角野さんが紅茶をいれてくれ、その間に、パエリアの下ごしらえが始まったようだ。
私は、角野さんのバーミヤン遺跡の写真集などを見ながら待った。
イカとアサリ、エビが入り、サフランであざやかな黄色に染まった食欲のそそる良い香りのパエリアがフライパンごと食卓に並べられた。
「お口に合うかどうか…」はにかみながら、秀子さんが言う。
「素晴らしい出来だ。よくお作りになるなるの?」
「叔母につくってあげるの。叔母は、まったく料理をしない人だから」
「へえ、そうなんだ。あ、この白ワインを開けよう。スクリューキャップだから手間がない」
「グラスはこんなのしかなくって」
タンブラーを二つ出してきた。
「十分だよ。器より中身さ」などと気取ったことを言う私。
「じゃ、小皿にパエリアを取りましょう」

ささやかだが、ちゃんとした食卓が仕上がった。
角野さんが、お姉さんらしく、私をもてなしてくれる。
「私は、年上の女性がいいなって思っていたんです」
「まぁ、こんな、おばさんでよければ」
「いや、失礼を承知で言ってるんです」
「男の方は、そういう甘えたなところがあるのでしょう。いいわ、お姉さんでいてあげる。さあ、いただきましょう」
「いただきます。まず乾杯」
「今日はどうもありがとう。戸田さん」「こちらこそ…」
この人となら、一緒にやっていけそうだった。
パエリアの味は格別だった。
スパニッシュレストランで食べるものと変わらない出来だった。
「こりゃ、おいしい」「ありがとうございます」
「秀子さんは、私の胃袋をつかみましたよ」
「あら、お上手。それは、プロポーズと受け取ってよろしいのかしら?」
ワインが効いているのか、彼女も冗舌になる。
「ええ。受け取ってください。あなたとなら、うまくやれそうだ」
私の口も滑らかだ。
もう律子のことは思うまい。
ワインを一本、空けてしまった私たちは、かなり打ち解けた。
「秀子さんも、いける口ですね」「一人で飲むことも多いの」
「付き合った人はいなかったの?」「いたわ。正直言うと…」
私は、少し気になった。
「その人とは、深い関係に?」「ううん、キスまで」
私はしかし、信じなかった。おそらく、彼女は処女ではないのではないかと思った。
「ほんとよ。戸田さん」
「信じるよ」「信じてない…その顔は」「いいんですよ。誰にも過去はある」
「じゃ、確かめてみる?」
私は、ドキッとした。そして、秀子をまじまじと見つめてしまう。
「確かめるって…」
「しようよ。戸田さん、今日はするつもりで私を誘ったんでしょ?」
大胆な発言だった。確かにそうは、言ったが…
二人はリビングに直接座っていた。
私は秀子の肩を引き寄せた。
そして、唇を重ねる。今度は、秀子の方から舌を差し込んで、絡ませてくる。
長い時間、私たちは互いの唾液を混ぜ合わせていた。
「ああ…めまいがしそう」
秀子が、私に体を預けながら言う。小柄な彼女が陶酔したような目で私を見る。
私は遠慮なくノースリーブをしたから捲って、ブラジャーを露出させる。
「脱ぐわ」「じゃあ、私も」
二人は、そそくさと上着を脱ぎ、下着姿になる。
「ちょっと、シャワーしてないから、匂うかも」「かまわないさ。お互い様だよ」
冷房は最初から入れてあった。
「やっぱりシャワーします?」「一緒にしようよ」
下着姿の二人が連れ立って風呂場に向かう。
小さな彼女の後ろに私の体が重なって洗面台の鏡に映った。
二人は、素っ裸になる。
「わぉ」声を上げたのは、秀子の方だった。
私の勃起を見て、驚いた様子だった。
「見たことない?」「ないわよ。すごいのね、それ」「男はみんなこうなるんだ」「邪魔でしょう?」「ふだんはもっと小さいさ」
やはり秀子が処女だというのは本当かもしれなかった。
「君のお乳も、大きいね」「そうかしら、普通よ」
狭い風呂場は、洗い場に二人立つといっぱいだった。
いやでも体が触れあう。秀子の下萌えは薄く、少女のような割れ目がはっきり見えた。
シャワーで互いを濡らし、その割れ目に私は手を伸ばす。
蒸し暑かった日に熱いシャワーは気持ちいいものだ。
「やん…」
その秘めたる場所は、熱く潤っていた。私は彼女の右手を、私の高まりにいざなった。
嫌がるようでもなく、秀子は私を握った。
「硬いのね…」「秀子が魅力的だから」「ひでこって呼んでくれるのね」「呼んでいいかい?」「そう呼んでくれるのは両親と叔母だけ」
私はまた口づけをした。
ああ…む

体を洗い、私たちは秀子の用意したバスタオルで体を包み、リビングに戻った。
秀子が、「お布団、用意するわね」と押し入れを開ける。
ベッドが見当たらなかったので、毎晩、床を敷いて彼女は寝起きしているのだろう。
「暗くしていい?」「いいよ」
敷布団の上にタオルケットが敷かれ、その上に私たちは横になった。
常夜灯(保安灯)に浮かび上がる秀子は、バスタオルを体に巻いたままだった。
私は腰にそれを巻いている。
「あたしね、初めてなの、この歳で」
「大丈夫さ、まかせてよ」
私は律子に教わっただけで、変な自信を抱いていた。
「戸田さんには、彼女がいたの?」「ずいぶん昔にね」「そう…」
私はうそをついた。
「きみも、まさか中学生程度の知識しかないわけじゃないだろう?」
「まぁ、本で仕入れた程度なら」
「じゃ、触らせてもらっていいかい」「はい」
私は、そっと股を開かせた。されるがままに秀子は脚を開いた。
指の腹で唇のような谷間をなぞる。
シャリシャリした下萌えを巻き込まないように、湿った肉のひだを探った。
秀子は両手で顔を覆っていた。恥ずかしいのだろうか?
震えが乳房を揺らす。
「怖いのかい?」「ううん、人に触られるのが初めてだから…」「自分じゃ、触らないの?」「お風呂で触ることはある…」「君も一人でするんだね」
それには答えなかった。
にちゃにちゃと、ことさら音を立てて私は膣の入り口あたりをさすった。
そしてクリトリスもいじる。律子で経験済みだから、そのありかはわかっている。
「ひゃっ」
可愛らしい声が聞こえた。
内腿(うちもも)が閉じようとするのを、私はさせなかった。
彼女の左手が私の手を押しやろうとする。
「だめ…」「痛いの?」「そうじゃなくって」「気持ちいいんだ」
秀子は小さく、うなずいた。
私は少しずつ大胆に、クリトリスをいじり、その突起が硬くしこるのを感じつつ、親指で膣の入り口をまさぐる。
ぷつりと膜を突き抜けるような感じがした。やはり処女だったのだ。
私は、起き上がり、
「舐めていいかい?」「え?」
暗がりでわからないが、おそらく驚いた表情で私を見ていただろう。
「君の大事なところを舐めさせてくれよ」「そんな、汚いから」「汚くなんかないよ。好きだからしたいんだ」「ふぅ…」
観念した様子なので、私は彼女の足の間に入って、首をその部分に近づけた。
動物的な香りと、ボディシャンプーの甘い香りがないまぜになって、私は興奮して、股間がさらに硬くなる。
はむ…むちゅ…なむ…あむ…
鼻の頭をクリットに押し付け、舌を最大限に伸ばして、膣口をえぐった。
処女膜のようなものは少し残っていたが、そんなに邪魔するようでもなく、やはり37歳ということもあって、自然に破れているようだった。
「ああうっ、と、だ、さぁん!」
私は両腿で顔を挟まれた。
そうとう、気持ちがいいらしい。
頭を退けようと、秀子が腕に力を籠める。私はしかし、抗った。
彼女の腰を両腕でしっかりと抱き、顔を陰部に押し付けるようにして舐めまくる。
愛液か唾液かわからない液体で私の口唇部はしとどに濡れた。
秀子はぐったりと脱力してしまった。
肩で息をしている。
腹部が上下に動いていた。
「もういいかな」「…」
私は膝立ちで、正常位で秀子を貫くことにした。
M字に開脚させた秀子の膣は、ぽっかりと口を開けている。
そこに膨れ上がった亀頭を押し込んだ。
「うっく…」「痛い?」「痛い…です」「最初は、少し痛いかもしれない」「ちょっと、待って」「どうしたの?」「あの、コンドームとかつけて下さらないの?」「すまない、持ってないんだ」
私としたことが、まったく秀子とすることだけを考えていて、避妊のことを失念していた。
「じゃあ、あたしの中に出さないでくださいね」
「約束するよ」
秀子もそういう知識は年相応にあるようだった。大人の女として当たり前だろう。
私は、抜いた分身を再度、秀子に向かわせた。
今度は半分ほど滑り込ませる。
良く濡れているせいか、難なく入った。
「入ってるよ」「ええ」「痛くないかい」「少し。でも大丈夫」「もっと入れるよ」
私はさらに腰を送った。そうして、残りの長さを差し込むと秀子に覆いかぶさって口を求めた。
「ああう」
私たちは完全につながったのだ。
「ありがとう、秀子」「わたしこそ。初めて愛されたのね」
潤んだ目で、間近で見つめられた。
「動いていいかい?」「ええ」
私は腰を少しずつ引き、また沈めるという運動をゆっくりと、秀子を観察しながらおこなった。
秀子は口を引き絞って、何かに耐えているような表情だったが、じきに緩み、目をつむって、私の動きに身を任せるようになった。
狭い秀子の膣は、私を絞るように動いた。
かなりの力である。
「ああ、よく締まるよ」「そう?」「握られているみたいだ」「あたしもなんか、あそこに力が自然に入るの」「すごいね」
私の腰の動きは、さっきよりも早くなって、秀子の双乳がぶるんぶるんと激しく揺れた。
「ああ、あああ、とださん、あたし、変になりそう」
「なっちゃえば?」
「あそこ、あそこが、なにこれ?」
「いくんだろ、いくんだろ?」
私も上ずった声で、凶器となった硬いペニスを打ち込んだ。
「だめぇ!やめてぇ」「もうすぐ、もうすぐなんだ」
バシッ、バシンと肉が強く当たる音が部屋に響く。
互いの汗が飛び散り、エアコンも効いてないように暑かった。
私は秀子から離れ、裏返し、後ろから突いた。
「きゃっ!」
急に奥まで差し込んだので、彼女は悲鳴を上げてしまった。
秀子の手がタオルケットを強くつかんでいる。
「うううっ」獣のようなうめき声をあげ、私のピストンに耐えている。
小さな秀子の体は、私の突きに打ち震え、首を激しく左右に振っている。
射精感が高まっていた。このまま中に出したい衝動にかられた。
しかしそれはやってはいけない。
理性が私を押しとどめた。
寸前で腰を引いて、勃起を外に出す。
そしておびただしい精液を秀子の背中にぶちまけた。
「ああああっ!でたぁ」
秀子は四つん這いになって、頭を垂れていた。
細い腰に精液の流れが伝ってタオルケットに落ちてしみた。
私は仰向けになって、汗みずくで横たわった。
秀子もうつ伏せにつぶれている。
その横顔には涙の筋が光っていた。
「ごめんね、激しくして」
私は詫びた。
「ううん。でもうれしかった…気持ちよかったよ。ゆうすけ…」
初めて私の下の名を呼んでくれた。
私は枕元のティッシュの箱から紙を取って、秀子の背中と脇腹を拭いてやった。

こうして秀子と私は体を許し合ったのだった。
律子のように二度目を求めることもなく、私は、お暇(いとま)することにした。
服を整え、
「じゃ、帰るよ」
まだ裸のままの秀子は、のろのろと立ち上がり、バスタオルを体に巻き付けた。
「また、メールするよ」「ええ」「今日は、どうもごちそう様」「ううん。またね」

十時半だった。
私は彼女のマンションを後にした。
外は風もなく、生暖かかった。