その日は美香とすき焼きの鍋を囲んでいた。
松坂の上等の肉とすき焼き鍋を持って美香がおれんちにやってきたのだ。
「ケイタくんのお家のやり方と違うかもしれないけど」
と断りながら、焼けたすき焼き鍋に牛脂を引き、肉を置いた。
美香は、砂糖をひと匙(さじ)肉の上に乗せ、しょうゆをざっと一巡りさせた。
とたんに甘い香りが部屋に満ちる。
泡立つ醤油が鼻腔をくすぐる。
「このお肉ね、パパが持たせてくれたの」
それって、どういう意味なんだろう?
「そ、そうなんだ」
おれは、受け答えに窮した。
カセットコンロの火が強すぎるようなのでおれは、ダイヤルを戻した。
このカセットコンロは最近、ちまたで流行り出したもので、独り暮らしには重宝するだろうと思い、今の会社に就職が決まってから購入したものだった。
しかし、なかなか独り者では使う機会がなかった。
「パパにね、ケイタくんのことを話したの」
白ネギなどの野菜を肉の上に並べながら、美香が言う。
「それで?」
「パパね、いちど、うちに呼んで、一緒にご飯でもって言うのよ」
「ほんと?」
おれは、半信半疑だった。なにしろ、極道の父親である。
その一人娘と付き合っている男と、サシで会うというのは、血を見るような気がする。
拳の「一発」は覚悟しなければなるまい…
「殴られるんだろうな」
「ばかね。そんな古臭いパパじゃないわ」
「だって、あの高校生は海に浮いたぜ」
「あれと、あたしたちのこととは違うわ」
美香は平然と、肉を取り分けて、生卵を溶いた「とんすい」に入れてくれる。
「さ、食べてみて。お砂糖足りなかったら足すから」
おれは、その柔らかそうな肉を口に運んだ。
とろけるような、今までに食べたことのない食感だった。
「う、うまいよ。こんな柔らかい肉、はじめてだ」
「辛くない?」
「ううん。ちょうどいい」
「よかった」
そういうと、自分も肉を取って、食べた。
「ビール、開けよう」
おれは、冷蔵庫から出したばかりの缶ビールを開けて、グラスに注いでやった。
美香も返杯してくれる。
まったく新婚の夫婦のようだった。
「このお鍋もね、パパが持っていけって」
「なんだか、申し訳ないなぁ」
「婿殿なんて、言うのよ。ケイタくんのこと」
「ムコドノ?」
おれは、笑ってしまった。
どうやら、怖い親父さんに、おれは好かれているらしい。
「じゃあ、ご挨拶にうかがわないとな。おれが真剣なんだってことを、お父さんにわかってもらわないとね」
「うん。きっとよ」
美香が、うれしそうにグラスを差し出した。
おれもグラスを当てて乾杯した。

食事のあと、後片付けもそこそこに、おれたちは睦み合った。
エプロン姿の美香を抱いて、セーターをたくし上げ、柔らかな水風船のような乳房をもみしだく。
「ああん、ケイタくん…」
「クリスマスも会ってくれるだろう?」
「二人でクリパ(クリスマスパーティー)をしましょ」
「そうだな」
美香の愛らしい唇に自分の唇を重ねる。
勃起が瞬時に起こる。
ジャージのズボンが鋭角にとがって、美香の下腹を突いていた。
「あん、すごい。もうこんなに…」
「美香のせいだよ」
「あの人ともやったの?」
礼子のことを言っているのか?
「だれだよ。美香以外にはいないよ」
おれはとっさに嘘をついた。
「ほんとぉ?」
美香が口を離して言う。
目は、おれを見据えていて、心の中を覗くかのようだった。
「ほんとさっ」
そういうと、おれは下半身を露出させ、美香に握らせた。
「ああ、あったかいわ。それにこんなに硬いなんて」
「みか…」
美香も我慢ができないらしく、自分からスカートの中のショーツを下ろしだした。
おれたちは、上は着たまま体を重ねた。
美香の若い、蒸れたような女の匂いが陰部から立ちのぼる。
互いに風呂に入っていないから当然だった。
その茂みに顔を近づけ、生の女の肉を食(は)んだ。
じゅるっ、じゅぱっ…
さっき食べた肉のように、美香の生肉は味わい深かった。
「あふん…やん…そんな…」
「かわいいよ。きれいだ」
クリトリスがぴょっこりと顔を出し、ささみのような艶を見せている。
礼子に比べたら小さな突起だが、しっかりと硬くなっている。
そこを舌先でこねるように舐める。
「あうい…いひっ!」
「いいのかい?」
「いぎっ、いぐっ」
喉で声を絞るように出す美香。
頭を左右に激しく振って、快感に身をゆだねているようだった。

おれはいきり立ったペニスを膣口にあてがった。
でもすぐに入れない。じらしに入った。
亀頭の肉で、彼女の肉襞を掻いてやる。
そうして、美香のジュースを掻きだし、塗り広げるのだ。
「うわぁん、やだっ、それだめっ」
「どうだい?気持ちいいだろ?」
「ひくっ」
美香は、しゃっくりのような声を出してのけぞった。
両足がぴぃんと、気をつけの姿勢で伸びている。
おれは脚を閉じさせたまま、谷間に分身を差し込んだ。
スマタである。

ごしごしとスマタを楽しむ。
これは美香も気持ちいいらしい。
「ああん、ケイタくぅん」
甘やかな美香の声。
声が明らかに変化している。
おれは美香に抱き寄せられ、胸を合わせ、背中に爪を立てられた。
その痛みが、快かった。
「そろそろ入れようか」
「うん」
「コンドームをつけるよ」
「いらない」
「え?」
「つけないでいい」
おれの目を見て美香が言うのだ。
おれは礼子のことは考えるのをよした。
今は美香一筋で行こうと思っている。
ふたたび、孕ませて、こんどこそはちゃんと子供を授かりたい。
「わかった。中で出すかもよ」
「いいの。中で出して」
おれは、心に決めて、美香の股を割って、おのれの高ぶりを差し込んだ。
「うぎゅ…」
ゆっくり、ゆっくり…おれは確実に勃起を送り込んだ。

美香は潤い、ときには絞るような力を感じた。
その肉の筒はおれにぴったりと寄り添い、包み込んでくれた。
「はああっ、来てる…ケイタくんが」
「みか、みかの中、あったかいよ」
「激しくしてもいいのよ。いっそ、こわして…」
そんなことまで言うのだ。
おれは、狂ったように腰を動かした。
美香が苦しみに耐えるように眉間に深いしわを刻む。
冬なのに、部屋は暑かった。
エアコンのせいもあるだろうが、二人の熱気がそうさせているのだろう。
汗がにじみ、二人は窮屈なセーターやインナーを重なりながら脱ぎ捨てた。
「ケイタくんの、奥まで来てる」
「そうか。美香の奥の硬いのが当たるよ」
「なんか、とっても気持ちいい」
「おれも」
じゅくじゅくと二人は一点で融け合うかのようだった。
美香が上になり、おれは見上げて重そうな乳房を持ち上げる。
美香は腰を浮かせ、結合部分をおれに見えるようにしてくれる。
「ほら、ケイタくんの、美香のあそこに入ってるんだよ」
「ああ、すごいながめだ。痛くないのかい?」
「もう痛くなんかない。いっぱい感じるの」
じゅぶ…
そう言いながら、美香は腰を自ら落として、ぐりぐりと胎内に押し付けるように尻を回す。
「ああ、硬い。ケイタくんの硬くっておっきい」
そう言われるのが、おれは一番好きだった。
後ろに手を突きながら美香は、腰だけを器用に動かしておれを感じようとしている。
自分の世界に入っているようだった。
礼子もそんな姿をすることがあった。
女は、自分の快感を自分で見つけていくのだろう。
ビールが入っているので、おれは鈍かった。
まだ逝きそうになかった。
対面座位でふたたび口を吸い合う。
「ね、中に頂戴ね」
コケティッシュに美香がおれを見つめて言う。
なんでそんなに中出しにこだわるんだろう?
「たくさん、ほしいの。ケイタくんの」
「ああ、何度でも中で出してやるよ。双子が生まれるくらいにね」
「大好き、ケイタくん」
美香の大きな胸がおれの胸に押し付けられ、おれはスイッチが入ってしまった。
「みか、おれ…」
おれは美香の首にしがみつきながら、射精と闘っていた。
「出る…」
おれは負けた。
美香の脂粉の香りに脳天が総崩れになり、怒涛の射精が美香の胎内に吸収された。
「ああ、くれるのね…ケイタくん」
そう言って、美香がやさしくおれの頭を撫でてくれた。
「みか…」
びゅくびゅくとペニスが躍り、美香の膣がそれを絞った。