従弟の浩二と二人で大阪の四ツ橋にあった電気科学館へプラネタリウムを観に行ったことがあった。
あたしが高一で浩二が中三だった。
季節は今頃だったと思う。

交野から片町線(今のJR学研都市線)で京橋まで出て、環状線で梅田に出て、地下鉄四つ橋線「西梅田駅」から地下鉄に乗って四ツ橋駅で降りる。
普通は、環状線の森ノ宮駅で地下鉄中央線に乗り換えて、本町で四つ橋線に乗り換えるのだが、お上りさんのあたしたちは、ずいぶん遠回りで行ってしまった。

プラネタリウムの上映時間を待つ間、電気科学館を見学する。
こうちゃんは、鉄道関係が好きらしく、電気機関車の仕組みやら、送変電の展示物を熱心に見ていた。
あたしは、無線関係にがぜん興味があったので、モールスだの、火花放電送信機だの、衛星通信だのを見て回った。

そうしてプラネタリウムの上演時間近くになると、最上階のドームに向かった。
「こうちゃん、行くよ」「うん」
ほんと、こうちゃんは声変わりもしていず、「おぼこい」男の子だった。
あたしがついていないと、どこへ行くか頼りない。
ドームの中は広かった。
真ん中に巨大な蟻(アリ)のような物体が構えている。
カールツァイス製の日本で最初に稼働したプラネタリウム映写機だそうだ。
階段状の座席に着席し、上演を待つ。
「なんか、どきどきすんな」「そやねぇ」
隣同士で座った。
背もたれを後ろに倒すらしい。周りの人がそうしていた。
ブザーが鳴って、上演の始まりを告げる。
女の人の声であいさつがあると、ドームの明かりが落ち、「大阪の今夜の夕方です」
ドームの地平には通天閣や大阪城のシルエットが浮かび上がり、太陽の白い丸が沈んでいく。
同時に夜空が青から藍色になり宵の明星が一番星となって表れた。
見る見るうちに日が暮れ、夜空は満天の星になる。
「わぁ」と、どこからともなく声が上がった。
声を上げずにはいられないくらいに、無数の星。
まったくそれは自然の夜空にほかならなかった。
あたしはたった一人、夜空の下にいるという錯覚に陥った。
すると、こうちゃんが隣から私の手を握ってくれた。
「こうちゃん…きれいやね」「ああ」
こうちゃんの手があたしの手を引っ張り、自分のほうに引き寄せる。
「なんやのん?」
こうちゃんは答えず、あたしの手を自分のズボンの前に置いた。
あたしは手を引っ込めようとしたが、彼は放してくれなかった。
じきに、そのズボンの下からむくむくと硬いものが起き上がってくるのが手に感じられた。
あたしは悟った。触ってくれと言うのだろう。
あたしたちは、すでにセックスを親に隠れてしていたのだった。
セックスまでに至らなくても、こうちゃんはあたしの手でしてほしがった。
仕方がないので、何度かしてあげてた。
そして今日も…こんな人のいっぱいいるところで。
鼻をつままれてもわからないくらいの真っ暗な中である。あたしは静かにこうちゃんのズボンのジッパーを下ろした。
そして、手探りでパンツの中に侵入し、その硬くなった幼いペニスを握ってあげた。
反り返ったそれは、ほぼ皮がむけて、つるりとした先端があたしの指先に触れる。
ぬるぬるした液がにじみはじめ、こうちゃんの息が荒くなる。
こうちゃんの隣は通路なので怪しまれることはなさそうだ。
次第にそのぬめりがひろがり、竿のほうまでぬるぬるになり、あたしの掌(てのひら)にも移る。
熱いペニスをパンツの合わせ目から完全に出してやり、今、電灯が点けられたらあたしたちは大変なことになるだろうとドキドキしていた。
ゆっくり、しかし力を込めて握り、上下してやる。
そうするといいのだそうだ。
親指の腹で裏筋をこすりあげ、尿道をしごいてやる。
毛のまだ生えない幼いペニスは、しかし、怒ったように反り返ってあたしの手の力に抗う。
「あはぁ、なおぼん、やばいよ」
「でるの?」
息で会話をしながら、あたしは、焦った。
ここで出されたら、匂いで気づかれる。
とっさにポシェットからハンカチを出して、砲身に被せた。
「いいよ。出しても」
「う、うう」
カタカタと震えるような音がして、こうちゃんが放った。
漏れていないだろうか?
あたしは気が気ではなかった。
もうプラネタリウムがどうなっているのか、皆目わからなかった。
なにかギリシャ神話の話になっていたようだ。
あたしは、こうちゃんのものを最後の一滴までハンカチで絞って、丸めてポシェットに押し込んだ。
かすかに栗の花のような香りがしたが、大丈夫だろうか?
「ああ、手についちゃった」「ごめぇん」「ばか」
そんなやりとりをして、こうちゃんも萎えたものをズボンにしまい込んだようだった。
あたしはスカートの端で手を拭いておいた。しかたがないんだもの。
鼻の前にかざすと、こうちゃんの匂いがした。
あたしだって、じゅんとあそこが湿っているのに…

星空を見ると、あの頃が思い出される。

そうだ、星座早見盤を買おう…