江戸落語などで、「そそる女」の条件として「小股の切れ上がった女」が良いとされる。
その「小股(こまた)」が一体何を指すのか、よくネットでも議論になっているようだ。
文字通り「股」の部分、つまり女の陰部付近を言うのだという説、そこから脚、すなわちコンパスの深い切れ込みを言うのであり、足の長いことを婉曲に表現しているのだというまことしやかな説、などなど興味は尽きない。
私はこの「小股」がおしろいを塗った、うなじの塗り残しの形状から来ているという説に賛同したい。
歌舞伎役者の「女形(おやま)」でも芸者、舞妓でもいいのだが、彼女たちのおしろいの塗り方で、うなじのところを「W」の形に塗り残すのが粋(いき)とされている。
この部分は着物の衿を崩すと見えるので、普段は隠されている部分だ。
こういうところが着崩れて見えるところに色気を感じる男が多かった。
そして「W」の形が「小股」なのだと。
女がおしろいを鋭く「W」の形に塗り残すことを「切れ上がった」と言ったのではないか?

ところで、このような粋な化粧(けわい)をする女とは、すなわち商売女であろう。
※大奥の上臈(じょうろう)などもこういった化粧をしていたかもしれないが、庶民の手の届かない存在なので、「小股の切れ上がった女」の対象ではない。

花魁や芸者と遊ぶ男性というのは当時も、お金持ちだ。
おおかたの庶民の男性はそんな女にありつけない。
で、お金持ちのご大人(たいじん)が「小股の切れ上がった」と「いい女」を噂すれば、それを聞きつけた貧乏男は貧困な想像力で「陰部」を妄想し、化粧の塗り残しのことなど露ほども思わない。
ここに、誤解が広まる原因があったのではなかろうかと、私は思うのだ。

現在でも「小股の切れ上がった」という表現の真意は「諸説あります」という結果になっている。