漠然と、飼い猫「みすず」の余命が短いだろうことを自覚すると、あたしはその日から見える景色が変わったように思う。

みすずとあたしの間には、もはやかけがえのない時間が少ししか残されていないのだ。


脳出血から生還した夫にも抱かなかった思いだった。
なぜなら、あたしは夫の生還を信じていたからだ。

しかし、みすずはもう近い将来、確実にあたしの前から消えてしまうのだ。

だから、あたしは日ごろ、ずぼらな性格なのに、みすずと触れ合う時間をいつも以上にもつようにした。
同時に夫との時間も同じなのだと自覚するようになり、この二人の「ロスタイム(アディショナルタイム)」にあたしは全力で尽くそうと思ったのだった。

レフェリーが吹く「試合終了」のホイッスルを聞くまで、あたしたちはピッチに立ち続ける…