直感とか「ひらめき」は発明に不可欠なもんだけど、これはどんなプロセスで降臨してくるのか、私は知りたい。


人間に直感力があることが、人間たらしめていると私は思う。
ここはAI(人工知能)には、おそらくですよ、永遠に及ばないのではないかとさえ思う。

人間の多様な経験に基づく「ディープラーニング」がもたらす精(スピリッツ)のようなものではなかろうか?

いくらAIのディープラーニングが人間の能力を凌ぐと言っても、一瞬のひらめきには勝てないだろう。

なるほど「ビッグデータ」というAIにとって「鬼に金棒」的な財産が備わったわけだ。
そのうち、人はAIに使われるだろう。
現に、アマゾンでの買いものに、自分の意志に強く働きかける「何か」を感じている私だ。
「私は動かされている」感があるのだ。

私の嗜好をAIが読み取っている。
もうこれはしかたがない。
私はAIに素っ裸にされているのだ。

そのことは、まあいい。

人間のひらめきに相当する、プログラミングは可能なのだろうか?
「コツをつかむ」とか「ワザを極める」とかそういうものだって、数式に表すことができるのだろうか?
もっと掘り下げれば、犯罪者がよく口にする「むしゃくしゃして、やった」という行動のプロセスを記述することが可能だろうか?
「つい、かっとなって」人を刺した男の真理は、AIには到底理解できまい。
将棋で完全無欠の詰将棋のような「棋譜」を編み出すことはもうすでにできるはずだ。
しかし「次に5のぞろ目」が出るという事象は確率でしか表現できない。

人間の行動は、およそプログラミングできない。
野生動物の行動を読んで、人は経験から効果的な「わな」を仕掛けて生け捕ることができる。
「マタギ」たちはそうして生きてきた。
おそらくAIもこの程度のことならやってのけるかもしれない。
AIによる交通違反取締りは、「わな」的な運用なので可能だと思うのだ。

「単純作業ならAIに任せて、人はもっとクリエイティブな仕事をすべきだ」という意見がある。
私もそれには賛成だが、「単純作業」がAIに向いているというのは、AIに失礼かもしれない。
単純作業ならAIを持ち出さずとも、従来のアルゴリズムによるプログラミングの手法で十分ではないのか?
それとも、もうそういうことは人間が考えなくても、AIが単純作業と判断して、自らその作業のためのプログラムを生成するようにするということだろうか?
それなら納得だけれどね。

いくら単純作業でもAIだけでは「I/O」の製作まではできるのか?
銀行の窓口業務がAI化されるというとき、すべてATMで行えるから、想像に難くない。
しかし、たとえば、農作業のAI化となると作物の種類は多様であり、その収穫時期や場所も手入れの仕方、土づくり、その年の気象などいろんなファクターをビッグデータとして蓄積し、抽出することができても、ロボットワークなど現場の手足の命令系統は人が組み立てたりしなければならないだろう。
SFの世界のように、ロボットが必要な部品を集めて、別のロボットを組み立てて使うというような御伽噺が可能なら幸せだが…

簡単に考えても、ものづくりがなくては産業は進まないし、人の生活がすべてスマホで済ませるほど単純ではない。
日がな一日ゲームをして、メルカリで稼いで、アマゾンで買い物をして…という「理想的な(?)」生活を手に入れても、それを支えるインフラには人の手がどうしても必要なところがある。

ものづくりの現場でもAIの力を借りる時代が来るかもしれないが、最終的にそれを採用して組み立てるには、現場の人間が汗水たらすことが必要になってくる。
全自動といわれる金属加工の世界でも、監督のために人がそばにいる。
「チョコ停」や「緊急停止」「暴走」に対応しなければならないからだ。
AIに逐一「チョコ停」の判断をさせることも可能だろうが、ワークによって「まさか」の事態が発生するものだ。
AIがどれだけ人間の「まさか」の予想を前もってできるか期待したいところだ。

私は、あるていどは人の一歩前をいくAI技術が、そう遠くない未来に身の回りにあふれると信じている。
重大なインシデントに対応できるAIについても、人よりはAIのほうが客観的であり「希望的観測」をしない点で有益だと思う。
原発や航空機事故、自然災害や動乱の対応などに対し人間は「後手」に回りやすい。
政治的なもの、保身の忖度、差別感情などさまざまな、AIが苦手とする因子がはびこっているからだ。
そういうめんどくさいことを一切抜きにして、シビアな結果を求めたいのなら進んでAIを持ち込むべきだ。
妄信はいけないけれど、AIの「意見」を取り入れた社会は、何人にとっても暮らしやすいにちがいない。

私の心配は違うところにある。
AIを悪用する輩(やから)が後を絶たないだろうということだ。
世の中、善人ばかりではないという経験を人類は嫌というほどしてきている。
AIは人の作ったものに違いなく、創造主たる人間がAIをコントロールできる。
一握りの悪人が、この世の征服を企むことを十分に考えておいて損はない。