科学の目を養うモノとして、こんなものがあります。

子供たちと「なんで」と議論するのに最適なモノたちです。
写真はあえて載せませんので、みなさん「検索」してみてください。

①「水飲み鳥」あるいは「スターリングエンジン」
これは熱機関の説明をするのに簡単でおもしろい。
また永久機関が不可能だということを教えるのにも最適な教材だと思います。
やや高価ですが五千円程度で本格的な「スターリングエンジン」が手に入るので、もし余裕があればそれも手元に置いてながめてみると理解が深まります。
熱の出入りが気体を膨張させ、収縮させることからピストンが往復し、ここにクランク機構を連結すれば回転運動を取り出せます。
そしてやがて止まる…永久に見えた運動は必ず止まるのです。
ここが大事!

②プリズム
透明な良く磨かれたガラスの三角柱…見ているだけでうっとりしますが、スリットで絞った太陽光をプリズムに導いてみましょう。
光は波長によって屈折の角度がちがい、それで七色に分けられる(分光される)のです。
ニュートンが行ったこのシンプルな実験は、今も色あせない。
温度計を使えば、ウィリアム・ハーシェルが見つけた赤外線にも出会えます。

③プラズマボール
手をガラス玉に振れると、光が躍る。
超能力が、わたしにもあるのか?「来てます、来てます」と思わず言いたくなる。
ガラス球に封じられているのは全圧が1気圧の不活性ガス(希ガス)の混合気体です。
ネオンを主体にアルゴンやキセノンが少し入っている。
ここに高周波電圧をかけると、放電が起こり、光を発します。
ガラスで絶縁されているので人体への影響は極めて少ないから、触っても、ビリビリの心配はないですよ。
ガラスが要(かなめ)で、指先と内容のガスに挟まれた絶縁体のガラスでキャパシタを形成するわけ。
交流から周波数の異なる交流を取り出したり、直流から交流を取り出すインバータ回路と同じです。
こう言った原理はスマホのタッチパネルに応用されています。
歴史は古くニコラ・テスラが最初に作ったとか。
テスラはプラズマで電球をつくろうとしたんだね。
それが蛍光灯に発展していくわけだけど。
プラズマの発生現象には説明のつかない部分もあって、現在進行形の研究対象でもあるのです。

④乾球・湿球による湿度計
よく教室にぶら下げてあって、日直さんが湿球の水壷の水を補充する役目を仰せつかっていたはず。
湿度を見るための換算表が背板に印刷されていて、それから今の湿度を割り出すのですが、もうめんどうでやんなっちゃう。
だんだんだれも世話をしなくなって、湿球を包むガーゼがカピカピにひからびてたりするのでした。
さて、乾球はまあいいとして、湿球はどうしてガーゼによって水を吸い上げねばならないのか?
「え?そうなの」と原理すら理解していない子供たちの多いこと。
原理もわからず、ガーゼの水を交換させられても嫌になるわね。
水の蒸発による気化熱が温度を奪う原理を、温度差で捉えるのが相対湿度の考え方なのです。
体から水が蒸発して乾いていくとき、涼しく感じるでしょう?あれです。
毛管現象やら、飽和蒸気圧やら、水の蒸発潜熱やら比熱やら、さまざまな物理現象がこの温度計に利用されているんですよ。

⑤ガリレオ温度計
インテリアとして最近、よく見ますね。
液体の入ったガラスの管で、その中に温度の札の付いた浮子が着色液体を封じたガラス玉をいくつか沈めてある。
温度に応じて浮子が浮き上がって来て管の途中で止まる。
その浮子の札の数字を読めば温度が分かるという仕組み。
物の比重(密度)に温度依存性があるということ、つまり、温度が上がると物は軽くなるというよく知られた現象を利用していて、それはガリレオ・ガリレイが考案したと言われています。
一種の浮き量りであり、お酒のアルコール度などを測るのもこの原理です。
その際、必ず温度を一定にして測ります。


⑥ラジオメーター
電球のような透明なガラス玉のなかに、表が艶のない白、裏が艶のない黒に塗り分けられた薄い四角なガラス板が四枚、互いに面を垂直に、90度ずつずらして十字に配置されています。それぞれの板は細い棒で連結され十字の中心にはガラスのピボットがあり、垂直に立てられた針の先にかぶさって、抵抗なく回るような四枚羽の「風車」になっているのです。
もう一つ大事なのは、白黒のガラス板が互いに同じ方向に面の色を向けていることです。これで回転方向が決まります。
この電球風のガラス容器の内部は真空ではなく、少し気体が残されて封じられています。
この風車を白熱灯か太陽の光に当ててみてください。
風車が勢いよく回りだすでしょう?外界とは完全に遮断されているのにですよ。
当初、これは光の粒子、つまり光子がガラス板に当たって回すのだと思われていました。
でもそれなら、白、黒どちらにも光子がまんべんなく当たってしまい釣り合って回らないはずです。
「黒の方が光子を集めるから回るのさ。ほら黒い服を着て日射しの中を歩くと暑いだろ?」
そういう意見も当然出るでしょう。
光が当たれば回るというなら、蛍光灯でも回らなければならないですよね。
ところが、ラジオメーターは蛍光灯の光では回らないのです。どうやら赤外線で回っているらしいことがわかります。
やぐら炬燵(こたつ)の赤外線ヒーターで激しく回ります。ストーブでも回る。
光の出ない、デロンギオイルヒーターでも回るじゃないか。
「少し気体を封じてある」…ここがミソなんですよ。
だれか言ってましたね「黒い服を着て日射しの中を歩くと暑い」って。そうなのよ。
それは「光子を集める」からではなく、熱線が当たると黒い面の温度が上がり、その前にいる気体の分子運動が激しくなって、黒い面を押すのよ。
だからこの風車は回りだす。
その微妙な運動を取り出すには真空に近い状態にしないと、気体分子が邪魔になって回らないのね。

⑦星座早見盤
夏の夜は星座に親しむには絶好のチャンスです。星座早見盤はその手引きをしてくれるパートナーです。『銀河鉄道の夜』に出てきた黒曜石の星座早見…どんなに美しいのだろう?
もちろん賢治の創作でしょうが、とてもロマンをかきたてるグッズです。
現在手に入るのは紙でできたものですが、中にはちゃんとした、プラスチックのお皿のようなものもあります。低倍率の双眼鏡があるともっと夜空の散歩が楽しくなります。

⑧地球ゴマ(ジャイロ)
今はなき「タイガー商会」の逸品。誰でも回せるコマです。
航空機や船舶のジャイロスコープに用いられる原理がここに収まっています。
姿勢を保ち、まっすぐにするという高速回転体。
「綱渡り」という芸当が、こともなくできてしまうことで証明できます。
そのためには精度の高い加工技術、芯出し、ピボットの低抵抗が求められ、日本の高い技術「タイガー商会」が可能にしました。
その会社も今は倒産し、在庫品は高値で取引される始末。類似品は沢山出ていますが、やはり「タイガー商会」のものには及びません。

⑨ゲルマニウムラジオ(鉱石ラジオ)
もっとも簡単な、電池いらずのラジオです。
電波がエネルギーであるということの証明、つまりそれだけでイヤホンを鳴らすことができるのだ。
検波と同調というラジオの基本の「き」だけで放送を聞くことができるのは人智の素晴らしい成果ではないでしょうか?
もちろん「鉱石ラジオ」を子供たちに体験させてあげたいのですが、今では簡単ではなくなりましたので、ゲルマニウムダイオードという「現代の鉱石」を使うことをお許しいただきたい。
そこから始まる「半導体」のお話もできるでしょう。

⑩ゲーテの晴雨計とアネロイド気圧計
「お天気カエル君」という名のガラス製の晴雨計が売っていますね。
これは盲管ガラス管を利用した気圧計なんですよ。
封じた方のガラス管を球形に膨らませるか、ガラス玉の下側に穴をあけてガラス管を接合し、上に垂直に曲げてU字にします。
そこに入れにくいですが注射器などで水を入れて、U字管を水封するのです。
U字管の水面の上下で、置き場所の低気圧、高気圧を相対的に知ることができ、天気予報に資することができる。
水面の上下は気温にも左右されるので、置き場所を動かさないこと。
温度計をそばに置いておくのも一考です。
真偽のほどは不明ですが、一説にこの晴雨計を考えたのがゲーテだったとかで、彼の名が付されることもあります。
もっと正確な気圧変化を読み取って天気予報に役立てようというときにおすすめなのが空盒(くうごう)式気圧計、もしくは、アネロイド気圧計というものを使うとよろしい。
空盒という真空の密閉された金属の容器でできていて、その容器は外気圧によって容易に膨らんだり、へこんだりするように薄い金属でできています。
表面が蛇腹のように加工されているので、それがばねとなって伸び縮みするんです。
その一端に歯車と指針を動かす機構をとりつけ、メーターとして指針が文字盤の気圧目盛りの上を動くようにしてあるんです。
置き針(おきばり)といって、現在の指針に合わせて、この置き針のダイヤルを回して針を重ね、数時間後に置き針と実際の指針のずれをみて、高気圧側に進んだか、低気圧側に進んだがをみてお天気を予想します。
正確には、測定場所の高度で補正をする必要がありますけれど、日常の判断には必要ないです。
台風が近づくと、ぐんぐん気圧計の針が低気圧側に傾いていくのが観察されます。
むろん、台風が遠ざかると、反対に針はどんどん高気圧側に戻っていきます。
「お天気カエル君」の場合も、低気圧が近づくと管の水位は「吸引」されてあがっていき、ひどいときは上の口からあふれ出します。
反対に高気圧だと、管の水位は押し下げられるのです。

これらの「科学の見える化」を助けてくれる優秀な教材たちは、これから、いかに文明が発達しようとも、生き残るモノたちだと、私は勝手に思っています。
スマホやタブレットでのシミュレーションではつかめない「何か」を、きっと示してくれるでしょう。