ハムが好きで、よく食べるのだけれど、ボンレスハムとロースハムの違いをあまり認識していなかったことに気づいた。

「ボンレス」とは「骨のない」という文字通りの意味で、つまりハムには骨がついているのが普通らしい。
なぜなら豚のもも肉を使うのが本来のハムの姿であり、ももには当然、大腿骨がついていて、そのまま燻製にするのが「本物」のハムだった。
しかし骨は邪魔であるから、食べる方としては骨を抜いておいてほしい。
そういう要望から「ボンレスハム」が生まれたらしい。

一方でロースハムは、日本特有のハムだそうで、余った豚のロース肉を保存食として燻製にしてみたのが、日本人に受けてそのままロースハムとして日本の食文化に定着したという。
あっさりしていて、日本人の口に合うのだった。

ハムは発色剤として亜硝酸塩を使うが、食添として発がん性が疑われるなど、世のお母さん方には添加剤なしのハムが人気だ。
しかし、もともとヨーロッパではハムづくりに使う塩が岩塩のため、天然の亜硝酸塩を含んでいて、意図的にハムの発色をよくするために入れてはおらず、岩塩を使えばピンク色の食欲をそそるハムに仕上がるわけである。
日本では岩塩など手に入りにくいから、海塩を使うが、これにはにがり(塩化マグネシウム)は含まれていても亜硝酸塩は含まれていないから、そのままでは色のくすんだハムになってしまう。
だから、後から亜硝酸塩をハム製造の行程で加えているのだった。

いずれにせよ、亜硝酸塩がどうやら体に良くないらしいことはわかっているようだが、毎日食べるハムに含まれている程度の量では人体にさほど影響はなさそうである。
国もあまり毒性には関心がない。
また大手ハムメーカーがロビィ活動で厚労省に圧力をかけている可能性もある。
ハムを扱う食肉業界は政界に顔が利くらしい。
あるメーカーは球団までもっていたりして、かなり稼いでいるようでもある。

最近、燻製自体が発がん性があるという噂を聞く。
木を燃やした煙で肉や食材をいぶす調理法なので、ベンツピレンなどの発がん性物質が煤(すす)に交じって肉表面に付くからだという。
表面を削って食えばいいのだろうか?
桜材の燻製は絶品なのだけれどなぁ。

さてハムについての雑学をすこし…
アマチュア無線家を「ハム」あるいは、アマチュア無線そのものを「Ham Radio」ということを年配の方なら知っているかもしれない。
食品のハムと関係ないとされていたが、全く無関係というわけでもなさそうだ。
実は役者の世界で「演技のまずい、素人芝居(役者)」を「ハム(Ham)」と俗に言ったらしい。
日本語で言えば「大根役者」だろうか?
だから「アマチュア=素人=ハム」というわけだ。
じゃあ、なぜ「素人役者」を「ハム」と言ったのか?
「Ham」には道化師の意味があったらしい。
大げさな演技、わざとらしい演技、とても上手いとは言えない演技を売りとする道化師こそ「Ham」だという。
一説に、こういった大根役者ほどシェークスピアの人気芝居「Hamlet」を演じたがるので「Ham」と縮めて言われたとか。

大根役者と陰口をたたかれていたシルベスター・スタローンが日本の大手ハム会社の宣伝に起用され、ジョークとしてウケたこともありました。

偶然でしょうが、日本で「大根役者」と言うところを、フランスでは「かぶら役者」と言うそうな。

え?大根役者の語源?
それは、あなた、ダイコンは食ってもめったに中(あた)らない(食中毒にならない)から「あたらない役者」という隠語ですよ。
それにどこを切っても白いから「素人」のことでもあるのよ。