周平君がうちに来て、二、三日は何事もなく過ぎた。
お店の手伝いも喜んでしてくれ、品物の並べ方もすぐに覚えてくれた。
ハンドラベラーの扱いも、面白いらしく、やりたがった。
「おばちゃん、ティッシュの五個組はいくらだっけ?」
「クリネックスが450円、ネピネピが380円、エリエールが480円」
「アタックネオはここに並べるの?」
「広告の品物は表のダイマルワゴンにならべてね」
ダイマルワゴンというのは、白いデコラのキャスター付きのワゴン台のことで、なんでそんな名前なのかは知らない。
主人がそう呼んでいるからだ。
たぶん、ダイマルという会社が作ったものなのだろう。
生理用品も恥ずかしがっていたが、周平君は仕事と割り切って倉庫から段ボールケースを探して持ってきてくれる。
「サラサーティ…あ、これか」
「尿とりパッド?夜用?」
とかなんとかブツブツ言ってるので、私が説明してやる。
「こういうのはね、中身の見えないレジ袋に入れて差し上げるのよ」
「は、はい」
「こっちのコンドームもね」
「わ」
「知ってる?」
「う、うん」
めったに買いにくるお客はいないけど…外人さんがたまに買いに来る。
蕨市は、ずいぶん前から外国人が多く住むようになっていた。
ほかの街より家賃が安いらしい。
私はいじわるく「めちゃうす」という銘柄の避妊具を彼に並べさせる。
矯(た)めつ眇(すが)めつ、思春期の男の子がコンドームを並べているのは見ものだった。

主人は、外回りで浦和まで行っている。
昼は途中で食べるとかで、店には周平君と二人だけだった。
私は調剤室の掃除を終え、二階の周平君が寝泊まりしている主人の部屋の掃除をしようと階段の前に立った。
見上げると、周平君は二階の倉庫から、「ボールド」の段ボール箱を下ろしてきていた。
あれは重いのだ。
「大丈夫?」
「大丈夫っす」

お昼前になると、お客さんが三々五々やってきはじめた。
広告を打ったので、その効果があったようだ。
レジは周平君にはまだ早いので、私が店に出る。
来月からバーコードリーダーにするって主人が言ってくれていたから、もう旧式のレジスターは「おはらい箱」になるだろう。
乳液を買いに来た奥さん、
「日差しが強いでしょう?なんかいいのないかしら」
「そうですね、春は夏より紫外線が強いのですよ」
「そうなんですってね」
ひとしきり、奥さんにSPF値の説明をしてやる。

お客が途切れたころ、お昼に、斜め前の寿司屋「すしまさ」で買ってきた巻き寿司を食べた。
午後の店番を彼に任せ、私は部屋の掃除と洗濯をする。

周平君が寝泊まりしている主人の部屋を掃除していたら、ごみ箱から夥しいティッシュペーパーの団子が出てきた。
「花粉症なのかしら、あの子」
しかし、そこから匂い立ったのは、栗の花のような香りだった。
「あらら…」
私は察した。
「あの子、覗いていたのね。やっぱり」
そして、たまらず毎晩せっせと自分を慰めていたのだろう。
この青臭い香りは、私を変にした。
体の奥深くから、じゅんと潤ってくる感じがした。
そうして、また鼻を近づけて深く息を吸い込む私だった。

排卵期が近いのかもしれない…
私の性欲が亢進するのはいつもそんなときなのだった。
変に汗ばみ、乳房が張ってくる。
おりものも増える傾向にあった。

私は、トイレに入ると素早くショーツを下ろし、便座に座るとクリトリスをいじめた。
蒸れた悪臭が立ち昇るが、かまわず指を使った。
くっ…
ひとしきり、いじって、快感をむさぼると、ペーパーで始末して流す。
はぁ~
尿意を催したのでじゃあじゃあとほとばしらせた。

店では、周平君がおじいさんのお客の相手をしていた。
どうやらトイレの黄ばみを取る洗剤を探しておられるようだった。
「周平君、サンポールでしょ?こっちにあるわよ」
私は老人を案内してやった。

「周平君、花粉症なの?お部屋のティッシュがなくなってたので新しいのと交換しておいたわよ」と、いじわるく告げた。
彼は…
「え…」という声にならない声を発し、
「鼻炎なのかな、鼻水が止まらなくて」
と、真っ赤になって見え見えの嘘をついていた。
かわいい子。