「カンラン石」という岩石がある。
マグネシウム(苦土:くど)を含む岩石で、Mg2SiO4という組成式で表され、マグネシウムのところが鉄(Fe)になっているもの(鉄かんらん石)を含むことがある。
「カンラン」とはオリーブのことらしいが、漢字は「橄欖」と書く。
つまり、この石はオリーブ(実)色を呈するゆえ、この名があるらしい。
実は、この「橄欖」は東南アジアに自生するオリーブに似た実をつける別の植物で、用途も似ているため、日本に伝わったときに混同されてしまい、オリーブを漢字に書けば「橄欖」と書くようになったとか。

それはそれとして「カンラン石」は非常に普通の石で、河原で見つけることができる。
近畿なら、兵庫県の養父地方に産出するが、岩手や北海道で蛇紋岩として広く分布する。
蛇紋岩はカンラン石が蛇紋化する、つまり風化したものだ。
Mg2SiO4と水が反応して、Mg3Si2O5(OH)4(蛇紋岩)となることがわかっている。
蛇紋岩はたいへん脆(もろ)く、水の浸食を受けやすい。
硬い岩盤に蛇紋岩層があると、水はそこに集中し浸食していくので、川の周辺には蛇紋岩が多くなるのである。
北海道の石狩川の上流、旭川市にある「カムイコタン(神居古潭)」付近の急流はこの蛇紋岩が浸食されてできたものだと、NHK『ブラタモリ』で言っていた。
日高山脈や十勝岳~襟裳岬の「北海道の背骨」の山脈は東側からのプレートの沈み込みと西の大陸棚の乗り上げで高くなり、そういうところにはマグマ溜まりと火山が発達しやすい。
マントルの上層部、地殻との境界でカンラン石ができるらしい(深層火成岩)ので、カムイコタンの蛇紋岩の層も地中から押し上げられて地表に現れたものだろう。
だいたい日本列島は火山活動が活発で、太平洋プレート、フィリピンプレート、北アメリカプレート、ユーラシアプレートががっぷりと組んだ上に存在しているから、カンラン石はいたるところに顔を出している(プレートテクトニクス理論)。

Mg(マグネシウム)を「苦土」と書いたが、これは苦いからである。
海水の成分である「にがり」は「水酸化マグネシウム」である。
これも苦いからそういうのだった。
マグネシウムはアルカリ土類金属で、ナトリウム(アルカリ金属)のすぐとなりに周期表では位置している。
軽い金属の仲間でマグネシウムとアルミニウムは合金を作ることができ、ジュラルミンという航空機材料になる。
一方で、地球の内部は高温のマントルという岩石の融解した流動体でできている。
こういう流体が対流で、プレートテクトニクスの根拠となっているけれど、その冷えていく境界、つまり地殻の最低部では、マントルの軽い金属元素が浮いてくる。
マグネシウムを含むカンラン石はそうやって生成するのだろう。
重い鉄は沈み、コア(核)を形成するという。
軽い金属元素はだんだん地表や海底に押し出され、水による浸食でイオン化し、海水の成分になっていく。
ナトリウムやマグネシウム、リチウム、ベリリウムが海水に分布しているのはそういうことなんだろう。

私は岩石に最近、興味を持ち始めている。
地球や月の成り立ち、はたまた小惑星「りゅうぐう」の成り立ちなど興味は尽きない。
エキスポ70で、私は月の石を見損ねた。
もの言わぬ石が、語り始めるとき、どんな生い立ちを語ってくれるのだろうか?