セフレのこうちゃんと映画『卍(まんじ)』を観た。
Youtubeに上がっていたのだ。
1964年の作品で、若尾文子と岸田今日子、船越英二(船越英一郎の父)の3Pものである。
以後リメイクが何度か行われた作品で、原作の持つ格調高いエロティシズムが売り物だ。
大げさかもしれないが、谷崎潤一郎が、屈折した性愛を文学にまで高めた金字塔的な作品だと、あたしなんかは思っている。
こうちゃんともその点では一致していて、もう少し露出があればなと感想を述べあった。

とにかく役者の皆さんが若い。
あたりまえだけど。
若尾文子扮する「徳光光子(みつこ)」の均整の取れた裸体(もちろん隠してます)、岸田今日子扮する「柿内園子(そのこ)」もレズビアン役なんで見せるんですが、まあ肩までです。
若尾さんは「谷間」まで見せてくれます。
これだけでも当時は破格のサービスですよ。

当時、岸田今日子はムーミンの声優さんとして子供らには人気の女優さんでしたね。
岸田國士(くにお)の娘として早くから女優として活躍されていました。
そんな女優さんが体当たりでレズを演じます。

「若尾文子って綺麗やなぁ」と、こうちゃん。
「あったりまえやん。そやから女優やってはんねん」
「岸田今日子も大阪弁が変やけど、唇がやらしいな」
「もう、そんなとこばっかり見てんと、あたしもかわいがってぇな」
あたしは、こうちゃんに抱き着く。
「へへ、なんか船越英二みたいやな。おれ」
「目ぇが、ちゃう」
「そうかなぁ」
「キスして」
あむ…
さっきしてもろたばっかしやのに、もう、あそこがビトビトになってる…はずかし…
「おれ、また立ってきた」
「元気ぃ」
赤黒く立ち上がったこうちゃんの「雄姿」に、おもわずほほを寄せる。
毛を剃っているから、前より立派に見えるのよね。
「なおぼん、若尾文子って、胸、そんな大きないよな」
あたしの胸をもみながら、そんなことを言う。
「昔の人やからねぇ」
理由になっているかどうか怪しいが、そんな答えをした。
左右かわるがわる、お乳をかわいがってくれる。
「なおぼんは、レズの経験あんの?」
「ないと言いたいけど、あるわ」
「へぇ、今も?」
「ううん。学生の時」
「同級生?」
「まぁね。在日の子やった。強引な子でね」
「園子みたいに?」
『卍』の園子が強引に、光子に迫るシーンがあったのだ。
「おたがい、おぼこいから、少女漫画に影響されたんか、なんかレズが美しいみたいな思いがあってね」
「ふうん」
「あたしは、もうそのころ経験があったけど、その子は初めてやったんとちゃうかなぁ」
もちろん金明恵のことだ。
「いとこの男の子とやってたんやって?」
「前に言うてたやろ」
「うん」
こうちゃんにクンニされながら、昔を思い出していた。
テレビでは映画がどんどん進んでいく。
『卍』ではだれが本当のことを言っているのかわからなくなる。
疑心暗鬼をテーマにした映画だった。
光子はうそつきで、そのことを園子は知っていて騙されている。
園子の夫、弁護士の孝太郎(船越英二)は園子を疑っている。
園子が、同性の光子にぞっこんなのを異常性愛だと罵り、やめさせようとするが、園子はかたくなに光子との逢引を続ける。
夫とは性の不一致で、合わないのだとはっきり言うのだ。
そこに、川津祐介扮する綿貫という男が光子に近づく。
光子は綿貫と肉体関係を持ち、それが園子にバレる。
いや、わざと園子に見せつけるような綿貫と光子だったのだ。

この入り乱れた男女関係がさながら「卍」の文字をうかがわせるようになっているのだろう。

「あん…」
「いいのか?」
「いい、そこ、いい」
クリットを甘噛みされるのがたまらない。
「すっごく濡れてるぜ、もういいかな」
「いいわ、入れてぇ」
「うっしゃ」
あたしの足は強引に開かれ、こうちゃんが挿入しようと割り込む。
腰だけで合わせて、押し込んでくる。
「ひゃ」
「おお…」
根元まで差し込んで、あたしにかぶさり、唇を奪う。
ねっとりと舌を差し込まれ、口の中をかき回す。
♪糸を引くような 口づけしましょう…(秋元順子「愛のままで」)

そんなフレーズも頭をめぐる。
いったい何が本当で、だれが嘘を言っているのか?
あたしも嘘で固めた人生じゃないか…
あたしはこうちゃんの突きにゆさぶられて、呆けたように体をくねらせていた。

光子の別宅で園子と二人、睡眠薬自殺の芝居をする。
しかし園子は夢うつつで、光子が夫、孝太郎と交わっているのを見ている。
孝太郎が綿貫と入れ替わっているのかもしれなかった。
しかし、やはり孝太郎だったのだ。
孝太郎は園子に謝罪する。
綿貫から恥ずかしい妻の情事の証拠を金で買い取り、万事、秘密裏に事を収めたと孝太郎も園子も信じた。
そのころから光子と園子、孝太郎の不思議な三角関係が始まるが、すぐに疑心暗鬼が芽生え、光子は柿内夫妻を薬漬けにして意のままに操る。
光子の方が一枚上手の女だった。
光子に柿内夫妻がぞっこんになってしまうのである。
この美魔女は、どんどん夫妻を蝕んでいくが…
綿貫が彼女らの秘密を新聞社にばらし、三角関係のスキャンダルを世間にぶちまけてしまう。
弁護士の孝太郎は仕事を失い、園子と死のうと思い詰める。
光子だって、もはや被害者だった。
柿内夫妻はそれでも光子に、ある種の信仰に近い気持ちを持ち始めており、園子が描いた光子をモデルにした観音像を前に、三人で睡眠薬自殺を図る。
光子は観音様だ…あの世でも一緒に仲良く…

しかし、園子だけ生き残ってしまう。
薬量に仕掛けがあったのか、光子と孝太郎は固く手を握り合って旅立ってしまった。
園子は、夫にも光子にも騙され、自分が仲間外れにされたと悟るのである。

この一連の事実を生き残った園子の告白として、話が作られていたのである。
聞き手はおそらく谷崎自身であろう…