日本政府の信頼も地に落ちたかに見えた昨今、それでも安倍政権への国民の支持率は30%台を保っている。

安倍政権を熱心に支持する人々は、この国を心底、信頼しているのだろうか?
永続敗戦論

同じ疑問を『永続敗戦論』の著者、白井聡氏も抱いているようだ。
白井さんは、かつて映画『シン・ゴジラ』を鑑賞して、その中でゴジラに立ち向かう政府に熱狂する国民の姿が描かれていたのだが、まさに現実の日本の姿をそこに見たという。
おりしも東日本大震災での政府の対応は(当時は民主党政権だったが)、甚だしく取り乱しており、被災者にさらなる苦悩を押し付けただけではなかったか?
映画はファンタジーであるから、いろんな表現がされていいのだが、現実の社会で国民が政治にファンタジーを感じ、安倍を妄信しているとなれば、穏やかではない。
「安倍さんなら、どんな国難にも立ち向かってくれ、国民を守ってくださるはずだ」
私は書いていて、気持ちが悪くなってきた…

どうやら、日本の国民の30%はそんなファンタジーを信じているらしい。
対米追従(従属)の日本にである。
「菊」から「星条旗」に国体を鞍替えした日本を、白井氏は辛辣に眺める。

戦後、返還後も沖縄の立場は米国の「自由世界の防衛線」だと、勝手に東西冷戦の砦にされてしまい、日本もそれを追認してきた。
今は「中国の脅威」に対する防衛線に表現が変遷しているとはいえ、内容は変わっていない。
だからこそ、沖縄基地問題は今もくすぶっているのではないだろうか?
白井氏が言うように、自民党や保守政党が日本政府がアメリカの命令に従う理由を見つけることに奔走した結果だということだ。

『永続敗戦論』の続編『菊と星条旗』には、こうある。
「本物の奴隷とは、奴隷である状態をこの上なく素晴らしいものと考え、自らが奴隷であることを否認する奴隷である。さらにこの奴隷が完璧な奴隷である所以(ゆえん)は、どれほど否認しようが、奴隷は奴隷に過ぎないという不愉快な事実を思い起こさせる自由人を非難し誹謗中傷する点にある」と、まさに日本人が「奴隷である事実を、見ないでおこう」というファンタジーに浸り、それを気づかせてくれる自由な言論者を「サヨク」だ「非国民」だと攻撃して、ファンタジー世界を護ろうとする姿に見える。

安倍一強政治が容認されている以上、このファンタジーは続くのだろう。
「ゴジラ」のような「北の脅威」や「震災」などいつ起こるかわからぬ災難が「目の前に迫って」いるかのごとく国民の不安を煽り、強い政府を持ち出す政権に信頼などできるか?

安倍晋三は「やっている感」を演出するのが得意だ。
「本当にやっているのではなく「やっている姿勢」が大事なのだ」ということらしい。
御厨貴東大名誉教授の共著『政治が危ない』にもそのことが書かれているそうだ。
御厨氏が安倍晋三に「アベノミクスは成功しているのか?」と問うたところ、安倍は「やってる感なんだから、成功とか不成功とかは関係ないんだ」と答えたらしい。
なんとも、ふざけた応答ではないか。
こんな輩が日本のかじ取りをしているのである。
政治は国民の鏡とみるなら、安倍の姿はそのまま愚民たる国民の姿を映しているのだぞ!

これで、いいのか日本人!
(引用、毎日新聞夕刊5月17日「特集ワイド」)