北條かやという同志社大出身で京大の院の修士課程を修了してキャバ嬢になった経歴の文筆家がいる。
私と似たような趣味というか考え方を持っているようだが、私は嫌悪している人物だ。
近親憎悪にも近いかもしれない。
というより、女性であることをことさら強調するウーマンリブ活動家の匂いがする。
女性目線で男性の嗜好を語り、とくにオタクへの差別的な物言いに、私は「賢いわりに、お馬鹿さん」と感じるのだ。
まだ若いから、そう挫折も味わっていないのだろう。

たとえば、「萌え系イラスト(二次元キャラ)」へのオタクの溺愛を「気持ち悪い」といい、オタクに対して「なんでそういう絵を好むのか」というストレートな質問をぶつけて、オタクに不快感を与えているのだ。
私は、オタクがまだオタクと呼ばれていなかったころの彼らと共に、一緒に泣き笑った大学生活を送っていた。
大学の工学部なんて、今でいうオタクの巣窟だったんだから。
私もアニメが好きだったし、機械ものも好きだったから、彼らと「コミケ」や「DAICON」に参加したものだ。
女でも男っぽいほうが好かれたし、言葉遣いも中性的な物言いに極力していたような気がする。
そして、今では「萌え系」といわれる絵柄の女の子、当時は「ロリ」だとか言われてた。
ロリコンは一種の、オタクの方向性だったし、「ミンキーモモ」や「クリィミーマミ」、ふくやまけいこ風の絵は、特に好まれた。
女の私でさえ、彼らに影響を受けていたことも事実だ。

私のことはそれくらいにして、北條かや氏の無節操ともいうべきオタクへの接近、土足で踏み込むやりかたは、彼らが言うようにフェミニストからの差別を受けた気分だと感じた。

北條氏の意見では巷にあふれる「萌え系キャラ」に嫌悪し、ネットでNHKや政府のホームページでもその手の絵柄が無差別に目に入る。
そういう絵柄が嫌いな北條氏にとって、困りごとなのだから、それは大いに議論されていい。
なんで公共のページにまで「萌え」なければならないのか?
NHKのこないだの、ノーベル賞を女の子「キズナアイ」が解説するページがまさしく「萌え系」で、ことさら胸が大きく、短いものを履いているのだった。
総務省のアマ無線電子申請の女の子もそうだ。

秋葉原にはこの手の萌え系キャラがあふれ、オタクの聖地と化している。
大阪でも浪速区日本橋筋はまったく同じ状況だ。

何がいけないのか?
北條氏によれば、こういった非現実的な女子の顏と体つきは、男の(オタクの)性的嗜好を寄せ集めた理想形であり、性の対象であることに嫌悪感を抱くという。
現実の女に興味を持てない「オタク」を、男子の欠陥だと言いたげである。
こうなると、杉田水脈議員と同じ「非生産的人間」として差別の対象にしていると思ってしまう。

あまりにもオタクを蔑(さげす)みてはいないか?
私はアダルトビデオの裏方の仕事もし、その市場でも「萌え系」はドル箱だということを知っている。
相当のオタクたちが楽しんでくれているようだ。
もちろん私は実写系の会社に協力していた口なのでAVアニメ界はほとんど知らない。
それでもサイトで検索すると、英語ならHENTAIというキーワードでヒットするものは、ほぼ「萌え系AV」である。
大きな目で、ロリ系で、アンバランスに巨乳で、巨大なペニスを惜しげもなくその胎内におさめて、かわいくあえぐのである。
そして大量の射精を浴びて、萌え系キャラは微笑む。
「何か問題でも?」「どこが悪い?」「レイプシーンがあっても非現実の世界だ」
もし実写なら、女優さんが拒否しそうなものでも、二次元なら表現の自由で許される。
だからロリータで、およそ幼児と思えるキャラと性交疑似体験ができてしまう。
小児性愛者にとっては、格好の「はけ口」だと思う。
これがきっかけで、少女を虐待する馬鹿者が出る可能性は否定できない。
そこは北條氏もおおいに指摘したい表現の自由の危険性だろう。
私もそう思う。

だからといって、「萌え系キャラ」のどこがいいのだと、オタクに質問を投げるのは差別だと思うのだ。
「ルノワールのどこがいいのだ」と、ルノワールのファンに訊きますか?
まあ、訊く人もいるかもしれないが。
たしかに、私も「現代音楽のどこがいいの」と、現代音楽を勧めてくれた人に訊いてしまったことがあった。
しかし、私はその人から現代音楽の、わりと聴きやすいものというCDを借り、聴いてみた。
そのうち、いくつかは心に響くものもあった。
現代音楽は音楽の決まりを逸脱してはいるが、ある状況、情景、心の状態を示しているれっきした「音楽」なのだということがわかった。
なんでも、理解することは可能なのだ。
性の嗜好も、女として「凌辱」や「痴漢」はいただけないが、男の願望としては、かなりの男性が内に秘めていることも承知している。
だからアダルトビデオがその場を提供しているのだった。
これを現実にやる男は、人間失格である。
AV鑑賞にとどめ、ティッシュに後始末をさせるのが大人の男である。
私はそういうAV作品を好んで観る男性を、別に差別しない。
おおいに好きなAVで抜いてくれていい。