「動物ヨーチ」という駄菓子をご存知だろうか?
現在、五十歳も後半、または、それ以上の年齢の人なら名前は知らなくても、見たら「ああ、これのことか」と膝を打つだろう。

動物をかたどったビスケットなんだけど、裏側に砂糖を溶かして色付けした「アイシング」をほどこしてある。

最近、広く行われている「アイシング」とは異なるのかもしれないが、砂糖菓子によるデコレーションだ。
「フローレット」というバナナの格好をした硬い砂糖菓子があったが、あれは卵白を入れて固めているのではなかったか?

このお菓子、動物と銘打っているが、どうやら「打ち出の小槌」やら「ひょうたん」のような縁起物をかたどったものも入っている。
判定不明のものまであって、それを「ああだ、こうだ」と言って食べるのがまた楽しい。

そもそも「ヨーチ」とはなんだろう?
察する通り「幼稚」という意味らしい。
この菓子の原型はイギリスにあるらしく、イギリスでは「kindergarden biscuit」と呼ばれ、これを和訳した人が「幼稚園」だから「ヨーチ」でどうだ?としたらしい。
その歴史は古く、大正時代くらいまでさかのぼる。
したがって、業界でもこの砂糖のコーティング方法を「ヨーチ加工」と呼びならわしているくらいだ。
ヨーチ加工は、なかなか考えられていて、焼けたビスケットを表にして並べ(動物の姿の刻されいる方が表)剣山のように針が植えてある板をざっくりとビスケットに押し付け、ビスケットを持ち上げる。
そのまま着色した砂糖のペーストにビスケットの表面だけが浸るようにして引き上げる。
砂糖が固まったら、剣山の針を引っ込めて(そういう仕組みになっているらしい)ビスケットを落とすのだそうだ。
古いお菓子屋さんが多かった東京都足立区の新聞にはその歴史が書かれている。
https://www.city.adachi.tokyo.jp/hakubutsukan/documents/chidan572.pdf


モノに歴史ありだ。まったく。
動物ヨーチの表面を良く見ると、針の穴が開いている。
別に、すこし大きめのカンパンの穴のようなものも見えるがこれは空気抜きの穴だろう。
素朴な味だ。
このお菓子を作っている会社はもう数軒しかないそうだ。
さびしいなぁ。