男性の方は自分のおちんちんが勃起することを経験しているでしょうが、それがなんで起こるか理解されていますかね。
え?エッチな写真を見たら勃起するって?
そりゃまぁ、視覚的な要素は勃起の起爆剤になりますが、じゃあその視覚的な「女の子が、おまんさんをいじっている写真」がどうしておちんちんを硬くさせるんだろう?
想像でだって勃起するんでしょう?
な~んもエッチなことを考えていなくても朝になったら立ってるという若い子もいるでしょう。
インポで悩んでいる中高年男性がバイアグラに手を出して、うまくいったってんで泣いて(?)喜んでいるコメントも見たことあります。

おちんちんの勃起は、物理的には、陰茎海綿体に血液が流入して硬くしているのね。
海綿体の中の血管内壁にはところどころ節があって血液が流入して血管が膨れると締まって、血液をうっ滞させるしくみがありますし、竿の部分を覆っている白膜というコラーゲン繊維で、たいそう丈夫になっている膜は内圧でパンパンに硬くなるのよ。
まったくパスカルの原理で硬く立っているわけ。

ではその制御系といいますか生理学の観点から見てみます。
アミノ酸のアルギニンから一酸化窒素合成酵素により一酸化窒素(NO)が合成され、グアニル酸シクラーゼという酵素を活性化することで環状グアノシン一リン酸(cGMP)産生を向上させます。
cGMPは平滑筋を弛緩させる働きがあるので、血管の平滑筋も弛緩させ血流を増やす(陰茎勃起)ことになります。
しかし、この状態を制御するために5型ホスホジエステラーゼ(PDE-5)酵素がcGMPを適宜分解して平滑筋弛緩を鎮静化させるから、性的刺激がなくなれば勃起は収まります。
ところが勃起障害の患者さんは、PDE-5がすぐにcGMPを分解するので中折れ、半立ちになってしまい、勃起が持続しません。
そこでバイアグラやシアリスなんていうお薬が登場するんですよ。
バイアグラなどはPDE-5の仕事を邪魔する薬なんですよ。
バイアグラを飲めば、cGMPは分解されずNOがずっと血管平滑筋を弛緩させたまま陰茎に血液を送り込み、勃起を維持してくれます。
性的刺激がなくなれば、ちゃんと勃起は収まるんでPDE-5は働くようになるんですから安心ね。

そもそも狭心症の患者さんにニトロパッチとかニトログリセリンの貼り薬や舌下錠を発作時に与えますね。
あれもニトログリセリンが加水分解され、硝酸が還元されて一酸化窒素を発生し、血管平滑筋を弛緩させて発作を収める作用を利用しているんです。
バイアグラはもともと狭心症患者の発作を収める新薬として治験作業に入っていました。
ニトログリセリンでは作用が長続きしないからです。
治験が終わっても患者さんが残ったバイアグラを返してくれないんですよ。
医師が不審に思って患者らに聞いたところ「すばらしく勃起して、恥ずかしながら、ご無沙汰だった夫婦生活が戻った」と口をそろえて言うわけ。
そこからバイアグラやその仲間に勃起障害への転用が見込まれて、今に至っているのね。
注意すべきは心臓疾患のある人でニトロを処方されている人はバイアグラを服用すると血管平滑筋弛緩の作用が強くなり急な血圧低下で卒倒するか、最悪、死に至ることです。

グアノシン三リン酸(GTP)からグアニル酸シクラーゼ(GC)によって環状グアノシン一リン酸(cGMP)が生合成されるます。
可溶性グアニル酸シクラーゼ(GC)は一酸化窒素(NO)によって活性化されるのでした。
GTP (NO+GC)⇒ cGMP (PDE-5)⇒ 5'-GMP
この式の始めの反応で勃起が起こり、二番目の反応で勃起が収まるのです。
バイアグラなどは二番目の反応を邪魔するので、cGMPが5'-GMPになれず、ずっと勃起状態を保つように一酸化窒素を出すように命令し続けます。

一酸化窒素の体内での生成はオルニチン回路で説明されます。
オルニチン回路は高校の生物でも勉強する大切な生体内代謝回路です。
オルニチン回路は一言でいえば「アンモニア代謝回路」です。
有毒なアンモニアを無毒な尿素に変換し排泄させる回路です。

タンパク質の消化により、生体内で発生したアンモニアは有毒ですから、直ちに無毒な物質に変換、代謝されなければなりません。
肝臓細胞でアンモニア性窒素は尿素、グルタミン酸、グルタミンに変換されるようです。
アンモニア性窒素はまず、肝臓で無毒で輸送に適したグルタミンとアラニンに変換されるんです。

細胞内のミトコンドリアでは、グルタミンとアラニンも最終的にはグルタミン酸に変換され、二酸化炭素とグルタミン酸から遊離したアンモニアからカルバモイルリン酸が作られます。
カルバモイルリン酸のカルバモイル基がオルニチン回路に入って、オルニチンと化合してシトルリンに変化し、コハク酸と化合してアルギノコハク酸となり、そこからフマル酸が脱離してアルギニンになり、そこから尿素が脱離してオルニチンになり回路が成立するのです。
脱離した尿素は尿中に排泄され、アンモニア性窒素は無毒化されて体外に出ることになります。

ここまでの回路の説明はアンモニアの代謝であり、一酸化窒素の生成は出てきませんでした。
実はアルギニンから直接、シトルリンになる経路があるんです。
この経路を取るときに、一酸化窒素が発生します。
※ペニス増大に「アルギニン」とか「シトルリン」が有用だという話の根拠はここにあるんでしょうが、どうも浅い知識で消費者を煙に巻く似非科学のように思えます。確かな勃起で自身の最大限の大きさを維持するというのならバイアグラなどのED医薬を用いた方がはるかに有益です。

体液中に分配された一酸化窒素は平滑筋を弛緩させるほかに、神経(シナプス)可塑性の因子として働いたり、いくつかの生体作用に寄与します。

まとめますと、陰茎の勃起の持続のためには血流を良くする必要があり、そのためには血管壁の平滑筋を弛緩させるのでした。
平滑筋弛緩作用のある物質が一酸化窒素です。
一酸化窒素の生成を制御する物質が環状グアノシン一リン酸です。
環状グアノシン一リン酸を生成するにも一酸化窒素が必要でした(酵素の活性化)。
環状グアノシン一リン酸はPDE-5酵素によって失活します。
バイアグラなどはPDE-5活性を邪魔することで、勃起状態を維持させます。
※参考文献「一酸化窒素作動性ニューロン

オルニチン回路をぐるぐる回して、一酸化窒素の生合成を促したいのなら、タンパク質をたくさん食べて、アンモニアを発生すればいいのではないですかね。
肉や卵や牛乳、大豆をおおいに食って消化し、アンモニアがバンバン出るからオルニチン回路も回るし、タンパク質からのアルギニンも手伝って、ビンビンに勃起するというのはアリなんじゃないですか?
昔から肉は精力剤だと言うじゃないですか。
肉食え、肉!