無煙火薬も、少し白い煙は出るんだけれど、それまでの黒色火薬のように煙で向こうが見えないくらいにはならないものをいいます。
無煙火薬の白煙は、すぐ消えるのが利点なのでした。

かつて、歩兵たちが黒色火薬の銃弾を連射すると、煙霧のようになって前方の見通しが極めて悪く、吶喊(とっかん)するも友軍の誤射にやられる始末であったそうな。
日露戦争における日本海海戦で、東郷元帥率いる日本帝国海軍艦隊がロシアのバルチック艦隊を破った一因に、日本軍がいち早く無煙火薬の砲弾を採用し、対してバルチック艦隊の砲は黒色火薬のものを使っていたために、射程が定まらず、無煙火薬の砲弾を使った日本の戦艦の正確な射撃に負けたのだと伝えられています。

古い時代の歩兵の軍服に真っ赤な派手なものが多いのは、この黒色火薬による射撃で敵味方が見えにくかったからだったと言われ、また彼らの帽子も、背の高い「なまりの兵隊」のようなものが用いられ、このふさふさの、あるいは円筒状の「バケツ」のような邪魔な帽子は、煙で大混乱の中、頭を射撃から防ぐために不必要に高いのだそうです。
つまり「デコイ(おとり)」の効果を狙っているんだね。
英国のバッキンガム宮殿の衛兵のいでたちを想起してみてください。

しかし、無煙火薬が世に出たボーア戦争以後は、ド派手な軍服は却(かえ)って目立って、撃たれやすくなったので、いきおい地味な、カーキ色や灰色っぽい軍服になっていきました。

今日の「チコちゃんに叱られる」で「詰襟(つめえり)」のカラーはなんで必要なのか?という疑問に答えていました。
日本の男子学生の標準制服として「詰襟」つまり「学ラン」は君臨してきました。
※「学ラン」の「ラン」は、「オランダ」の「蘭」が語源で、江戸時代に西洋風の服を「蘭服(らんぷく)」と呼んでいたこと、また「オランダ」を単に「ランダ」と俗に呼んでいたこともあり、それが洋服一般を「ランダ」と言うようになったから、「学生用ランダ」=「学ラン」となったという説がある。

今でこそ、ブレザースタイルが普通になってきていますが、地方ではまだまだ詰襟が健在です。
番組の調査でも全国の中学校の場合、50%程度が詰襟を採用しているらしい。
高校生になるとブレザースタイルが主流になってくるんでしょうけれど。

この詰襟は、その歴史をたどるとフランスに起源を持つらしい。
やはり軍服だったんですね。
より男らしく、凛々しくみせるために、首を真っすぐに長く見せるのが「スタンドカラー」という特殊な襟です。
そのようなワイシャツを中に着るのが軍隊の正装であり、その上に肩章や勲章をつけたジャケットを着用するんですが、ワイシャツのスタンドカラーがジャケットの首から覗くほうが美しい。
そこでジャケット(外套)の襟も筒状に立てる必要があったのです。
これが詰襟の原型ですね。

文明開化をなしとげた明治日本が、最高学府として東京大学を創立し、「東京帝国大学」と名前も変え、制服も制定します。
「帝大生」らしく、エリートの日本男児を象徴するような凛々しいいでたちは、ヨーロッパにおける軍服が手本とされました。
それが今の詰襟の学ラン姿なんですね。
学習院型の詰襟(金ボタンなし)と、帝大型の詰襟(金ボタン)が学ランの主流でしょうか?
当時の帝大には男子しか通えなかったから、制服も男子の詰襟しかありませんでした。

「チコちゃん」での問題は、今も残る、詰襟の中にはめるプラスチック製の白い板が、何のために存在するのかというものでした。
現代の学生や教員に訊いても、このことに答えられる人はほぼ皆無でしょう。

さっきの話で、下に着るワイシャツのスタンドカラーを外套から出すという事実がありました。
そうすることがかっこよかった。
ゆえに、日本に詰襟が導入されたときも、下にスタンドカラーのワイシャツを着用していたから、詰襟の裏にそんな板を仕込むことはありませんでした。
ところが、時代が下り、富める者も、貧しい者も中学校に通うことになる。
貧しい者は詰襟の外套をやっと揃えられても、中のワイシャツまで揃えられないことが多かった。
そこで、詰襟の下に何を着ていても、形になるように白い襟だけを詰襟の裏に取り付けるという簡易化がおこなわれたということです。
これなら、詰襟の下が裸でも形式は整いますからね。
その名残が、今も残って、当初は白い布製だったのが、今は汚れにくい樹脂製になったというわけ。
それも時代の流れで、詰襟自体が先細りの中、樹脂カラーを製造している会社は東大阪の一社のみとなった次第だと番組では伝えていました。
なんでも、ブレザー制服が増えたのは、ファッション性だけではなく、不良どもの改造学ランが横行して、品行方正を旨とする教育現場から嫌われたという理由もあるらしい。
それに、私なんかは、軍服風の学ラン姿は、やはり現代に調和しないように思うのです。
男の子たちにしても、首回りが気持ち悪く、前のホックを外したままの男子も多くて、先生に「ちゃんと締めろ」と叱られていましたっけ。
着る者の気持ちを考えたら、まだブレザーのほうがいいでしょうね。

「魁!!男塾」の世界なら、学ランでないと感じが出ないかな。