物語を切なくしているのは、この三角関係だと思う。
それを邪魔するナチス。
観客の目は「ナチス憎し」と差し向けられ、監督もそういう風に作っている。
リックはあくまでもかっこよく、イルザとラズロを助けるのだ。
カサブランカ空港での間一髪のラストシーン。
ここは映画を観てください。
やっぱり「君の瞳に乾杯」とリックがイルザに言って送り出すの。

最初の部分で、あの名セリフが出てきます。
リックの酒場で、イヴォンヌというパンパン女がリックがつれないのをなじって
「夕べどこに?」
「そんな昔のこと、覚えてないね」
「今夜会える?」
「そんな先のことはわからない」

セリフがわかりやすい英語で、ボガートやバーグマンの発音もきれいなので英語の教材としてもすばらしいです。