「脂肪の燃焼」と、あたかも「火を点けて燃やす」かのような言い方が流布し、アニメーションで説明される時も「炎が燃え上がる」様な表現がされることがあります。

絶対そんなことはありえないのに、映像で見せられると「さもありなん」と思ってしまう。

体内での脂肪の分解は「代謝反応」であり、酵素反応であります。
燃えはしません。まあ「燃やす」なんて信じる人もいないでしょうけどね。
言葉のたとえとしては、うまい言い方ですよ。

ひとつに、熱から仕事を差っ引いたものがエネルギー変化(系内部の)として現れます。
熱力学第一法則が言うていることはそういうことで、それ以上のことは言っていない。
エネルギーも熱も仕事も単位は「J(ジュール)」で同じものですが状態が違うというだけだ。
熱と仕事は互いに変換されます。
そのやり取りがエネルギーであるわけです。
そうね、経済でいう通貨みたいなものがエネルギーかな?

脂肪はエネルギーを秘めているわけ。
使えば「燃焼」して熱を発生したり、仕事をします。
使わないと、そのままデブになるだけ。
エネルギーの状態そのものが、私の体形に現れている。
ああ熱力学よ、お前もか…

脂肪は「高カロリー」だといいますよね。
カロリーとは「熱の仕事当量」の単位ですが、熱(J)に換算出来て、ロバート・マイヤーとジェームズ・ジュールの仕事によって「熱の仕事当量」も「熱」も同じものだと結論されたのでした。
脂肪は大きな仕事をすることができる、高カロリーの食材だというのです。
へそで茶を沸かすではないが、お腹の脂肪でお茶が沸くのです。
これほんと。

やっぱり「脂肪を燃焼させる」は正しい表現なのかもしれません。オヨヨ。

あたしのおなかにゃ、ジュールが詰まっているのです。
何キロカロリーもあるんです。ぼよよん。

内臓脂肪の働きって考えたことありますか?
「そりゃ、飢餓状態に備えているのだよ」
そうですね。貯金みたいなものです。
もう一つ、内蔵の位置を固定する詰め物として大事なんですよ。
痩せぎすだと、胃下垂とか遊走腎とか内臓が体内を移動して病気になります。
重力で下の方に内臓が落ちちゃうんですよ。
すると餓鬼のようにポッコリおなかになっちゃう。
シックスパックの腹筋で固定できればいいんだけど、少なくとも脂肪がないと内蔵はたいへんなことになるわけです。
じゃあ、小太りのほうがいい。
いや、ぽっちゃりって言うか、そんな感じ。

ヒトは食物で取ったデンプンをグリコーゲンにして肝臓に貯蔵しますが、これは高々一日分くらいにしかなりません。
ところが脂肪として体内に貯蔵すると、数か月は飲まず食わずで生き延びることができます。
脂肪(脂肪酸グリセリド)は糖(デンプン)やタンパク質の倍のカロリーを有します。
栄養学でいうカロリーは、生体反応で取り出せる熱の仕事当量のことだから、糖(ブドウ糖)を分解して熱と水と二酸化炭素にするのでしたね。
その反応熱で平熱の、だいたい36.5℃を取り出します。
呼気から二酸化炭素と水分を放出します。
これが生体における「燃焼」の結果であります。
ガスレンジに点火するとただちに水と二酸化炭素ができるのと全く同じです。

ブドウ糖はC6H12O6で、燃焼して熱を取り出す炭素がブドウ糖1分子につき6個です。
脂肪の脂肪酸トリグリセリド、たとえば、ステアリン酸トリグリセリドであれば、炭素は57個もありますからブドウ糖の十倍近くも仕事ができそうですが、実際は倍くらいの仕事しかできません。
ところが体にたまるとそれは脂肪ですから、脂肪肝やぜい肉になって病気になるのです。

ブドウ糖は即戦力のエネルギー源であり、グリコーゲンとして貯められてもせいぜい一日分であることと、脂肪は将来のエネルギー源として蓄えるのに適したエネルギー源であることがわかると思います。

ともあれ、腹筋を鍛えることはよいことです。
ライ〇ップに行く根性もお金もないからね。
すると良いことを思いついた。
あたしの通っていた「合気道」の師範が、腹を自分の拳でどついていた。
あの練習は、あたしもやっていたけれど、自分でするから安全なのだそうだ。
思いっきり拳を固めて腹を叩く、すると自然に腹筋に力が入って衝撃に備えるから、腹筋を鍛えることになるのだそうだ。
これは低周波を用いたベルトを腹に巻いて、ダイエット効果を期待するのとよく似ているが、もっともコスパのいい方法だと言えます。
なにしろ、自分の腹をタヌキのようにドスドス叩くんですからね。
気合い入れていきましょう。気を抜くと内臓を壊しますよ。
ヒマがあったら、腹を叩く。
そしてスクワットをやる。
これでよし。