正規分布という関数があります。
この研究をした人物の名前を冠して「ガウス分布」と呼ぶ人もいます。
この関数は初等関数では表せないんですね。
グラフを見ると、山が一個の単純な形なんですがね。
正規分布

このようなグラフになります。y軸は「確率密度」を表現しており、正規分布が確率密度関数であるゆえんです。もっと言えば、確率密度関数は正規分布に従うのです。
確率ならy軸の最大値は1を越えないはずです。
すると正規分布で変化する部分とすれば、この山が急峻なのか、なだらかなのかしかないでしょう?
急峻な山のときを「分散が小さい」といい、なだらかな山のときを「分散が大きい」といいます。
「分散」とは統計学でも使いますね。
中央値からの隔たりを「分散」というのです。
「値の散らばり」や「値のばらつき」を言うのです。
分散の平方根を特に「標準偏差」と呼びますが、分散よりも標準偏差(偏差値)のほうが統計では重要です。
ばらつき(実測値ー平均値)はその総和が0になってしまいます。
プラスマイナスが相殺されるからです。
そこで符号の影響を無くすためにばらつきの二乗を求めてそれを総和します。
サンプル数(n数)が異なる試験の比較ができるように、この総和をサンプル数で割ります。
これを標準偏差といいます。
さらに、ばらつきの値の二乗が真の値からの隔たりを最小にする統計処理を「ガウスの最小二乗法」と言うのでした。
この最小二乗法を使うことで、たとえば、ばらついたデータに線形性がある(相関がある)のなら、もっとも真の値に近い直線の傾きと、y軸切片を知ることができ、データの客観性を高めることができます。

化学における正規分布の例を紹介しましょう。
原子の周りをまわっている電子の軌道も、もっとも簡単な水素原子の場合、二次元で表すと、原子核の周りに円軌道を描いて電子がまわっているような図がよくありますが、実際は電子の位置など確率密度でしか表せません。
だいたい、円軌道のあたりを中心に、ある幅で電子が存在しているらしい。
「確からしさ」とは初等数学で「確率」のことを言うのでした。

一本の線で描かれた円軌道が、上の正規分布の山の頂点であり、その線から「ある幅」とはその山のすそ野をいうのだと、さっき書きました。
つまり正規分布の山の頂が「電子の存在確率のもっとも高い場所」になります。
線で電子軌道を描かずに、ぼんやりとした陰影で描くと「電子雲」という表現になります。
電子の存在確率を雲のようなあいまいな表現で描いているのです。

そしてその電子雲を輪切りにしたときの断面が正規分布のグラフになっている。
正規分布のグラフはx軸が漸近線になり、極大値を一つ持つ連続曲線になります。

正規分布のグラフとx軸に囲まれた領域の面積Aを考えます。
A=∫-∞→∞ exp(-αx^2)dx (x∈R,α>0)…①
この定積分をガウス積分と呼ぶそうです。
exp関数は「自然対数の底eの何乗」の表現をカッコ書きにしたもので、カッコ内が指数です)
ガウス積分は、提唱者ヨハン・カール・フリードリッヒ・ガウス(1777~1855)に因みます。
私の使っている公式集にはこの定積分は、
A=√(π/α) …②
とあります。
積分範囲が-∞から∞となっているのはx軸が漸近線だからです。

無限遠ではxがマイナス側もプラス側も「確率分布」がほぼ「0」であると言っています。
電子がそんなところには「まず、いない」ということですね。

①式のxをyに変えてその面積をA'として、なんで②になるのかを検証しましょう。
A’=∫-∞→∞ exp(-αy^2)dy  (yR,α>0)…③
A=A'から
A^2=∫-∞→∞ exp(-αx^2)dx∫-∞→∞ exp(-αy^2)dy
=∫-∞→∞∫-∞→∞ exp(-αx^2-αy^2)dxdy …④

これを重積分といい、フビニの定理によって④のように書けるんですよ。
たとえばね、こういうことなんですよ。
半径rの円Oがあり、同心で半径(r+dr)の円O'を描きます。
drは微小な長さです。Oの半径をそんだけ延長したと考えてください。
するとOO'の面積なんてほぼ一緒じゃないですか。
またO'からOの面積を引いた「ワッシャ」のような微小面積は2πrdrと近似してもいい。

このことを踏まえてね、極形式に直します。
つまりx=rcosθ、y=rsinθとします。
④は、
A^2=∫0→∞∫0→2π exp(-αr^2) rdθdr …⑤
与式=2π∫0→∞ exp(-αr^2) rdr …⑥
与式=2π[exp(-αr^2)/-2α]0→∞=π/α …⑦
つまり
A^2=π/α …⑧
A=√(π/α) …②
ね、なったでしょう?
面積だからマイナス値は考えませんよ。

私はね、つらいときに数学を考えるんです。
そうしたら、何で悩んでいたんだろうって、わかんなくなっちゃうんだ。
夜空をながめて宇宙に想いを馳せると、ちっぽけな悩みなど吹き飛ぶでしょう?
数学もそうなんだなぁ。