アベノミクスでは企業の内部留保が増えて、キャッシュが労働者には回らない。
消費経済においては個人消費が6割を占める。
その個人消費が伸び悩んでいるのは、まさに個人のインカムが伸び悩んでいることと、将来に不安がつきまとうからである。
「家計にお金が届かない」このことは国民民主党も「家計第一」をスローガンに選挙民に訴えている。

安倍総理は、アベノミクスの効果として失業率が「民主党時代」より大幅に改善されたと強調するが、その内情は立憲民主党によれば、非正規雇用を増加させたに過ぎないと手厳しい。

非正規雇用は経済界の要請に基づいた、自由な働き方を実現するものであるが、その一方で、正社員との格差を生じ、社会保険の労使折半から外れるなど、非正規社員の生活において不安をもたらしている。
それでも、安倍政権が経済界(資本家)寄りの姿勢を崩さず、経済界は首を切りやすい非正規社員の存在を求めているなど、ゆがんだ労使関係を放置しているのだった。

政府の掲げる働きかた改革は、一見、労働者の立場の弱さを改善しつつあるように見えるものの、実際は穴だらけという意見も聞く。
また、自民党の「最低賃金1000円」の目標は、選挙目当ての、ただの数値目標に過ぎず、経済界からは当然に反発を食らっている。
ことに中小零細企業にとって「最低賃金1000円」はかなり厳しい要望である。
アベノミクス経済は「捕らぬ狸の皮算用」に基づくもので、消費増税もそうだし、年金問題の不安もアベノミクスが成功していない(安倍総理の言を借りれば「道なかば」)からであり、マクロ経済による年金設定も、実質経済成長が鈍化しているこんにち、誰が本気で「年金100年安定」を信じるだろうか?

今回の参議院選挙において、またもや消費税が論点になっている。自公連携政権は今度こそ、消費税を8%から10%に増やすとしていて、秋の増税は免れないようだ。
しかし野党側は、声をそろえて「増税反対」を訴え、日本維新の会は「増税の前に行革やろ」と至極当たり前のことを訴えている。
また年金についても、日本維新の会は「未納者」への対策を訴え、未納者が200万人もいるとして、この人たちから確実に年金資金を徴収し、不安を取り除き、若者が「もらえないなら払わない」という不払い行動に一石を投じるという。

果たして、維新の会の言うように年金問題が解決するのだろうか?
日本共産党は昔から「消費増税反対」を訴求し、それが党のカラーになっている。
年金と消費税は一つの俎上に挙げて論じられていい問題である。
いずれも、国民に負担を強い、納得してもらわねばこれらの制度は目的を達成することはできないばかりか破綻してしまう憂き目にあうだろう。

安倍一強と言われて久しく、安倍首相は安定政権を標榜し、それこそが日本のかじ取りにふさわしいとし、ねじれや決められない国会になることは国益を損なうとまでいう。
しかし、考えてみてほしい。
簡単に決められる国会こそ異常ではなかろうか?
すべて首相の思い通りに国会が運営され、三権分立は画餅に帰すことになるだろう。
安倍首相が立憲主義を軽視し、お手盛り行政を行って、官僚の政権に対する忖度が横行し、すこぶる風通しの悪い政府になり下がる。
民主主義が、いいように強者の道具に使われる。いわゆる「数の論理」で採決を押し切るのである。
このような政治が「安定政権」という一言で片づけられ、あたかもそれが「理想」であるかのように政権与党が叫ぶのはおかしい。
こういった安倍一強に「ノー」をつきつけることは、選挙民として正しい選択だと思う。
「お灸をすえる」という意味でも、簡単に自公連携政権を勝たせてはいけない。

安倍総理は、自分の政策の効果を強調するあまり、墓穴を掘りかねない。
韓国に対する輸出制裁措置も韓国政府への打撃というより、自らの選挙対策のように見える。
つまり「強い日本」「舐められない日本」を選挙民にアピールするパフォーマンスだったのではなかろうか?
でなければG20後に、議長国がすべきでないような経済制裁をおこなうはずがない。
この行為で、各国のメディアからは安倍議長が「トランプの犬」であることを指摘され、恥をさらした。
安倍総理のやっていることはトランプ大統領と同じである。

安倍首相は「次は憲法改正」だと、意気込んでいるが、彼の予定の2020年施行には間に合わないことは明らかだ。
また改憲に関して盟友である日本維新の会も、「議論が尽くされていない」と憲法審査会の体たらくを批判しだしている。
また野党側はほぼ改憲には反対の旗印を上げている(もちろん各議員レベルでは改憲派もいるが)。
公明党でさえ「今は改憲論議の時期ではない」といい、かろうじて「加憲」の方向で議論に参加するとほのめかしたにすぎない。

この選挙は、重ねて言うように「安倍政権にノー」を突き付ける選挙だ。
「ほかに政権を担える政党がない」とか「過去の民主党政権は最悪だった」とか、どこかで吹聴されたような理由を言って、自公連携政権に一票を投じるか、棄権するひとがいるが、それは違うと思う。
もっと自身で考えて一票を投じてみてはいかがだろう?

今の政権支持率では、自公連携勢力が勝つ公算が大きいかもしれないが、そこで、簡単に勝たせるのではなく、辛勝させるのでも、安倍氏への打撃は大きいはずだ。

そうして、政権を取れそうにない党に入れることで、自民党を追い込むこともできるのだ。
投票の棄権がいちばん卑怯だと思わねばならない。