飯塚幸生が行方知れずになって半年が過ぎ、はや夏真っ盛りである。
私は、表面上は順調に角野秀子と交際を続けていた。
秀子は、私の部屋にも来てくれて、片付けてくれたり、洗濯や料理をしてくれるまでになった。
私の部屋にも二度泊まった。
ただ、プロポーズはまだできていない。秀子も要求しなかった。

私は、大学の前期の講座を終え、学生に課題を課し、夏休みが終わればそのレポートを提出させるつもりにしている。
生活の中に俳諧を感じてほしいという思いで、彼らに街中(まちなか)の句碑を尋ねてその背景を調査させたのである。
大阪には、俳人のみならず文化人の詠んだ俳句が句碑になっている名所旧跡があり、ガイドブックなどを調べれば、十や二十は見つけることができるだろう。
例えば、住吉大社の境内にある井原西鶴の句碑などだ。ここには川端康成の文学碑もある。
授業で取り上げた与謝蕪村の句碑は生誕地の毛馬(けま)にある。これは外してほしくなかった。

律子とは…実は関係を切れないでいる。
ほぼ毎週金曜の晩には、京都で逢瀬を重ねていた。
一方で、秀子とは、自宅で会えばセックスをするものの、嫌がるときはしないでいる。
たぶん生理のときは拒むのだ。
秀子は自分からはしたいと言わないが、二人でいるときは必ず私のそばにきて肩を寄せあう。
私はそういうとき、軽く唇を合わせ、小鳥がついばむように愛撫する。
小柄な彼女は口を小さくとがらせて、私のされるがままに応じるのだった。

二回目に私の部屋に来たときだったろうか?
ベランダの方を向いて、二人で床に座って寄り添いながら夕日を眺めていた。
西日が強い部屋なので冷房なしにはいられないから、その時は強く冷房を利かせていた。
「ねえ、ひでちゃん」私はそう呼ぶようになっていた。
「なぁに」
「手でしてくれないかな」
「え?」
私は、秀子の手を取ってズボンのファスナーの上に置いた。
彼女は何を私が要求しているのかを悟ったようで、ゆっくりとファスナーを下ろした。
ジー…
「引っかかって…すっごく固い」
私の勃起がズボンを押し上げているからだった。私は腰をずらして、自らズボンを下げようとした。
パンツも一緒に下げて、秀子の前にゆらゆらと立ち上がるペニスを曝す。
西日に当たって、長い影を床に落として日時計のようだった。
「いつもすごいね。こんなになって…男の人はみんなこうなの?」
「たぶんね。ひでちゃんが好きだからこうなるのさ」
「へぇ。普段はとってもおとなしいのに」
小さな子供をあやすように秀子は勃起をやさしく握って、教えたとおりに上下にさする。
「でも、なんだかかわいい」「そうかい」「私の手の中で、早くしてって、この一つ目小僧ちゃんが言ってるみたいよ」
なんとメルヘンチックなたとえ方だろう。
律子なら決して言わないようなことだ。
「口でするのは知ってる?」
私は、訊いてみた。
「してほしいの?」「してくれる?」「しかたないわね。今日は生理がまだ続いてるから、してあげる」
そういうと、彼女は髪をかきあげて、その小さな口を近づけた。
あぷ…
子供がバナナでもほおばるように、亀頭を含む。
そのしぐさが、かわいかった。律子の淫乱な舐め方とは全く違う。
ちろちろと舌先を使って、亀頭を舐め、カリの部分にも這わせる。
「ああ…じょうずだよ」「そうですか?」「本かなんかで読んだの?」「どうだろ…そういう動画をみたことがあるの」「へぇ、意外だな。君がねぇ」「この歳になれば、そういうものも観るわよ」
たしかに彼女の部屋にはノートパソコンとWi-Fiルータがあった。
三十七歳の独身女性の赤裸々な生活を垣間見た気がした。

けっこうフェラチオが上手なのだ。
驚きである。
私は彼女の頭を撫でながら、懸命にしゃぶる姿をながめた。
小さな口を出入りする分身をみると、この口の中に射精したいという衝動に駆られる。
「口に出していいのかい?」「うん」秀子は頭で返事をした。
がぼがぼと口の動きが大胆になり、かなり喉の奥までくわえこんでいる。
「苦しいだろう?そんなに飲まなくてもいいよ」
「うう…はふぅ。あごがだるい…」
「だろ?やっぱり手でしてくれるかい?」「うん」
唾液でしっぽりと濡らされた「私」がそのまま握られ、やや力を込めてしごかれた。
「熱くて、硬いのね」
「硬いだろう?きみのせいだよ」「まぁ」
皮が押し下げられ、亀頭が引っ張られるくらいになる。
そしてまたかぶせられ、規則的に繰り返された。
私は、彼女の髪の香りを嗅ぎながら、一心に射精感を高めた。
「ああ、ひでこ…」「ゆうすけ…」「いいよ、その調子」「いいの?いくの?」「いきたい。きみの手でいきたい」「いって!」
ぎゅーっと下に皮が引き下ろされたときに限界を超えた。
「わっ」
びゅびゅっと白い塊が尿道を破って噴きあがり、彼女はとっさによけたが髪の上に落ちてしまった。
「ああ、すまない。髪を汚してしまったね」
「いいのよ。ゆうすけはよかった?」「ああ、よかったさ」「あたしも、あなたを逝かせてあげられてうれしい」「ひでちゃん…」
私は、秀子を抱き寄せてキスをした。

物思いにふけっているとスマホが鳴った。
秀子からのメールだった。
「明日、そちらに行ってもいい?お昼ご飯をつくってあげる」
あまりのタイミングの良さに、お互い響き合うものを感じた。
私は、よろこんで返事をした。
そして今日、金曜日は夜に河原町で律子と会う約束をしていた…