今は亡き、いかりや長介氏はベーシストとして有名な人だった。
彼の扱う楽器はダブルベースだった。
そこで、ダブルベースとクラシックのオケで使われるコントラバスとの違いは何なのか?
調べてみると、実は同じものなのだそうだ。
いかりや氏の演奏を見ると、いわゆるピッチカートという奏法で、弓を使わずに指でつま弾くやり方だ。
コントラバスの奏者は、弓を使っている。
もちろんピッチカートも使うこともあるようだ。

ジャズバンドで見るダブルベースは、ことごとくピッチカート奏法である。

『セロ弾きのゴーシュ』で知られる「セロ(チェロ)」はダブルベースに似ているが、バイオリンの一族である。
そう書くと、ダブルベースもそうじゃないのか?と疑問がわくが、ダブルベース(コントラバス)はビオラ・ダ・ガンバ系だというのだ。
ビオラ・ダ・ガンバという聞きなれない楽器は、バロックファンならおなじみかもしれない。
ビオラという皇太子さんも奏でられるバイオリンを一回り大きくした弦楽器があって、それよりも低音を出すために胴や竿を大きくするわけ。
すると、もはやバイオリンのようにあごで挟んで構えるなんてことは無理なのよ。
ビオラ・ダ・ガンバはセロのように座って両足の間に挟んで演奏する。
「ガンバ」とはイタリア語で「脚(あし)」のことらしい。
プロサッカーチームの「ガンバ大阪」も、「がんばれ」の俗語「ガンバ」と、サッカーの主役「脚」を掛けてその名前にしたのじゃないかな?

コントラバスは大きいので、立って演奏しなければならない。
演奏のやり方において、立つか座るかで楽器の系統が分かれるわけがないと思うのだけれど、楽器の歴史をひもとくと、コントラバスはその前の時代にあったビオラ・ダ・ガンバ系のビオローネという低音弦楽器の子孫だと言うのだ。

わたしは、この大きく地味な楽器が、なんとなく好きだ。
これを選んだ演奏家は、どういう動機だったのだろう。
運ぶのも大変だし、家にあればかなりの存在感で寝る場所もなくなりそうだ。
私の友人で、シャンソン歌手の母を持つ子がいるんだけど、2LDKのマンション住まいなのに、部屋にグランドピアノが置いてあるのよ。
で、どこで寝てるっかっていうと、ピアノの下に食い込んで蒲団を敷いて寝てるんだそうだ。

楽器を愛する人は楽器と寝食を共にしているんだね。
いやはや…