台風21号の影響で関空の連絡橋に激突したタンカーに、大阪府知事が怒りをあらわにしているが、そんなにタンカーだけにイカリをぶつけなくてもいいじゃないか?
関空が使えなくなって、大阪への経済的な打撃は大きいのは承知している。
連絡橋だけでも無事ならもう少し「稼げた」というのだろう。
しかし、高潮で根本的に「塩漬け」になった空港設備はそう簡単に回復しないよ。
無理な埋め立てによる地盤沈下は、ずっと前から問題になっていたし、今回の台風21号は「第三室戸台風」なんて呼ばれるくらい強いものだった。
たしかにタンカーの船長の判断は甘かった。
空港周囲の5.5㎞より外へ避難投錨せよという強制力のない指示はあった。
タンカーは荷下ろしが済んで、ほぼ空(から)だったのも走錨しやすくしてしまった。
南へ両舷全速前進(※)の努力もむなしく、タンカーは風に負けて、連絡橋に激突してしまった。
※このタンカーのスクリューが二軸か、一軸かは、私は知らないけれど。

ある程度不可抗力もあると思う。
船長は、深さを測る錘の裏のくぼみに軟らかいワックスを詰めたものを下ろして海底の様子も粘土質だと知ったのだろう。もしかしたら海図に海底の様子も記載されているのかもしれない。
錨の食いつきがいいので粘土質はつごうがよい。
しかし、それは普通の海の状態の場合だ。
タンカーの風速計は秒速70メートルを超えて測定不能に陥っていたそうだ。
走錨はある意味、仕方がなかった。
こういうことも想定して、船長は空港島から5.5㎞以上離れていなければならなかった。
そこに落ち度を認めざるを得ない。

しかし、関空を機能不全に陥らせたのは、なにもタンカーの事故だけではない。
関空の構造的欠陥がもたらしたものだろう。
そこを国土交通省も大阪府もよく考えてほしいし、もっといえば、空港建設を実施した国と府の責任は免れない。
空港会社だって被害者である。
そして大阪の人々は観光に頼り切った経済をもう一度見直してはどうか?
黒門市場の閑古鳥風景は、その警鐘だ。