赤井玲士は福崎工芸で染色工として働いていた。
この捺染(なっせん)工場には彼が高校を卒業してすぐに就職した。
宣伝用の幟(のぼり)などの染色をおもにやっていて、京都府下ではこんな会社がたくさんある。

玲士はこの仕事に就いてすぐ、社長の次女、咲子と親密な関係になった。
長女の明子はすでに結婚して家を出て、向日町に住んでいたが、咲子は父親の手伝いをして染料まみれになって働いていた。

咲子は玲士と同級であり、咲子が新入の玲士に仕事を教えたことから、互いに意識し合うようになったのだった。

染色の現場は、とくに零細企業では若い者が少ない。
二人が引き合ったのは当然の成り行きだったのかもしれない。

咲子の妊娠が発覚し、玲士はその責任をとるべく社長である咲子の父親に結婚の承諾を申仕入れた。
社長の福崎忠三郎はこの青年が、まじめで仕事ぶりも良かったことを知っていたから、二人の結婚を許した。
隣町に中古物件を購入して新居にした。
式では、腹ボテの新婦とはにかんだ新郎がひな壇に座っていた。

生まれたのは男の子だった。
親たちより喜んだのは、忠三郎だった。
「忠士(ただし)」と名付けられ、すくすくと育ったのである。

今年三十五になった玲士は、次期社長と見込まれて、業界の付き合いや商工会の青年部の仕事などもこなさないといけない立場になっている。
忙しい玲士と咲子の間は冷えていた。
玲士は、染色業界の「鳳会(おおとりかい)」の渉外の役を仰せつかっており、ていのいい「宴会部長」だった。
彼は、親睦を兼ねた小旅行や、他県の同業者との交流会、展示会などの幹事を務めていた。
そんな中で、スナックで知り合った保険の外交員の女と昵懇になり、人生初めての浮気を経験する。
何度かラブホテルで逢瀬を重ね、うまく騙せおおせたと思うのは玲士だけで、咲子は夫の不審な行動に早くから気付いていた。
そのころは息子の忠士も十四になっており、難しい年頃だった。
咲子が、事を荒立てて家庭を崩壊させられるよりも耐え忍ぶことを選んだのは懸命だったのかもしれない。
咲子は、夫のことを考えて嫌な気持ちになるよりも息子のことを考えることで紛らわせていた。
忠士も咲子に溺愛されることで、心地よく感じていたのだった。
この年齢特有の反抗期というものが忠士にはあまり見られなかった。
それよりも父親の玲士に対する反感のほうが強いようだった。
大好きな母をないがしろにしている父…そう、忠士には映ったのだ。
心理学的にはエディプスコンプレックスというものなのかもしれなかった。

「忠士、好きな女の子とかいるん?」
「いいひんわ(いないよ)」
そんなことを言い合う母子だった。
「忠士くらいハンサムなら、女の子が黙ってへんでしょ」
「なんでやねん。親の欲目っていうんや。そういうの」
「むつかし言葉、知ってんねんね」
「おかあちゃんかて、お父ちゃん以外に好きなひといるのとちゃう?」
「あほなこと、言わんといて」
「おとうちゃんが、よそで女の人作ってるの知ってるんやろ?」
咲子は、黙ってしまった。
前に、忠士に夫の浮気のことを愚痴ったことがあったのだ。
「おかあちゃんぐらい、美人やと、言い寄られるのとちゃう?」
「もう、この子は、親をからかうんやないの」
「おれは、おかあちゃん、好きやな」
「え?」
真剣な眼差しで忠士が母親を見て告(こく)ったのだった。
咲子は絶句した。
「おかあちゃんのこと、好きや」
今度は、強く、はっきりと言うのだった。
勉強部屋は凍り付いたように、森閑となった。
どれくらい時間が経っただろう?
咲子は、とても近いところに息子が座っているのに気づいた。
二人は、忠士のベッドの縁に並んで腰かけていたのだった。
「おかあちゃん…キスしていい?」
「あ…む」
忠士が、先に咲子の口を自分の口で塞いだ。
咲子は、夫にするように舌を息子の口の中に差し入れた。
黒目がちの忠士の瞳が、うるんだようになって、咲子の目の前に迫っていた。
熱い吐息が息子の鼻腔から吹きかけられる。
まだ髭も生えない、少年の口元を咲子は舐めていた。
粘液質の音を立てて、二人は離れた。
「ただし…」
「おかあちゃん。おれ」
「したいの?」
「したい…でも」
「でも。なに?」
忠士の目をのぞき込むように咲子が問う。
「どうしたらええの?」
「どうしたらって…あれのことやんね」
「うん、あれ」
咲子は、息子がセックスをしたがっていることに早くから気付いていた。
こんなことを親子でするのは鬼畜の所業であることも知っていた。
しかし、咲子は夫の理不尽にも耐え、たった一人の理解者である息子と快楽を貪ることへの躊躇はなかった。
「あたしが、おしえてあげる」
どうせ夜まで夫の玲士は帰ってこない。
日が暮れるまでまだ何時間もあるではないか。咲子は自分に言い聞かせながら、ベッドの上に自ら倒れ込んだ。
半袖ブラウスにエプロン姿の肢体を大の字にしてやると、忠士がかぶさってきた。
「ただし…脱がせて」
「いいの?」
咲子は、こくりとうなずいた。
忠士が、ぎこちない手つきでブラウスのボタンを首元のほうから外す。
咲子はエプロンの肩紐を自分で抜いた。
咲子が、ブラジャーとショーツだけの姿になると、忠士も着ていたジャージの上下を脱いだ。
もうはや、ブリーフの前がとがっている。
咲子は、子供だと思っていた息子が「男」の体に成長しているのをあらためて見入った。
「すごいやん。ただしの…あそこ」
「はずいわ。ちっさいやろ?」
「そんなことあらへん。見せてみ」
忠士は、おもむろにブリーフを下ろした。
バネ仕掛けの玩具のように、それは弾けて飛び出した。
夫のものよりは小ぶりだが、しっかりと剥けていた。
陰毛も、生えそろったばかりという風情。
「立派よ。ただし」
「もう、カッチカチや。おかあちゃんも見せてぇな」
「わかった」
咲子は、ブラから外し、最後にショーツを足から抜いた。
忠士の目は咲子の陰毛の部分にくぎ付けだった。
「おかあちゃん…すっごい」
「お風呂で、いっしょに入ってたやん」
「いつのこっちゃ。幼稚園ぐらいの話やろ?覚えてへんわ」
「こっちおいで」
「うん」
また、二人はベッドに沈んだ。
「お乳、やわかい(やわらかい)」
「くすぐったいやん」
「乳首、立ってる」
「そんなこと、なんで知ってるん?おませさんやな」
「それくらい、知ってるわい」
「エッチな本とか読むの?」
「ま、まぁな」
「おかあちゃんにも、触らせて」
そういうと、咲子は息子の勃起に手を伸ばした。
「ひっ」
息を吸うような音を立てる忠士。
咲子の手は、忠士の勃起をやさしく握り、敏感な亀頭を包むようにした。
「あ、ああ」
「気持ちええの?」
「うん」
「自分でしよるんやろ?」
「たまに」
「こんなんで、ええの?触り方」
「上下に」
忠士が、咲子の腕をつかんで、自分がするように動かした。
「あ、おかあちゃん」
「どうしたん?」
「あかん、出る」
言うが早いか、熱い液体が勃起の先端から噴き出し、咲子の下腹部や腿を汚した。
「あらら、我慢できんかった?」
咲子が起き上がり、ティッシュペーパーの箱を探す。
枕元にそれを見つけ、数枚、素早く取り出すと、息子の始末に追われた。
「ごめん。おかあちゃん」
恥ずかしそうに、忠士が始末する手元を見ている。
まるでお漏らしをした子供のように。
「ええの、ええの。初めてやもん、仕方ないわぁ。まぁ、元気なこと。感心、感心」
そんなことを言いながら、咲子は嬉しそうだった。
「ようけ出たねぇ。まだ、硬いままやん」
「うん、いつもは、すぐにしぼむのに」
「興奮が続いてんやね。おとうちゃんなんか、すぐにちっさなるよ」
へへへと笑いながら、忠士が頭を掻く。

忠士の勃起がおさまらないので、咲子は遠慮なく彼の上になって、見えるようにして胎内に収めた。
「ああ、入っていくわぁ」
「うわ、丸見えや」
ゴクリと唾をのむ音が、忠士の喉から聞こえる。
長らく、ご無沙汰だった咲子の膣は、よろこびで痙攣しながら息子の勃起を呑み込んでいた。
「ああ、硬いわぁ。こんなん久しぶりやわ」
「おかあちゃん。あったかい」
「そやろ?あんたはここから生まれてきたんやで」
「こんな小さいとこからなぁ」
「お帰りなさいや」
「ただいま」

一度出した忠士は、長持ちして、熟した母親の体を悶絶させている。
夫に顧みられない妻は、息子のたくましい男根で慰められた。
母子相姦…なんと美しくも、妖しい景色だろうか。