今年ノーベル賞を受賞された吉野彰先生と2016年度のノーベル賞受賞者の大隅良典先生が、ともに、幼少のころに読んで影響を受けた本にマイケル・ファラデーの『ロウソクの科学』を挙げられました。
わたしも高校生のときに読んで、少なからず影響を受け、化学を専攻することになったのです。
とても良い本なので、みなさんにお勧めします。
文系とか理系とか関係なく、この本は読んでほしいし、読んで損はないと思います。
理科が好きでないひとには少々退屈なところもありましょうが、薄い本なので手に取ってみてください。
ファラデー先生がする、クリスマスパーティでの恒例の子供向けスピーチの内容になっています。
身近なロウソクをテーマに、まさにクリスマスの演出には欠かせないロウソクが燃える現象を、観察し、気づかせて、深い科学の世界にいざなってくれます。
ロウソクの科学など

もうひとつ、私が影響を受けた本に、オストワルドの『化学の学校』があります(写真左の三冊)。
岩波文庫から全三巻が出版されていました。今もあるかどうかは、私は存じませんが図書館にならあるかもしれません。
先生と生徒の会話形式で当時の化学を網羅しています。

化学実験に対する心構え、段取り、測定の仕方、数値の扱い方などが細かく触れられています。
これは、科学者を目指さない人には、あまりお勧めはしませんが、目指すなら読んでほしい書物です。
物理であろうが、生物であろうが、「実験」という操作は避けて通れません。
そのときに、漫然と料理本のレシピをたどるような実験、いわゆる「クッキングケミストリー」で実施していては、発見もありませんし、意欲も湧きません。
実験とはほんらい、ときめきを持ってやるものです。
実験を計画するところから、わくわくするものだと、私は思います。
探究心が実験をする、もしくは続けるモチベーションになるんだろうと思いますよ。

私の学部生時代の実験は、単位取得のために報告書でいかに及第点を取るかに終始するため、あまり面白みがなかった記憶があります。
修士論文、博士論文のときもやはり、称号欲しさに実験をやっていたと思います。
だから、あまり偉そうなことは言えません。

私のような者は、だから、大した人間にならないし、輝かしい成功とも無縁です。
私のようにならないよう、後進には「わたしを反面教師にしなさいよ」と言っています。
それでも『ロウソクの科学』は、いい本でした。
今も手元にあるし、何度も読み返したので、もうクタクタになってます。
酒の肴に『ロウソクの科学』を読みつつ、ファラデー先生とスコッチを傾ける妄想をするのは、秋の夜長にもってこいですよ。