毎日新聞の朝刊に「時代の風」というコラムがある。
2月11日付のそのコラムは日本総研主席研究員の藻谷孝介氏が寄稿していた。

「筆者はブログやフェイスブックやツィッターなどの、いわゆるSNSに手を付けない」で始まっていた。私はこの書き出しに惹かれた。
私はこのブログを実施しているが、おおむね藻谷氏の考えに一致する。
彼がSNSに手を出さないのは次のような理由だと書いている。
「一番の理由は、思い込んだままにうそを書くのを避けるため」と。
新聞や出版社を通した文章の発表なら、校閲がファクトチェックしてくれるからである。

SNSではそういったファクトチェックのないまま言論が形成され、独り歩きし、拡散して、ついには誤りが真実のようになってしまう。
私も同じことを考えており、SNSへの自身の投稿は推敲を重ねるようにしている。
また他者への批判は極力、ニュースソースを当たり、事実誤認のないよう努めている。
(批判のための批判は、私のブログにはふさわしくないのでほぼ取り上げないが)

私は人をほめても、けなすのはよっぽどでないとしない。
世の中の人は、私なんかよりずっと立派だからだ。

藻谷氏はエコノミストなので、かつて日本の対中黒字で中国から3兆円も稼いだ(2016年現在)と書き、校閲者からその根拠を聞かれた話を書かれている。
というのも、件の校閲者は対中赤字のデータしか得られなかったらしい。
じゃあ藻谷氏が虚構を書いていたのか?
こういうデータはいろんな見方があるらしい。
経済を対中関係で見る場合、香港経由の輸出を足しているか否かで全く異なってくるからだそうだ。
日本の対中貿易はほとんど香港経由で品物が中国本土に入っているので決済も香港だかららしい。
私は経済については疎いので、その真偽をはかりかねるけれども、一面を見ているだけでは正反対の結果になるということが往々にしてある。
いつごろからか「日本は中国にだしぬかれている」という負のイメージ、負のバイアスがかかった情報操作が政府からもなされているらしい。
マスコミも社によって偏っている報道になっているのは私も経験するところだ。
最近でも、昨年暮れに沖縄の自動車道で起きた事故で、米軍曹長の車が接触事故に遭って路肩に駐車し、道路に出たところを他の車が曹長をはね、結果六台が絡む事故に発展したことについて、産経新聞の記者は十分に取材せず、曹長が日本人被害者の救助活動をしていて落命したと話を作り上げ、そういった勇敢な曹長の「美談」を一切掲載しなかった地元2紙を相手取って「米兵だと黙殺か?日本人として恥ずかしくないのか」と公然と非難した。
しかし、事故処理をした沖縄県警によれば米軍曹長がそういった救助活動をしていたかどうか不明だとし、地元紙記者は取材しても、そういった事実を把握できなかったから紙面に取り上げなかっただけのことで、米兵を差別的に捉えた根拠もなく、なんら落ち度はなかった。
むしろ問題なのは産経新聞社がニュースソースのはっきりしない事柄を、美談に仕立て上げ、日本政府に利するような報道をして、沖縄地元紙を貶めたことに問題がある。
報道関係者として言論の自由以前にやってはいけないことだった。
産経の記事を鵜呑みにした一部の国民は沖縄非難のツィートを拡散させてしまった。
この件については歯切れの悪い産経側の謝罪があった。

名護市市長選で現職を破った新人候補が選挙運動中に叫んだのは「名護市の経済活性化」だった。
現職が辺野古への基地移転を反対し、沖縄県知事と強いタッグを組んでいるところに自公推薦の新人候補がくさびを入れようと「基地移転を受け入れて経済援助を政府から得よう」と有権者に訴え、勝つことができた。
名護市市民も基地問題を争点にされると「またか」の感がぬぐえず、新人候補が持ってきた経済活性化の甘い言葉になびきやすい心情にあった。

藻谷氏はここに正しいデータを呈示して「名護には経済活性化が必要」の欺瞞を暴く。
名護市は経済がそんなに不活性ではなかったというのだ。
滞在型観光客の増加でリゾート開発が盛んであり、定住者も増えつつあるというのだ。
観光地として名護市は発展しつつあったから、別に基地移転反対で政府からなんの援助がなくてもやっていけているというのである。
むしろ普天間を辺野古沖に移設することに根拠薄弱だと指摘する。
辺野古は地震の巣である「沖縄トラフ」の真正面なのだ。
決して安全な基地になりえない。
「東日本大震災で松島自衛隊基地で航空機28機が津波で亡失したことを皆は忘れているのか?」と氏は指摘する。
政府が「辺野古移設以外に選択肢なし」という根拠が薄弱なのだと。

藻谷氏は「流されてはいけない」と警鐘を鳴らすのだ。
日本人は特に流されやすい国民だ。
情報のリテラシーを高めて、もっと自分で考えることが必要だ。
私も、SNSには懐疑的なのだ。
これを使っている人は「自分は大丈夫」だと、これまた根拠のないことを言うものだ。
特殊詐欺で大金を失った老人とまったく同じ口の利き方なのだ。
ご愁傷様である。