ホルンフェルスのことを書いていると「ホムンクルス」を連想してしまったのは私だけではなかろう。
錬金術師「パラケルスス」が自著に「ホムンクルス」を生まれさせることについて書いている。

パラケルススはバーゼル大学(スイス)で教鞭をとったほどの知恵者であったが、詐欺師でもあった。
頭の良すぎる人はえてしてそういうものだ。
西暦1500年前後に生まれ、1500年の半ばに世を去った。
化学という学問がまだなく、錬金術の延長線上にその学問はあった。
当時、物質は「四元素説」だの「三原質説」だのを信じられていた(彼は四元素説を否定していたが)。

そんな天才(?)パラケルススが人造人間「ホムンクルス」を産み育てる方法を本に著したのだった。
ホムンクルスは小人であり、生まれたときにはすでに人知を超えた知識を有しているという。
そしてその一生はフラスコの中でしか保てない。
錬金術師のフラスコの中でホムンクルスは育つのだった。

ホムンクルスは精液から生まれる。
今でいえば単為発生だ。
錬金術師はせっせと自らを汚して精液を搾り取り、愛用のフラスコに注ぎ入れる。
そして香草や薬草の決められた量を仕込み、自分の糞尿も少々混ぜ込んで腐敗を進める。
するとどうだろう?
なにやら霊魂のような、もうろうとした人体がフラスコの中に充満するのだ。
これがホムンクルスである。
ホムンクルスは人血を好み、これのみで育つと言われる。
寒がりで、馬の体温ほどに温めてやらねばならない。
ホムンクルスは自著『自然の本性について』で、ホムンクルスの生成に成功したとあったが、だれもこれを追試できた者はいなかったそうだ。

イエス・キリストが母マリアのみから生まれ、救世主とあがめられたが、ホムンクルスは男の、秘匿される行為で生まれ、淫靡で儚い一生を終える。
この違いはなんであろうか?

男の性欲の権化がホムンクルスではなかろうか?

男は女に自分の子を産ませたがる。
しかし、自然は全ての男に女を与えない。
だから、男は、せめて擬似子宮のフラスコの中に我が子を育みたい衝動に駆られる。
それは人に見せられるものではなく、人知れず行われる自慰行為の成れの果てなのかもしれない。
「自然はすべての男に女を与えない」というのがパラケルススの『自然の本性』の真意なのか?
精子の中に小さな人格がすでに存在していると彼は説き、それを呼び覚ます手法が先に書いた魔術的な方法なのだそうだ。
かなしいかな…