沢村貞子さんの『わたしの献立日記』は、亡くなった母の愛読書だった。

わたしの献立日記
この本と、土井勝先生の料理本が我が家の味を作っている。
冷凍庫の使い方も沢村さんの受け売りだ。
早くから、この女優さんは電化製品を使いこなしていたのである。
食パンを一斤買ってきて、一枚ずつラップに包んで冷凍し、食べるときにそのまま焼くと、中はふんわり、そとはサクサクのトーストになるんだとか、今では常識のものが、沢村さんの若いころ、すでに実行されていたのだった。
沢村さんは、店屋物も上手に利用なさる。
なんでも手作りでというような堅苦しさは、まったくない。
それでも、ここだけは譲れないという芯の部分も確固としてある。
それは「だしを丁寧にとる」ということだった。
これだけを守っていれば、変な味にはならない。
だしは心なんだな。食の。
思想といってもいい。
だしさえ取れれば、自然の旬の食材が助けてくれる。
一流の料理人でも、このことは変わらない。
彼らは、それに加えて、ただ包丁の使い方が上手なだけだ。
言い過ぎかしら?

雨上がりに、黒い子が訪れた。
雨宿りのつもりなのかもしれない。

黒くん

どうして、この子は捨てられたのだろう?
私がただ捨てられたと思っているだけで、生まれた時からのノラ君かもしれないけれど。
いい顔してる。美男子だ。
ただ、キミにはご飯をあげられないんだよ。ごめんね。
昔なら、私は、そういうことをしたかもしれない。
この頃は、人間社会もぎすぎすして、野良猫にも厳しくなった。
みんな人間の勝手だ。
人間は勝手な生き物だ。
つくづくそう思う。

寛容がなくなってしまった。
昭和は遠くなりにけりだ。