「毎日21世紀フォーラム」から日本経済について引きます。

『プライマリーバランス亡国論』を著した京大大学院教授の藤井聡氏の講演です。

プライマリーバランスとは「基礎的財政収支」と和訳される政治学の言葉で、つまりは財政の健全の度合いを示すものだと言われています。
このバランスの良し悪しで財政の健全性を推し量るのです。

具体的には社会保障や公共事業にかかる政策費用を、国債という借金に頼らずに、税金や埋蔵金などの収入で賄っていおれば「良いバランス」だと言えるわけ。
「バランスシート(貸借対照表)」でそれは一目瞭然だ。

なのに、プライマリーバランスを追求しすぎると「亡国」になってしまうというのだから、穏やかではない。
「健全」がどうして「亡国」を招くのか?
藤井氏はアベノミクスを標榜する内閣の官房参与を務めているそうだ。
しかしそのアベノミクスには懐疑的な意見もお持ちのようである。
彼がもしアメリカのトランプ政権のブレインなら即刻「クビ」にされかねないのは、日本の総理がそこまでファシストではない証拠だろうか?

それはそれとして、藤井氏の「亡国論」に耳を傾けてみよう。
氏も「デフレ脱却」は不可欠だという立場で、黒田日銀総裁の推し進める「金融緩和」だけではなかなか「脱却」に至らないのは、緊縮財政がそもそも「デフレ」を惹起しているのであって、金融緩和などは補助的な「小手先操作」に過ぎないのだと言い切る。
政府は消費増税を「ありき」として、財政再建を打ち立てている。
増税と緊縮財政で財政再建を目指そうとしているのだ。
表面的には、なるほどそれしかあるまいと私などは思うのだけれど、藤井氏は「そうではない」というのだ。
財政再建、言い換えれば財政の健全化は、先ほども説明したように「プライマリーバランス」を良くする、つまり「黒字化」するということに尽きると、私は思っていた。
ところが藤井氏は「国債を発行しても良いから、成長戦略に打ち込め」というのだ。
借金や赤字を許容し「生きた金」を市場に回すことを推奨するのだった。
がちがちに「借金はいかん」と言って、緊縮していくと、歳入が減少するから増税に傾く。
増税は、振り返ってみれば、まったく市場を冷えさせて、財政再建どころではなくなったではないか?
企業は銀行からお金を借りて設備投資などをして成長を目指す。
国だって同じだろう?
というのが、藤井氏の持論なのだ。
「借金はダメ」とばかり言っていては成長できなくなるのだ。

政府はプライマリーバランスの黒字化の目標達成のために、10%への消費増税を主張している。
しかし、今、増税をやれば成長が絶望的となると藤井氏は警鐘を鳴らす。

1997年の消費増税の経験をもとに、消費増税は成長にブレーキをかけるからぜったいにやってはいけないと言うのです。

デフレの最もいけない点は、税収が縮小することです。
「小さな政府」になり、セーフティーネットはなおざりにされ、弱者に冷たい政治になる。
そしてビジネスチャンスも雇用も奪われる。

デフレを終わらせるほどにお金を使えるのは、国債を発行できる政府しかないのです。
藤井氏は、消費増税せず10~20兆円規模の補正予算を組んで、2,3年それを続けてデフレ状態から完全に脱却をしたことを見定めてから消費増税や支出の見直しを企てても遅くないとおっしゃる。

プライマリーバランスにとらわれすぎて、国が亡ぶのは見るに忍びないといって、国を憂いておられるのです。
プライマリーバランスなどは、経済を立て直せばあとからついてくるものだから。