由美かおるが惜しげもなく若い肢体を披露した話題作でしたね。
原作は漫画(劇画)だったそうですが、私は当時小学生だったので知らない。

新潟県十日町が主な舞台の物語で、昭和四年から七年ぐらいの時代背景です。
もっとも映画冒頭で、ヒロイン高野雪絵(由美かおる)の出生の場面から始まるのでそれは大正四年だとありました。
雪の降り積もる夜に生まれた女の子は「雪絵」と名付けられましたが、歓迎されざる出生だった。

雪絵の生まれた高野家は十日町で屈指の絹の製糸工場を経営し、たくさんの職工、奉公人を抱えて栄えていました。

雪絵の母、綾子(岩崎加根子)は高野家主人、高野淳三郎(中谷昇)に嫁いだが、二人の仲は冷え切っていたんです。
夫婦には体の関係もないのに、妻綾子が女の子(雪絵)を産んだ…つまり、番頭が間男して生まれた子が、どうやら雪絵だったらしい。
綾子は雪絵を捨てて(捨てさせられて)、高野家を出ます。
淳三郎は雪絵を跡取り娘として育て、十五年の歳月が経ちました。
そこに寒村から、雪絵と同い年、十五の少年、朝田龍吉(仲雅美)が高野家に奉公にやってきます。
そのときに雪絵と龍吉は一目ぼれし、惹かれ合うのでした。
二人は急速に接近し、龍吉は仕事仲間や先輩から、雪絵との仲をやっかまれて、いじめられます。
雪絵と龍吉には共通の不幸があったから惹かれたようです。
つまり、母親が小さい時からいないという、同じ心の傷を持つ二人だったのです。
龍吉には祖母がいて、その祖母が若い頃高野家に奉公に上がっていた縁で龍吉が、高野家に世話になるという経緯があったわけですが、雪絵としては龍吉の祖母なら、自分の母のことをなにかしら知っているのではと、龍吉に頼んで祖母のいる村を訪ねます。
季節は、暑い夏の盛りでした。
しかし、祖母の口は堅く「昔のことは忘れた」といって話してくれません。
帰り道、滝つぼの景色のいい場所で、もう日が暮れるというのに雪絵は「もう歩けない」と言ってごねて、同行の龍吉を困らせます。
「あたし、暑いから泳ぐわ」「お嬢さん、だめです。この淵には蛇が住んでいます」「迷信よ」
そういって、雪絵は素っ裸になってしまうんです。
ここは見どころですよ!
もう、これでもかと、由美かおるのおっぱいやらお尻が滝に打たれたり、滝つぼで泳いだりと跳ねまわります。
マーメイドか天使かと思わせる健康的な肉体美!
カメラのアングルでうまいこと陰部は見えなくしてますが、何もつけてないと思いますよ。

龍吉と雪絵があまりにも急速に間を縮めるので、ちょっと都合がいいよなぁとは思いましたがね。
次がつっかえてるんですよ。だんだんわかってきますけれど。

雪絵があまりに奔放なので、父の淳三郎も長岡の全寮制の女学校にやってしまおうと考えます。
だいたい、この父親は雪絵に冷たいんですよ。
まあ、自分の子じゃないわけだから、当然かもしれませんがね。
このまま放任すると、家名に傷がつくっていうので、長岡に雪絵をやらせます。
雪絵は龍吉との別れを悲しみ、自分の写真を龍吉に「忘れないで」と言って渡して、十日市を去っていくのでした。

その列車の中で雪絵は、満州に売られていく女の子と祖母の別れに出くわします。
女衒(ぜげん)の男から「婆さん、いいかげんに降りてくれ。もう十分別れを惜しんだろ?」とすげなくします。お婆さんは「せめて長岡までいっしょにいさせてくれろ」と女衒の男にすがりつきます。
それを見た、ものすごいイケメンの青年が「おい、きみ。もっと人に優しくしたまえ」なんて言って、「これは長岡までの汽車賃だ、取っておきなさい」とお婆さんにお金を渡します。
その颯爽とした姿に、近くで見ていた雪絵は一目ぼれしてしまう。
もう、彼女の頭には龍吉のことなどどこへやら?
男は「アカ(共産主義者)」のようでした。
彼の立ちあがった座席にはその手の雑誌が置いてある。

女学校に入学した雪絵は、その校則の厳しさに辟易します。
家への手紙はすべて先生に検閲されます。
異性と交流を持つことなどもってのほかでありました。
セーラー服が着られると喜び勇んでいた雪絵は、ひどく落ち込みます。
ところがその国語の先生が、なんとあの列車の中でさっそうと現れた好青年だったのです。
雪絵は周囲の目もかまわずに、先生の沖島雄介(岡田裕介)に接近します。
もうぞっこんなんですよ。
雪絵は沖島先生と自転車の二人乗りをして、学校に来て、同級生たちを驚かせますし、先生方も眉を顰めます。
沖島先生は自由闊達で、開けた思想の持ち主で、そのころ、世界恐慌の不況が日本にもひたひたと近づいていました。
雪絵はそんなことには頓着せず、沖島先生の下宿にいりびたるなどしていました。
そしてついに結婚の約束までもしてしまい、二人は学校を追われます。
二人は十日町に戻り、淳三郎に結婚の許しを請います。
高野家は、不況のあおりで仕事がなくなってきていて、リストラを迫られていました。
淳三郎は織機の自動化を目指し、塩沢という豪商がその設備の費えを工面しようと言ってくれていることを、番頭の辰之助と画策していたのである。
つまり、自動化すれば人を減らせるから不況に打ち勝てるという算段だった。
塩沢の融資をうけるためには、塩沢の御曹司が見初めた雪絵との縁談が条件だった。

高野淳三郎とその番頭、辰之助の二人は、以前から男色の仲だった。
淳三郎が綾子とうまくいかなかったのは、この性癖が一因だった。
淳三郎は女を抱けない癖(へき)があったのだ。
龍吉は、戻ってきた雪絵の変貌ぶりと、忌まわしい主人の性癖を知るにつけ、何もかも嫌になった。
雪絵からもらった写真を破いて、思い出の橋から川面に散らしたのだった。

雪絵は、沖島と駆け落ちした。
東京に二人で出ようと誓ったのだった。
東京は、世界恐慌のあおりを受けた不況と、官憲のアカ狩りの嵐が吹き荒れていた。
二人は職を探し、旧知を訪ねるも、ついに官憲に捕まる。
沖島はひどい拷問を受け、雪絵は新潟県警から捜索願が出ているとかで、県警の刑事に引き渡された。
淳三郎が警察に、男にさらわれたので娘を保護してほしいと願い出ていたのである。
雪絵はしかし、沖島のことが忘れられなかった。
刑事の話で沖島が無事釈放されたと聞き、帰りの列車の席から抜けて、走る列車のドアを開けて飛び出したのである。
沖島の実家は伊豆大島だった。
そこで養豚場を彼の父母が経営していると話していた。
雪絵は一人、大島へたどり着き、沖島と再会する。
沖島はひどく驚いて、官憲につけられていないかを気にした。
沖島はしかし、雪絵の来訪を喜び、とにかく人目につかないさらに離島の宿に身を潜めた。
そこで、沖島に雪絵は処女を捧げるのである。
処女を捧げた(失った)女は心変わりする。
自分の中の「血」に目覚めるのだ。
幼いころから、母、綾子の奔放な男性遍歴のことで陰口をたたかれた雪絵が、自分にもある、その魔性の部分に気が付く。
急速に沖島への思いが冷め始め、彼の下を去る雪絵だった。

「刑事さんは、母が佐渡島にいるらしいことを教えてくれた」
そのことだけを頼りに、ひとまず十日町に戻った。
最先端の東京スタイルに身を包んだ美女、雪絵は十日町に鶴が舞い降りたような感じで浮いていた。
高野の工場はほぼ稼働しておらず、不況風に吹かれて風前の灯火だった。
龍吉は、とおに暇を出され、田舎で祖母と畑を耕しているということだった。
女工たちは、いつ首にされるか、お茶を引いている状態だった。
そんなところへ、垢ぬけた洋装で帰ってきた雪絵は「血は争えんな」と揶揄される。
夏祭りの夜、龍吉に偶然会った雪絵は、許しを請うが、もはや龍吉は雪絵に未練はなかった。
むしろ憐れんだ。
雪絵はいたたまれなかっただろう。
身から出た錆とはいえ、使用人だった田舎者の龍吉にまで憐れみをかけられるとは、雪絵のプライドは地に落ちた。
「佐渡へ行こう」
雪絵は一人、母を訪ねて密かに旅立ったのだった。

佐渡で母を探し回る。とうとう、母のいるらしい女郎屋のような置屋にたどり着く。
化粧をしている女が、雪絵の話を聞いて、探している人はうちの女将だよと教えてくれた。
二階から男女の争う声がする。
男(財津一郎)は関西弁だった。
女が、探していた母、綾子だったが、その荒れた生活、無様な姿を見た雪絵は絶句した。
「来なければよかった」と思って、そこを去る。
雪絵は宿に戻るが、夜更けに、母が尋ねて来た。
雪絵は母の、問わず語りの話にだんだんと心を開いていく。
父の秘密、母の苦悩、娘との別れ…すべてを話し切った母に、自分を重ねる雪絵だった。

雪絵は十日町の父のもとに戻り、父をも理解した。
そして塩沢に嫁ぐことを決めたのである。
そうすれば、家はつぶれず、あの女工たちも路頭に迷うことがない。
多くの人のために、知らないところへ嫁いで生きるという選択を、雪絵は初めてしたのである。

この話は、とてもよくまとまっていて、ちょっと出来すぎの感がありますが、女の半生として感じるところは多いと思います。
まあ、原作が漫画ですのでね。わかりやすいのはそのせいだと思います。

由美かおるの奔放さが、抑制的にでも十分出ていました。
あまりお芝居が上手とは言えなかった彼女ですけれど、由美かおるの良い面が出ていると思います。
美魔女とは彼女のような人を言うのでしょう。
最近は見ませんが、かつての水戸黄門での風呂シーンは、印籠シーンに次ぐドラマのお約束であり、楽しみにしていた殿方も多かろうと思います。